カリフォルニア州の連邦地裁は4月25日、不法移民に寛容な政策をとる「サンクチュアリシティー(聖域都市)」への補助金を停止するトランプ政権の大統領令を一時差し止める仮処分命令を出した。
聖域都市は、不法移民者が生活し働くことができる都市で、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴ、フィラデルフィア、ボストン、デンバー、ワシントン、シアトルなど全米に400 以上あるとされる。
Trump大統領は1月25日に、不法移民の強制送還などに協力しない聖域都市の補助金停止を盛り込んだ大統領令を出した。
Executive Order on January 25, 2017
Executive Order: Enhancing Public Safety in the Interior of the United States
これに対し、San Francisco 市と Santa Clara郡が米国憲法修正第10条に違反するとして訴えていた。San Francisco 市では、年間20億ドルを失うことになると想定している。
修正第10条
本憲法によって合衆国に委任されず、また州に対して禁止されなかった権限は、それぞれの州又は人民に留保される
判事はこの主張を認め、大統領令を一時差し止める仮処分命令を出した。命令はカリフォルニア州にとどまらず、全米に適用される。
「憲法は歳出権限を大統領ではなく、議会に与えており、憲法上、大統領令で歳出に条件を付けることは出来ない」とした。
判事はまた、大統領令は既に認められている予算に条件を課すため違憲であるとした。大統領が認めない移民対策を行政がとったことを理由に、移民対策に直接関係のない予算が脅かされることがあってはならないとした。
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Trump大統領の1月27日の移民の入国を一時禁止する大統領令も連邦地裁で即時停止の仮処分を受け、この仮処分が連邦控訴裁で支持されている。
Trump大統領は3月6日、中東・アフリカ7カ国の国民を一時入国禁止にした米大統領令の一部を修正した新たな大統領令に署名したが、これについても、全米で執行を一時的に差し止める決定が出ている。
米司法省は、リッチモンド連邦高裁に仮処分の取り消しを求めて上訴の手続きを取った。
同高裁は事案の重大性を考慮し、判事3人による通常の合議とは異なり、十数人の大法廷で5月8日から審理する。
2017/3/14 Trump大統領の新たな入国禁止命令
当初の控訴裁の決定に対し政権側が最高裁に上告しなかったのは、保守派のScalia 判事死去により、保守派4人(中道1人含む)、リベラル派4人と勢力が拮抗しており、結果が予想できなかったためである。
米上院本会議は4月7日、トランプ大統領が保守派のNeil Gorsuch 連邦控訴裁判事を最高裁判事に指名した人事を、「核オプション」と呼ばれる禁じ手を使って、54 対 45 の賛成多数で承認した。
2017/4/8 米上院、異例の手続きで最高裁判事を承認
今回、White Houseは控訴裁に控訴する予定で、ここで負ければ最高裁に上告する予定である。大統領首席補佐官は、「最高裁で勝つ」と述べた。
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