東芝は資産売却の一環として、子会社のスイスの電力計大手、ランディス・ギア(Landis + Gyr AG)の売却準備を進めている。
これについて日立製作所が英国の投資ファンド CVC Capital Partners と組んで買収提案をしていると報じられた。
CVCが過半、日立が1~2割程度出資するというもので、現在40%を出資している産業革新機構には保有株の一部を持ち続けてもらう枠組みとされ、買収額は2000億円前後とみられる。
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ランディス・ギアは電力制御用スマートメーター(次世代電力計)の世界最大手で、スイスに本拠を置き、30カ国以上に45の傘下企業を保有する。欧州でのシェアが高い。
スマートメーターのデータを収集する高度な双方向通信技術から 収集データを用いたアプリケーションサービスまでのメーターシステムを一括して提供することが可能であるとともに、先進的な通信技術とそれらを活用したサービス事業を有している。
東芝は2011年5月、スイス法人のランディス・ギアの全株式の取得に関する契約を締結したと発表した。買収額は23億ドル(純負債額含む)で当時のレートで1,863億円。
エネルギーサービスに不可欠な計量管理からクラウドを用いたサービス領域までをワンストップで担当することが可能となり、エネルギー総合管理を核としたスマートコミュニティの新たな事業領域に進出し、相乗効果を発揮することができるとしていた。
その後、東芝は資本パートナーとなる企業を募ってきたが、同年7月に産業革新機構の40%出資が決ま り、東芝の出資比率は60%となり、現在に至っている。
買収後の運営は次の通り。
東芝は、ランディス・ギアとともに総合エネルギーソリューションを実現するためのハードウェア及びソフトウェアの標準方式を確立し、スマートグリッド及びスマートコミュニティ製品とサービスを世界に提供する。
ランディス・ギアは、世界各国の拠点の資産、設備、従業員、商標等の権利を保持し、東芝との補完関係を生かして事業の拡大、強化を図る。今後、低炭素化社会実現に向けた欧州、米国や、社会インフラの整備が急務な中国、インド、ブラジルで受注拡大を目指す。
産業革新機構は、ランディス・ギアの事業戦略の構築及び事業運営を支援するとともに、スマートグリッドビジネスの展開にあたり補完関係が見込まれるグローバルパートナー企業との連携を通じたオープンイノベーションの推進とビジネスのグローバル展開を目指す。
東京電力は、今後最大10年間で2700万世帯にスマートメーターの導入を計画しており、システムの基盤となる通信方式および通信機器・通信ネットワークシステムの仕様ならびに調達先を決定するもので、東芝とは「スマートメーター用通信システム」、NTTデータとは「スマートメーター運用管理システム」をそれぞれ共同で開発を進めた。
東京電力は2015年2月に、多摩支店サービスエリアのスマートメーターが設置された約14万台の顧客に対して、スマートメーターシステムを活用したサービスの提供を順次開始した。
・電力使用量の見える化
スマートメーターで計測した30分ごとの電気の使用量データ1日分(0時~24時)を、翌日夕方に無料WEB会員サイト「でんき家計簿」で見える化することにより、顧客の省エネに貢献。
さらに、顧客宅にHEMS機器を導入することで、30分ごとの電気のご使用量に加え、リアルタイムの電流値などを把握することが可能。
・契約アンペア変更の簡素化
契約アンペア変更の際、遠隔でスマートメーターのアンペアを設定することにより、顧客の立ち会いや東電サービスブレーカー取替時の停電などの負担を軽減。
しかし、報道によると、「東電のスマートメーターは、東芝が担当した通信部分がほとんど機能していない」とされ た。東電は、同時期に同地域で、メーターの検針員の募集を行ったとされる。(現状は不明)
2015年6月12日発表の東芝の不適切会計による減額修正では、スマートメーター分が255億円となって おり、下記の説明が行われている。
受注時から損失の可能性が認識されていたにもかかわらず、合理的な理由なく、一切、工事損失引当金が計上されていなかった。また、2014年3月に具体的な裏づけのないコスト削減策を織り込んだ見積工事原価総額に基づいて、工事進行基準が適用されていた。
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