英国のEUからの離脱交渉が6月19日、ブリュッセルで始まった。交渉にはEUのMichael Barnier 首席交渉官(フランス元外相)、英国のDavid Davis EU離脱担当相(Brexit minister)が出席した。
今回の選挙で少数与党に転落した英保守党は、まだ下院の信任投票を受けていない状況のため、交渉は1日だけで終了した。
英国は、単一市場からの離脱による英経済への影響を最小限にするため、将来のEUとのFTAを優先的に議論することを求めていたが、交渉入りを急ぐため、下記の協議を最優先する方針で一致した。
(1)英国で暮らすEU市民の権利や地位の保護
(2)最大600億ユーロ(約7兆4000億円)とされる英国の未払い分担金など「清算金」支払い
(3)離脱後の英国とアイルランドの国境管理
三つの分野で十分な進展があったとEU側が認めた後、貿易協定など離脱後の関係に関する交渉に移る。
これは、欧州理事会(EU首脳会議)のDonald Tusk 常任議長が3月31日に原案を発表し、4月に採択されたEUのBrexit 交渉ガイドラインに沿ったものである。
2017/4/6 EUのBrexit 交渉ガイドライン
三つの分野でそれぞれ作業チームを作り、毎月1週間ずつ交渉会合を開く方針で、次回は7月17日から開く。
今回の会合では、英国は離脱に伴う費用の法的根拠に疑問を持っており、清算金支払いに合意しなかったとされる。支払いに関する相違を狭めることが今後の進展のキイとなる。
Davis EU離脱担当相は交渉後の会見で姿勢の弱さを問われ、「重要なのは貿易協定の交渉がいつ始まるかではなく、いつ終わるかだ」と反論した。
英国内で単一市場への残留を主張する声も高まっているが、「姿勢は変わらない。国境管理を取り戻すめ、単一市場を出る」と述べた。
EUの基本条約「リスボン条約」の50条によれば、離脱の通知(3月29日)から原則として2年の間で「離脱協定」を結ぶことが必要になる。EU側は欧州議会の承認などの時間も考慮すると、2018年10月までの合意が必要だとしている。
もし交渉期限までに協定がまとまらなければEU首脳会議の全会一致で交渉期限を延長することも可能だが、協定がまとまらず延長も認められなければ、英国は新しいルールがないままEU加盟国としての権利を失うことになる。
メイ首相が政権基盤を強化するため前倒しに踏み切った総選挙で、与党・保守党は過半数の議席を維持できず、メイ首相の求心力は大幅に低下している。
交渉の進展に伴い、強硬な離脱派から残留派まで議会のさまざまな勢力から横やりが入ることも予想される。
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