BASF、マラリア対策の長期残効型の防虫処理蚊帳を開発

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BASFは7月13日、WHOから農薬クロルフェナピル(Chlorfenapyr)をベースとした長期残効型防虫処理蚊帳(Interceptor® G2)の推奨を受けたと発表した。

クロルフェナピルを使ったもう一つの製品の室内残効性スプレー(Sylando® 240SC)もWHOで評価の最終段階にある。

Innovative Vector Control Consortium (IVCC) とロンドン大学衛生熱帯医学大学院の10年に及ぶ協力を得て、BASFは農薬のクロルフェナピルを蚊帳用に使用するのに成功し、WHOの公衆衛生用の厳しい基準に合格した。

IVCCは、画期的な製品の開発を通じて蚊が媒介する疾病(マラリア、デング熱、デング出血熱等)の感染を減らすことなどを目的として、2005年にBill & Melinda Gates Foundationの支援を受けて設立された非営利団体。


ロンドン
大学衛生熱帯医学大学院は、公衆衛生学研究で世界トップレベル。

マラリアは、マラリア原虫に感染した蚊に刺されることにより人に感染し、世界では、毎年約2億人がマラリアを発症し、約63万人が亡くなっていると言われている。うち、子供は2分に1人が亡くなっている。 WHOのマラリア対策は、予防、治療、およびこれらに寄与する研究を重要視しており、効果的な感染予防の手段として、長期残効型防虫処理蚊帳などとともに、室内残効性スプレーの使用が推奨されている。

WHOの推奨する蚊防除殺虫剤は4つしかなく、そのうちのピレスロイドだけが防虫処理蚊帳用に推奨されている。

住友化学のOlyset Net はポリエチレンにピレスロイド系殺虫剤を練り込んだ長期残効型防虫蚊帳で、2001年にWHOから使用を推奨された。

現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、80以上の国々に供給されている。

2013/6/8 住友化学のOlyset Net  

しかし、一部地域では、既存殺虫剤に抵抗性をもつ蚊の発生が確認されている。同一薬剤の継続使用により抵抗性を持つ蚊が現れる。

住友化学は2014年9月、「オリセットRネット」の技術を発展させ、既存の防虫剤の殺虫効果を高める薬剤を加えることにより、抵抗性を有するマラリア媒介蚊にも有効性を示す「オリセットRプラス」を開発し、バングラデシュで販売を開始した。

さらに、住友化学とIVCCは2015年の世界モスキート・デー(8月20日)に、マラリア対策向け新規殺虫成分の現地試験を開始すると発表した。開発中の新規殺虫成分は、こうした抵抗性問題の解決につながることが期待される。

2015/8/22 「世界モスキート・デー」 

BASFの行った西アフリカのベナン共和国、ブルキナファソ共和国、タンザニア、コートジボワール(象牙海岸)での別々の実験で、防虫処理蚊帳(Interceptor® G2)と室内残効性スプレー(Sylando® 240SC)は薬剤抵抗性の蚊に対し有効であることが証明された。

WHOの推奨を受け、BASFは防虫処理蚊帳(Interceptor® G2)の販売の準備に入った。各国での承認を受け、本年末にも使用される見込み。

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クロルフェナピル(Chlorfenapyr)は有機ハロゲン化合物の一種で、American Cyanamidが開発した殺虫剤。

ピロール系の構造を持ち、果樹・野菜のコナガやハダニの呼吸系を阻害し殺虫効果を現す。日本では1996年4月25日に農薬登録を受け、日本曹達から「コテツ」の商品名で発売されている。

American Cyanamidは1907年設立の米国の総合化学会社であった。設立とともに,ドイツから特許を得て空中窒素の固定,石灰窒素の生産を開始、その後、窒素,リン酸肥料分野へ進出し、合併を繰り返しながら尿素樹脂,タール製品,メラミン樹脂,医薬品分野へ進出した。

事業内容は農業部門 (肥料,殺虫剤,除草剤,飼料など) ,化学部門 (重化学品,水処理薬品,アクリロニトリル,メラミン,爆薬,製紙・鉱業用製品など) ,有機化学部門 (触媒,染料,プラスチック添加剤,合成ゴムなど) ,合繊部門 (アクリル,ポリエステル繊維) など,数千種類の製品に及んだ。

1994年にAmerican Home Products に買収されたが、2000年にBASFに買収された。

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