トランプ大統領は4月20日、大量の鉄鋼輸入が米国の安全保障を脅かしている懸念があるとして、米通商拡大法に基づいた鉄鋼輸入の実態調査を米商務省に指示した。
Memorandum for the Secretary of Commerce SUBJECT: Steel Imports and Threats to National Security
内容は次の通り。
政府のPolicy:
鉄鋼、アルミ、自動車、飛行機、造船、半導体などのコア産業は米国の製造・防衛産業にとり重大な要素であり、不公平な貿易慣行その他から防衛する必要がある.
鉄鋼の場合、米国およびグローバル市場が過剰能力で歪められている。その多くは外国政府の補助金やアンフェアな慣行によるものである。米国は150件以上の反ダンピング、反補助金の命令を出したが、悪影響を緩和するに至っていない。米国が、他国に過剰能力を減らすよう繰り返し行った努力は効果が出ていない。
過剰能力とアンフェアな輸入により起こった人為的低価格は米国の鉄鋼産業の利益を圧迫し、業界の長期の投資をやめさせ、研究開発の努力を妨げている。これが続くと米国の鉄鋼産業が駄目になる。
指示
商務長官は、Trade Expansion Act of 1962 (section 232(b))に基づき、鉄鋼輸入の安全保障に対する影響を調査すること。
section 232(b):輸入品が国の安全保障を脅かしている可能性を知った場合、大統領は注意深く調査をさせ、その恐れがあると分かった場合、恐れを取り除く程度まで輸入を制限する。
調査に当たり、
国の防衛上で必要な国産品の量、そのために必要な製造能力、等々を検討すること。
鉄鋼産業の海外の競合品が国内産業に与える影響を考えること。
国産品が輸入品に置き換わることで起こる大量失業、政府収入の減、技能や投資の減、その他の深刻な影響を考慮すること。
米国による世界中の鉄鋼の過剰能力の減少の交渉の努力の現状と有効性を考慮すること。商務長官は大統領に報告を行うこと。
もし、鉄鋼の輸入が国の安全保障を害する恐れがあると分かった場合は、それを防ぐための行動、手続きを提言すること。
付記 大統領は4月27日、アルミニウムについての調査を指示する大統領令を出した。
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/04/27/presidential-memorandum-secretary-commerce
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調査の結果、中国など鉄鋼輸出国に対する新たな関税措置の発動につながる可能性がある。
4月20日の会見で、中国に関する大統領の発言と商務長官の発言が食い違った。
大統領は、鉄鋼のダンピングの調査命令は中国を狙ったものではないとした。「これは中国に関するものではない。世界中で起こっていることで、ダンピングは世界中の問題だ」と述べた。
これに対し商務長官は、中国が問題の大きな部分であるとした。「鉄鋼輸入は増え続けている。中国は能力を減らしているとするが、実際には絶えず増えている」と述べた。また、為替操作国と認定しないことと、この問題とは異なるとした。
さらに、「本年の数カ月で鉄鋼輸入は19.6%増え、今や米国市場の26%以上を占めている。国内の操業度は71%に過ぎない」と述べた。
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