東京電力・福島第1原発の事故をきっかけに、スイスは脱原発方針を決定 、今回の国民投票の結果を受け、長期エネルギー戦略に基づく改正法が2018年に施行される見通し。
長期エネルギー戦略は、原発の新設を禁止し、代わりに風力や太陽光、水力などの再生可能エネルギーの利用を増やすというもの。
現在は太陽光・風力発電は総発電量の5%未満で、水力は60%、原発は35%となっているが、2035年までに太陽光、風力などの発電量を現在の4倍に引き上げることなどを目指している。
太陽光、風力、バイオマス、地熱の発電量を、現在の2,831 gigawatt hours から、2035年までに少なくとも11,400 gigawatt hours に増やす。
スイスには現在、5基の原発があるが、今後、新設はおこなわず、5基のうち Beznau-1号機は2019年に停止、他の4基については安全基準を確保できなくなった段階で解体する。(安全基準を満たす限り、稼働が可能)
風力、太陽光、水力による発電への投資に向け、年間4億8000万フラン電気料金を追加徴収する。1世帯当たり年間平均40スイスフラン(約4600円)増加することになる。
また、既存の化石燃料税から4億5000万フランがビルのエネルギー使用量を2035年までに2000年比で43%削減する取り組みに充てられる。
主に環境保護団体や「緑の党」が政府の方針に賛成した。
右派政党で議会第1党の国民党は電力供給が不安定になると訴えた。国民の負担が大幅に増すと指摘し、風車の建設などで観光資源として欠かせない景観が損なわれることも問題だと主張していた。
ロイトハルト大統領は記者会見で「国民が新たなエネルギー政策を支持し、原発の新設を求めていないことが示された」と指摘した。
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欧州ではドイツが2022年までに原発を段階的に全面停止する。
2002年に当時のSchröder政権(ドイツ社会民主党と緑の党の連立政権)が原子力法を改正し、原発の運転年数を32年と定めて順次停止し、2022年までに原発を廃止すること、原発の新規建設は認めないことを決定した。
しかし、2009年にMerkel 政権(キリスト教民主・社会同盟と自由民主党の連立政権)が成立し、方向転換した。
ところが、2011年3月11日の福島第一原発事故で、この決定が覆ることになった。メルケル政権は、福島原発事故後のドイツ国内の反原発運動の圧力に抗いきれずに、すべての原発を2020年までに廃止するという以前の決定を受け入れることになった。
2011年6月末のドイツ連邦議会で、この決定が513対79で可決された。
この決定で、8基の旧型の原発が2011年に廃止され、9基の原発は2022年までにすべて廃止されることが確定した。2016/7/12 ドイツの原発停止訴訟、電力大手の敗訴続く
オーストリアは、Zwentendorf 原発を建設したが、1978年11月に行われた国民投票で、50.47%が反対という結果となったため、完成した原発を稼動させないことを決め、現在に至っている。
さらに2013年7月、オーストリアの議会は原発で発電された電力の輸入禁止案を可決した。実際には、2015年からは全電力の電源表示が義務化されるということであるが、すべての電力供給事業者が、原発で発電された電力を国外から購入しないと誓約している。
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スイスの原発は次の通り。
原発名 炉型 発電量 商業生産 終了予定 Beznau-1 加圧水型 365 MW Sep. 1969 2019 Beznau-2 加圧水型 365 MW Dec. 1971 安全基準を満たす限り、稼働 Gösgen 加圧水型 970 MW Nov. 1979 Leibstadt 沸騰水型 1,220 MW May 1984 Mühleberg 沸騰水型 355 MW Nov. 1972
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