Dow Chemical、政府の有機リン殺虫剤のリスク研究報告の撤回を要求

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Dow Chemical と他の2社を代表する弁護士が4月13日に、農薬を管轄する3省庁のトップに対し、広く使われている殺虫剤が多数の絶滅危惧品種に有害であるという政府の報告書を、根本的に問題があるとの理由で、撤回することを求めるレターを出した。 研究結果は科学的ベースが信頼できないとしている。

http://interactives.ap.org/2017/dow-epa/

Dow Chemical のAndrew Liveris 会長兼CEOがTrump大統領の就任式典に100万ドルを寄付したことや、White Houseの製造業問題ワーキンググループのトップであること、Trump大統領が選んだEPA 長官が反EPA派であることなどと関連付け、各紙が大きく取り上げている。

問題の殺虫剤は下記の通り。

殺虫剤 メーカー
chlorpyrifos Dow Chemical
diazinon ADAMA Agricultural Solutions
malathion FMC Corp.

chlorpyrifosはダーズバンの商品名で販売されている。

ADAMAはイスラエルのジェネリック農薬メーカーで、旧称 Makhteshim Agan。
1997年にイスラエルのMakhteshim と Agan が合併した。
2011年に中国の中国化工集団(ChemChina)が株式の60%を買収した。(ChemChinaは2016年にスイスのSyngentaを買収している)
2014年にADAMAに改称。

提出した相手は、EPAのScott Pruitt長官、海洋漁業局を管轄する商務省のWilbur Ross 長官、魚類野生生物局を管轄する内務省のRyan Zinke長官。

種の保存法(Endangered Species Act)を管轄するこの 3省庁の科学者が過去4年にわたり、1万ページ以上の記録を積み上げ、3種の殺虫剤が、1800種の絶滅危惧種のほとんど、研究した種のほとんど全てにとってリスクとなることを示した。

EPAの調査では、chlorpyrifosが、絶滅危惧またはその危険がある蛙、魚、鳥、哺乳類の種を含む1835種の動植物のうち1778種に悪影響を与える恐れがあることが分かった。malathion と diazinonでも同じ結果が出ている。

政府の科学者の一人は、絶滅危惧種の多くは水生で、ヒトが飲み水として使う川や湖の長期の汚染の影響を最初に示すため、炭鉱でのカナリヤの役目をしていると述べている。

3省では間もなく、研究結果を発表し、これら殺虫剤の使用の制限を行う予定である。

これらの有機リン殺虫剤は古くから幅広く使用されている。

この結果、これら殺虫剤の成分が飲み水のなかで一般的に見つかっている。2012年のカリフォルニア大学の調査では、新生児の臍帯血のサンプルの87%からchlorpyrifosが見つかっている。

2005年にBush政権は、ヒト、特に子供の健康リスクを理由に、蟻やウジ虫などの駆除のための家庭用使用を禁止する命令を出した。しかし、農家用、特に果樹や野菜用の使用は認められている。

環境運動家はこれまで、ヒトや絶滅危惧種に対するリスクをもっと厳密に調べるよう、法廷でEPAと争ってきた。

ーーー

Trump政権は雇用問題を環境問題の上に置いている。

Trumpの公約、「アメリカを再び偉大にする」ための100日間のアクションプランには次のものがあるが、既に多くの大統領令を出している。

シェール、原油、天然ガス、クリーンな石炭など50兆ドルものエネルギーの開発への制限を取り除く。
  
Executive Order on January 24, 2017 インフラ計画への制限の排除
  
Presidential Memorandum on January 24, 2017  製造業への制限の排除

Obama-Clinton が停めた Keystone Pipelineなどのエネルギー関係のインフラ計画を進める。
  
Presidential Memorandum on January 24, 2017  Keystone Pipeline建設
  
Presidential Memorandum on January 24, 2017  Dakota Access Pipeline建設

国連の気候変動計画への数十億ドルの支払を取り止め、その資金を米国の水と環境のインフラの補強に使用する。
  
Executive Order on March 28, 2017 Obama 前政権の地球温暖化対策を全面的に見直す。

2017/2/2  「トランプの公約」の現状

Trump大統領は4月22日の「地球の日」に、次の通り呟いた。

Today on Earth Day, we celebrate our beautiful forests, lakes and land. We stand committed to preserving the natural beauty of our nation.
I am committed to keeping our air and water clean but always remember that economic growth enhances environmental protection. Jobs matter!
自然の美を守る。空気や水を綺麗にすることを確約する。しかし、経済成長が環境保護を高めることを忘れてはいけない。雇用が大事だ!

大統領はまた、米国民の負担となる規制を緩和するための対策をとるよう指示する大統領令を出している。
   
Executive Order on February 24, 2017   規制改革の実施

大統領はEPA長官にScott Pruitt オクラホマ州司法長官を選んだ。連邦政府の規制を制限し、州政府の規制監督権限を取り戻すことを目指すなどEPAには批判的な立場で、気候変動に懐疑的であり、オバマ政権が気候変動対策の柱に据えたCO2排出規制「クリーン・パワー・プラン」にも反対している。

Pruitt氏のEPA長官への起用は、EPAの規模を縮小し、資源掘削・炭鉱採掘を許可するという大統領の方針に沿った動きである。


Pruitt長官は3月に早速、Dowのクロルピリホスの農薬利用禁止に関する嘆願書を退ける行政文書に署名した。

EPAは、オバマ政権時代の2015年10月、自然資源防衛協議会と北米農薬行動ネットワークから嘆願書を受け取り、農薬に使用されるクロルピリホス残留許容量基準の廃止、農薬使用の全面禁止を起案していた。

しかし、別の手法で計測したところ、EPAの根拠とは異なる結果が得られていた。

米農務省、全米州農業局協会、科学諮問委員会も同様にEPAの起案に対して懸念を表明していた。

Pruitt長官は、「人体や環境を保護しつつ、クロルピリホスに依存する米国農家数千人に対し規制の確定性を提供する必要がある」「世界で最も広く普及している農薬を禁止しようとした前政権の動きを巻き戻し、結果ありきの議論ではなく意思決定科学に基づく判断に我々は回帰する」と述べている。

Dowなどの今回の要求レターは、この決定の後に出された。

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