国王や皇太子を選ぶ「忠誠委員会」でメンバー34人中31人がこの人事案に賛成した。
新皇太子は副首相を兼務し、国防相としての地位も維持する。(首相は国王が兼務)
ムハンマド・ビン・ナエフ皇太子は副首相や内相などすべての職務を解任された。
サウジ王家の関係は下記の通り。(名前の右の数字は生年)
第一世代 | 第二世代 (* 同母) | 第三世代 | 国王 |
皇太子 |
|||
Abdullah 国王 | Salman 国王 | ||||||
Abdulaziz Ibn Saud | ①1932/9-1953/11 | ||||||
Saud | 1902 | ②1953/11-1964/11 | |||||
Faisal | 1906 | ③1964/11-1975/3 | |||||
Khalid | 1913 | ④1975/3-1982/6 | |||||
Fahd * | 1921 | ⑤1982/6-2005/8 | |||||
Abdullah | 1924 | ⑥2005/8-2015/1 | |||||
Nayef | 1934 | 2011/10-2012/6 死亡 | |||||
Muhammad bin Nayef | 1959 | ②2015/4-2017/6 解任 | |||||
Salman * | 1935 | ⑦2015/1- | 2012/6-2015/1 国王に | ||||
Mohammad bin Salman | 1985 | ③2017/6- | |||||
Muqrin | 1945 | ①2015/1-2015/4 解任 |
サルマン国王は第7代国王で、2代以降はすべてIbn Saud 初代国王の息子である。
これまで、第二世代が順に王位を継承してきたが、サルマン現国王がこのルールを覆した。
2015年4月に、弟で王位継承者のムクリン皇太子を解任し、亡くなった兄のナーイフの息子(第三世代)ムハンマド副皇太子を皇太子にした。
継承順位2位の副皇太子には、自身の息子(第三世代)のムハンマド国防相をあてた。
ムクリン皇太子は当時70歳のため、王室の若返りが理由であった。
今回、ムハンマド皇太子を解任し、自身の息子を王位継承者、皇太子にした。
ムハンマド皇太子はまだ58歳、新皇太子は32歳で、若返りの必要性があるとは思えない。
サルマン国王がムハンマド新皇太子を次期国王にするのを確実にするために行ったものと見られる。
これまで第二世代の兄弟が順に継いできたが、今後は、 サルマン国王の系統が続く可能性が出てきた。
第二世代で国王になれなかったナーイフやムクリンの息子や、他の国王の息子など、権力から遠ざけられている一族に不満は強いと思われ、王家の中の争いの火ダネになる恐れがある。
ーーー
新皇太子はまた、サウジ経済の改革を担当している。
サウジアラビアの公的投資基金 (PIF) は1971年の設立以来、サウジ財務省が管轄し 、石油精製、肥料、石油化学、電力などの大事なプロジェクトのファイナンスを担ってきた。
2015年3月からは、新皇太子が率いるCouncil of Economic and Development Affairs (CEDA) へ移管された。新皇太子はPIF のチェアマンを務める。
2016年3月に、Saudi Aramcoの所有権が政府から PIFに移管された。
本年5月に発足した10兆円規模の投資ファンド SoftBank Vision Fund には、PIFは450億ドルを出資する。CEDA は、2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を作成、サウジ政府は2016年4月25日、国王主宰の閣議でこれを承認した。
石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していく。
公的投資基金(PIF)の資産を6,000億リヤールから7兆リヤール(約 2兆ドル)に増やす。
目標を達成するための手段として、
・ 国営石油会社Saudi Aramcoの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・ 民営化による透明性の向上と汚職抑制、
・ 軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・ 外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。Saudi Aramco の5%分の株式公開は2017年までに行われるが、これにより PIF は資産規模が2兆ドルの世界最大のファンドとなる。
皇太子、副首相、国防相、公的投資基金 (PIF) のチェアマンなどとして、国家の全てを掌握する。
コメントする