中国人民銀行(中央銀行)は5月26日、人民元の対米ドル取引の基準値の決定に新たな手法を導入すると発表した。
今回、新たに反循環的要因(counter-cyclical factor:中国語で「逆周期因子」)を勘案する。counter-cyclical factorとは変動抑制を意味し、前日の相場が大きく変動した場合でも、基準値の変動を緩やかに抑える仕組みとされる。
2017/6/5 中国、人民元の中心レート設定方法を変更
6月22日付 日本経済新聞は、「基準値」の新しい算出方法を報じている。人民銀行は四半期ごとにまとめる金融政策に関する報告書で8月に新手法を一般に公表する見込み としている。
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人民銀行は毎朝、基準値を公表、その上下限範囲内での変動を認めている。これまでの推移は下記の通り。
5月末に急に元高となったが、最近はまた元安に転じている。
上下幅 基準値の決定方法 その他 2012/4/16~ 1%
実績にほぼスライド 2014/3/17 2% 実績に関係なく、ほぼ横ばい ・ 2015/8/11 前日終値などを参考(市場の実勢を反映)
中国、人民元/米ドル取引の基準値の算出方法を変更、人民元2%切り下げ・ 2015/12/11 中国人民銀行、人民元の新指数導入
CFETS指数2016/春 前日終値+
「通貨バスケット」(CFETS指数、BIS指数、SDR指数)平均に対する元の変動幅
・ 2017/5/26 上記+
「逆周期因子」
更に、通貨バスケット変動の扱いの変更
通貨バスケットの推移
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日経報道によると、基準値算出方法に新しく2つの変更が加えられた。
①「逆周期因子」という激変緩和要素を新たに加える。
前日の相場変動のうち、どれだけが実需による値動きかを算出する。実需に拠らない変動は除外する。
実需による値動きに「マイナス3分の2」をかけたものが激変緩和要素となる。
従来は実需の値動きをほぼそのまま反映させていたが、今後は実需の値動きの1/3だけを反映させる。
架空の例で、基準値6.70元/$に対し、実績が6.60元と、0.10元の元安となったとする。
従来なら、6.60元近くに設定していたが、今後は差の1/3だけを反映させ、6.733元とする。
基準値 実績 差 逆周期因子 調整分 6/27 6.70 6.60 0.10 -0.067 0.033 6/28 6.733
(6.60でなく)
② 通貨バスケットに対する元の変動幅に特殊な係数をかける。
変動幅 「0~0.2%」の場合、元高は1、元安は0.7。
変動幅 「0.2~0.5%」の場合、元高は0.8、元安は0.5。
変動幅 「0.5%以上」の場合、元高は0.6、元安は0.3。
元安を進みにくくする仕掛けで、元安時は基準値への反映を抑え、元高時はより大きく反映する。
「逆周期因子」の場合、なぜ1/3なのかの説明はなく、通貨バスケットに対する変動幅の係数の根拠の説明もない。
いずれにせよ、市場との連動を強めるというこれまでの動きに逆行し、管理強化に動いている。
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