欧州理事会(EU首脳会議)のDonald Tusk(トゥスク)常任議長は3月31日、英国政府が3月29日に行った「EU離脱通知」を念頭に、今後のEUとしての交渉ガイドラインの原案を公表した。
内容は次の通り。
基本原則:
1. 将来も英国を親密なパートナーとしたい。英国との協定は権利と義務のバランスに基づく。単一市場の4つの自由(人・物・資本・サービスの移動の自由)は分割できず、好いとこ取り("cherry picking")はあり得ないことを英国政府は認識してほしい。
2. Brexit交渉はワンパッケージで行う。個別アイテムを別に決めることはない。英国と各国の個別交渉はない。
課題として、次の4つを挙げている。
1. 英国で生活・就労・就学するEU市民、EUで生活・就労・就学する英国市民の互恵・無差別の権利保全
2. 英国でのEUの企業、EUでの英国企業に影響を与えるが、法的空白を避ける必要がある。
3. EUも英国も、離脱前に決めた義務を守る必要がある。全ての法的、予算上の約束、偶発債務を含めた債務についてである。
オーストリアのケルン首相は本年2月に、EU離脱に伴い英国は600億ユーロを支払う必要があるとの見解を示した。
これは最大額とされるが、EU職員の年金給付、英国が拠出に合意したプロジェクトの費用、借入保証、2020年まで決定済みの中期予算の拠出金などとされる。
これに対し、英外相は「英国が離脱後に巨額の請求に応じるとEUが期待するのは妥当ではない」と述べ、支払いの求めに英政府が抵抗することを示唆した。
4. 英国(北アイルランド)とアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである。
このほか、キプロスの英国主権基地領域(Acrotiri and Dhekelia 軍事基地)の扱いなどに触れている。
しかし、イベリア半島南端の英領ジブラルタルについての記載は問題である。
「英国がEUを離脱した後、離脱合意はスペインと英国の合意なしにはジブラルタルに適用されない」と記されている。
これは1713年に英領となったジブラルタル(スペインは現在も領有権を主張)がEUの域外に出るには、EUに加えてスペインの同意が必要と主張するもので、スペインの要望で草案に盛り込まれたという。
メイ英首相は4月2日、「ジブラルタル市民の意思に反し、ジブラルタルが他国の主権下に入るような交渉を英政府は絶対に行わない」と約束した。
元保守党党首のMichael Howardは4月2日、「35年前にサッチャー首相が英領フォークランド諸島をアルゼンチンから守ったように、メイ政権もスペインからジブラルタルを守るために戦争をする覚悟があるだろう」と述べ、問題となっている。
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