中国の「一帯一路」計画の現状

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中国政府は「一帯一路」計画をテーマにした初の国際会議「一帯一路フォーラム」を5月14日から2日間、北京で開催する。会議にはロシアのプーチン大統領ら28か国の首脳などが出席する。
北朝鮮の対外経済相も出席する。

日本からは自民党の二階俊博幹事長ほかが出席する。中国から招待されていた世耕経済産業相は出席を見送ったが、会議出席による日米関係への影響を考慮したとされる。
しかし、その米国は
、米中「100日計画」合意により、White HouseのアドバイザーMatt Pottinger を代表とするチームを派遣することとなった。


「一帯一路構想」は、中国から中央アジアを経て欧州に至る「シルクロード経済帯」と、中国沿岸部からアラビア半島までを結ぶ海上交通路の「21世紀海上シルクロード」を中国が中心になって開発していくという構想である。

習近平主席は2014年11月4日、中央財経指導グループの第8回会議を招集し、 「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想:Belt and Road)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)およびシルクロード基金の設立という「中国版マーシャルプラン戦略」(中国メディア)について検討を行った。

習主席は11月9日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連会議で基調講演し、「各国と協力して二つのシルクロード経済圏の建設を進める」と述べた。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通じ、中国自らの資金で地域経済の一体化を主導する意欲を示した。

2014/11/13 中国のシルクロード経済圏構想 


付記

習近平国家主席は5月14日、「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの開幕式に出席し、基調演説を行った。

 シルクロード精神のコアを総括

平和協力、開放的包摂、相互学習・相互参考、互恵・ウィンウィン

 今後の建設目標

「一帯一路」は今後、平和の道、繁栄の道、開放の道、革新の道、文明の道を建設していく。

 中国が実施を約束する大事業

関連諸国の鉄道部門と国際定期貨物列車「中欧班列」の提携深化協定の調印。

シルクロード基金の資金を新たに1000億元(約1兆8千億円)増加。

中国国家開発銀行が2500億元(約4兆5千億円)と中国輸出入銀行が1300億元(約2兆3400億円)に相当する人民元特別融資をそれぞれ提供し、「一帯一路」のインフラ施設の建設や生産能力、金融提携のサポートに用いる。

今回の国際協力サミットフォーラム開催期間中に、30ヶ国以上との経済貿易提携協定に調印し、関連諸国と自由貿易協定を協議する。

2018年から中国国際輸入博覧会を開催。

この先5年間で、延べ2500人の青年科学者を中国に招き、短期間の科学研究業務に従事させ、延べ5000人の科学技術および管理スタッフを育成、共同実験室50ヶ所を設置、運用。

この先3年間で、「一帯一路」建設に参加する発展途上国家と国際組織に600億元(約1兆800億円)の援助を提供。

「一帯一路」沿線の発展途上国に20億元(約170億円)の緊急食糧援助を提供。

南南協力援助基金に10億ドル(約1194億円)の増資。

沿線国家に「幸福家園(幸せな家)」100ヶ所、「愛心助困(愛を込めた貧困扶助)」100ヶ所、「康復助医(リハビリと医療援助)」100ヶ所等のプロジェクトの実施。

 「一帯一路」の提携範囲

ユーラシア大陸とアフリカ大陸が重点エリアとなるが、同時に全ての国を歓迎する。アジアや欧州、アフリカ、アメリカ大陸などいずれの国も「一帯一路」建設の国際提携パートナーとする。


付記

アジアインフラ投資銀行(AIIB)は5月13日、バーレーン、キプロス、サモアの域内3ヶ国と、ボリビア、チリ、ギリシャ、ルーマニアの域外4ヶ国の加盟を発表した。合計で77か国となる。
(AIIBではトルコとキプロスは中東とみなし、域内扱いをしている。アジア開銀はトルコは域外扱い)



人民網日本語版(2017/5/5)は重大プロジェクトを総まとめしている。

インフラ建設から工業へ、さらに人的・文化的分野に至るまで、さまざまなプロジェクトが各地で花盛りとしている。

インフラプロジェクト 鉄道 中国ー欧州間鉄道 全国27都市で欧州間鉄道路線51本が開通し、欧州11カ国28都市へとつながっている。

2011年に運航がスタートしてから、2017年4月までの間に、累計3千本余りの列車が運行し、国際陸上物流の基幹ルートとなった。

2017/1/21 初の中国・英国 直通貨物列車、ロンドン到着

インドネシア

ジャカルターバンドン高速鉄道の建設
 中国の技術、基準、設備が採用された総合的システム型プロジェクト

建設用地収用が遅れていたが、ジョコ政権が強制収容に着手し、融資条件の土地収用完了の目途が立った。5月15日に融資契約を結ぶ見込みで、5月中にも建設工事が本格的に始まる見通し。

ロシア モスクワーカザン(タタルスタン共和国の首都)高速鉄道 (800km)
 完成すれば、現在の14時間から3.5時間に短縮される。
その他 ハンガリー - セルビア鉄道、中国ータイ鉄道、中国ーラオス鉄道、マレーシア南部鉄道、ケニアのモンバサーナイロビ鉄道、ナイジェリアのアブジャ - カドゥナ鉄道、アディスアベバ - ジブチ鉄道などの協力プロジェクト
港湾 パキスタン グワダル港
2016年11月、中国企業が建設と運営を手掛けるグワダル港で船舶が就航した。

2013/2/20 中国、パキスタンのグワダル港の運営権を取得 

ギリシャ ピレウス港
 2016年8月、中国企業が同港の港務局の大株主となり、経営を引き継いだ。

2016/4/12 ギリシャ、最大のピレウス港を中国に売却 
その他 ケニアの港、スリランカのハンバントタ港などの協力プロジェクトがある。
橋梁 セルビア ゼムン-ボルカ橋
 中国が欧州で建設した最初の大型橋梁で、設計と施工をすべて中国企業が主導した。2014年12月完成。
バングラデシュ バングラデシュ南西部と首都ダッカを結ぶパドマ橋
 2016年8月に着工。中国企業が請け負う協力プロジェクトとしては過去最大のもの。
その他 エクアドル 公共安全緊急指揮センター
 傘下に16の指揮センターが設立され、エクアドル全域をカバーする。中国企業が建設を担当、中国の設備と技術が100%採用された。
工業プロジェクト ミャンマー 中国・ミャンマー石油ガスパイプライン
 原油輸送でマラッカ海峡を航行する必要がなくなる。

2013/5/24 パイプライン万里長城が完成
英国 Hinkley Point C 原発プロジェクト
 中国・フランス両国企業が共同で投資・建設を行う。

2015/10/28 中国、英国の原発に出資、中国製原発も導入  

サウジアラビア ヤンブーの石油精製工場 (Sinopec初の海外石油精製プロジェクト)

Yanbu Aramco Sinopec Refining Co.(YASREF)
 
Saudi Aramco1 62.5% Sinopec 37.5% 
 
日量400千バレル

2012/1/18 Saudi AramcoとSinopec、サウジでの製油所建設の合弁契約締結

エジプト 送電線路プロジェクト EETC 500・1千ボルト級送電線路

 エジプト最大、最高電圧等級の送電線路プロジェクト

その他 セルビアのスメデレヴォ製鋼所、ベトナム・ビントァン省のビンタン発電所、キルギスのビシュケク発電所の改修プロジェクトなどの協力プロジェクト。
工業パークプロジェクト ベラルーシ 中国 - ベラルーシ工業パーク(Great Stone)

 総面積 91.5 km2 でシルクロード経済ベルトの新たなランドマーク。2014/6に基礎工事着工、総建設期間は30年で、3期に分けて建設。

マレーシア マレーシア - 中国 Kuantan 産業パーク

2013年に開園。
中国 - マレーシア欽州産業パークとともに、「2国2パーク」を構成

カンボジア シアヌークビル港経済特区

 中国初の海外経済貿易協力区の1つで、カンボジア政府認可の最大の経済特区。
 繊維、アパレル、金属機械、軽工業、家電などを基幹とする。

人的・文化的プロジェクト シルクロード書香プロジェクト

 2014年12月認可で、重点翻訳事業への資金援助、シルクロード各国の書籍の相互翻訳など

シルクロード生態文化万里行

 中国の優れた伝統文化を基礎プラットフォームとして、生態文化を称揚し、グリーンライフを提唱し、生態文明の共同建設を主旨とし、数千年の歴史を持つ中国民族の文化の精華を世界に広める。

国際国境協力プロジェクト 霍爾果斯(Khorgos)国際国境協力センター

 中国とカザフスタンの国境にまたがる越境経済自由貿易区で、上海協力機構の枠組における地域経済貿易協力のモデル区。

 

 

 

 

 

 

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