Trump 大統領、税制改革と金融制度改革へ大統領令 

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Trump大統領は4月21日、税制改革と金融制度改革(Dodd-Frank Actの見直し)のための3つの大統領令を出した。

1)税制   Presidential Executive Order on Identifying and Reducing Tax Regulatory Burdens

2) 金融制度

 ・金融安定監視協議会(FSOC)Presidential Memorandum for the Secretary of the Treasury on Financial Stability Oversight Council

 ・破綻処理スキーム  Presidential Memorandum for the Secretary of the Treasury on Orderly Liquidation Authority

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1) 税制改革

大統領令のタイトルにあるように、 税規則を取り上げた。
減税や輸入税、多国籍企業の税回避などの大きな問題は取り上げていない。 大型減税を柱とする大統領案は4月26日に発表する。

大統領 twitter

Big TAX REFORM AND TAX REDUCTION will be announced next Wednesday.

なお、現在の暫定予算は4月28日までのもので、2016年度の残り期間(9月30日まで)の予算を通す必要がある。4月28日までに通らなければ、政府機関の閉鎖に追い込まれる。
メキシコとの間の壁の建設(今回は諦めた筈が再燃している)やオバマケア関連費用など、難問が多い。

問題意識として次のように述べている。

連邦税制は簡単で、フェアで、効率的で、成長に役立つものでないといけない。税規則は複雑な税法を明確にし、納税者の役に立つガイドラインを供するべきである。
しかし、過去数年に出された規則は、税負担を増し、経済成長を妨げ、企業に罰金を課し、複雑な書類を求め、フラストレーションを与えている。

重荷を取り除き、税負担を軽減し、役に立つ簡単な税のガイダンスを供するため、早急な行動が必要である。

財務長官に対し、2016年1月1日以降の全ての重要な税規則をレビューし、納税者に不当な金銭的重荷を課しているもの、税法を不当に複雑にしているもの、IRS(国税庁)の権限を越えるものについて60日以内に報告を求める。

財務長官は150日以内に改善案を大統領に報告し、問題分について施行を遅らせたり、改正したり、取り消すなどを行う。

レビューする税規則を2016年1月1日以降のものに限った理由が不明 だが、米メディアは、2016年4月4日の企業の海外移転に伴う課税逃れ対策が主な見直し対象としている。

財務省は税率の低い国へ本社を移転する税逃れ行為「インバージョン」をめぐり追加措置を発表した。これを受け、Pfizer は4月6日、Allerganとの合併を中止すると発表した。

2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念




2) 金融改革

Trump大統領は2月3日、金融規制改革法(Dodd-Frank Act)の見直しに関する大統領令に署名した。

 Executive Order Presidential Executive Order on Core Principles for Regulating the United States Financial System


大統領令では、 まず政権が米国の金融システムはこうあるべきだと考える基本原則(Core Principles)を列挙した。

(a) 国民が財産管理で独自の決定、情報に基づく選択ができること
(b) 税金での救済策の禁止
(c) システミックリスクや市場の失敗に対処する、より厳格な規制影響分析を通じて、経済成長と活力のある金融市場を育成
(d)米企業が国内、海外で海外企業と競争しうること
(e) 国際的な金融規制交渉で米国の利益を促進
(g) 金融監督機関の公的説明責任を回復し、金融規制フレームワークを合理化

そして財務長官に対し、 どの法律・規則が基本原則に沿っており、基本原則を推進するためどんな行動が取られているか、またどんな法律・規則が基本原則に沿っていないかについて120日以内に報告するよう求めた。

Trump氏は選挙期間中、ドッド・フランク法 (Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act) の廃止を掲げており、公約の実現に向け一歩踏み出した。

2017/2/7 Trump大統領、金融規制改革法の見直しに関する大統領令に署名 

今回は、Dodd-Frank Actのなかの2項目(金融安定監視協議会と破綻処理スキーム)を取り上げた。

2010年7月に成立した Dodd-Frank Act は、1920年代の世界金融不安および大恐慌の発生を根絶するため成立したGlass-Steagall Act の現代版である。

「金融機関の説明責任と透明性を向上させることで米国の金融安定性を促進し、"too big to fail" を終わらせ、特定の企業への財政出動を終わらせ、新たな金融危機を防止するための堅固な経済基盤を創出する」ことを目的とする。

具体的な内容としては消費者金融保護局をFRBの中に置くこと、Volckerルール(銀行が自己勘定でリスクを取って、金融商品を購入・売却また取得・処分をする事を禁止)、システム上重要な金融機関(SIFIs)の監視の強化、連銀法の修正などである。


金融安定監視協議会(Financial Stability Oversight Council :FSOC ) は、システミック・リスクを特定し、それらを監視する機能を担うため創設された。

問題意識

FSOCは、ノンバンクの経営危機が米国の金融制度の安定を損なうかどうかを判定する。
  (損なう場合、FRBの管理下に置き、行動が制限される。)
また、特定の金融機関をシステム上重要な金融機関と認定する権限を有する。
  (その場合、特定のリスク管理基準に従う必要がある。)

これらに指定された場合、その金融機関、業界、経済全体が影響を受ける。

このため、指定に当たっては正当、フェア、透明性のあるプロセスが必要である。

財務長官に対し、FSOCのプロセスについて、透明性、正当な手続きかどうか、等々について、またFSOCの行動が上記のCore Principlesに沿っているかどうかの報告、改善提案を求める。


システム上重要な金融機関(SIFIs)の破綻処理スキーム「秩序立った清算権限」(Orderly Liquidation Authority;OLA)

問題意識

財務長官は、大統領と協議し、金融機関が破綻し、または破綻の危機にあり、他の法律の下で対応できない場合には米国の金融安定に重大な悪影響を与えると判断した場合、「秩序立った清算権限」を使って、その金融機関を管財人の管理下に置くか、清算を開始する。

「秩序立った清算権限」は、財務長官が大統領と協議し、いろいろの点を考慮し、これを使うことで米国の金融安定への悪影響を除去又は軽減できると確信した場合のみ可能である。

しかし、「秩序立った清算権限」の存在自体が、債権者や取引相手や株主の過度のリスクテイクを後押しする恐れ (モラルハザードを生む恐れ)がある。清算にはOrderly Liquidation Fund を使われるからである。大部分は他の金融機関が出すことになるが、税金が使われる可能性もある。

債権者や取引相手や株主の損失が他に転嫁される場合、規律が弱まり、過度のリスクテイクを生む可能性がある。

また、破産法11条など他の解決法の方が効果的かどうかを評価することも重要である。

財務長官に対し、「秩序立った清算権限」をレビューし、潜在的な悪影響、これの使用が上記のCore Principlesに沿っているかどうか、一般財政に影響を与えないか、等々について報告、改善提案を求める。

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