公取委は6月14日、平成28年度における主要な企業統合事例についての発表を行った。
事例2 が「ダウグループとデュポングループの統合」である。
Dow とDuPont の統合については、EU、中国、ブラジル、豪州、米国などの独禁法当局が承認しているが、豪州を除き、いずれも農薬や種子事業を問題にし、一部事業の売却を条件に承認している。
2017/3/28 EU、条件付きでDow / DuPont 合併を承認
2017/5/8 中国商務部、DowとDuPontの合併を条件付きで承認
2017/6/16 米司法省、Dow と DuPontの合併を条件付きで承認
付記 カナダのCompetition Bureauは 6月27日、合併を承認した。EUの求めに応じ、問題事業の売却を約束したことを理由とした。
これに対し、日本の公取委は、日本市場の状況から、農薬や種子は問題とせず、①酸性コポリマー と ②KrFフォトレジストポリマー及びKrFフォトレジスト を取り上げている。
① 酸性コポリマーは、EUや米国も問題としたエチレンアクリル酸コポリマーで、日本の国内シェアがデュポンが約 90%、ダウが5%弱で、合計シェアが95%になることから問題としたが、Dowが本事業の売却を約束したことから、問題なしとした。
Dowは2017年2月2日に、グローバルのエチレンアクリル酸(EAA) コポリマーとアイオノマー事業をSK Global Chemical に売却する契約を締結した。
2017/2/15 Dow とDuPont、合併承認を求め、事業売却を提案
② KrFフォトレジストポリマー(川上)及びKrFフォトレジスト(川下)
KrFフォトレジストポリマーについては、日本でのDuPontのシェアは35%で1位だが、他3社がそれぞれ20%、15%、10%のシェアで競合している。
KrFフォトレジストについては、Dowが約20%で、他3社がそれぞれ35%、25%、15%のシェアとなっている。
川上のポリマーのDuPontと川下のDowが合併した場合、DuPontがDowと競合する川下企業にポリマーの出荷を拒否し、競争を阻害するかどうかを検討したが、ポリマー分野では競合各社があり、川下のフォトレジストの市場が減少していることもあり、競争の阻害は考えにくいとした。
この結果、統合により、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。
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事例では、他に下記を取り上げている。
事例3 出光興産(株)による昭和シェル石油(株)の株式取得及びJXホールディングス(株)による東燃ゼネラル石油(株)の株式取得
2016/12/20 公取委、出光興産による昭和シェル石油の株式取得と JXホールディングスによる東燃ゼネラル石油の株式取得を承認
事例4 サノフィグループ及びベーリンガー・インゲルハイムグループによる事業交換
2015/12/19 仏Sanofi と独 Boehringer Ingelheim、事業交換の交渉
事例9 アボットラボラトリーズグループとセントジュードメディカルグループの合併
2017/4/18 Abbott、診断薬・機器の米Alere の買収で再合意 に記載
事例10 キヤノン(株)による東芝メディカルシステムズ(株)の株式取得
2016/7/4 公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認
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