米通商代表部、NAFTA再交渉の協議目標を公表

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米通商代表部(USTR)は7月17日、カナダ、メキシコと始める北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉に向け、貿易赤字の削減など22項目の協議目標を公表した。

Ronald Trump は2016年10月下旬に、大統領に選ばれた場合の公約 「アメリカを再び偉大にする」ための100日間のアクションプランを発表したが、そのなかで、大統領就任の1日目に、米国の労働者保護のため、7つのアクションを行うとし ており、「米・加・メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA) の再交渉又は撤退の意思を発表」が含まれている

大統領は1月22日、メキシコ、カナダとそれぞれ開く首脳会談で北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を始めると表明した。 トランプ米政権は5月18日、米議会に再交渉に乗り出すと正式に通知した。

USTRはそれ以降、米議会などと協議をしてきたが、今回、協議目標を公表した。8月16日以降に再交渉を開始する。

米国の製品、農産品、サービスのカナダとメキシコへの市場アクセスを改善することにより、米国の貿易赤字を減らし、全ての米国民にとってフェアな、はるかに良い協定を目指すとし、次のように述べている。

USTRは初めて、NAFTA交渉の目的として貿易赤字縮小を含めた。

NAFTAは1994年に発効したが、それ以来、メキシコとの間の貿易収支は13億ドルの黒字から、2016年には640億ドルの赤字になった。

カナダとの間では、乳製品、ワイン、穀物、その他製品に関して市場アクセスの問題が生じている。貿易障壁の問題は現在の協定には含まれていない。

Digital Trade (ソフトウエア、音楽、ビデオ、e-bookなど)が新しく加わる。
現在、付帯条項となっている労働・環境義務も取り入れ、強化する。
またアンフェアな補助金、国営企業による市場を歪める慣行、知的所有権に対する重い制限などを取り除く。

トランプ米大統領は大統領選中に「メキシコ製品には35%の関税を課す」と言及したが、これは見送る一方、通貨安誘導を防止する「為替条項」を新設するよう求める。

22項目の協議目標は次の通り。

Trade in Goods カナダ・メキシコとの貿易赤字の縮減
  工業製品
  農業製品
Sanitary and Phytosanitary Measures
(衛生植物検疫措置)
Customs, Trade Facilitation &
Rules of Origin

Rules of Originでは、真に米国および北米で生産された製品がNAFTAのメリットを受けることとしている。
(現在、乗用車なら域内の部品調達率が62.5%を超えれば関税がゼロになる。)
Technical Barriers to Trade
Good Regulatory Practices 市場アクセス推進
各国間の規則の互換性
Trade in Services including Telecommunications and
Financial Services
Digital Trade in Goods and Services and Cross-Border Data Flows Digital products (e.g., software, music, video, e-books) は非関税に。

Investment 全てのセクターで米国の投資への障壁を除外、または縮小
Intellectual Property 適切かつ有効な知財保護の推進
Transparency
State-Owned and Controlled Enterprises
Competition Policy
Labor この条項を本契約に盛り込む(現在は付帯条項)
Environment この条項を本契約に盛り込む(現在は付帯条項)
Anti-Corruption
Trade Remedies 反ダンピング、反補助金、セーフガードなどの貿易法を強力に施行する米国の能力を維持

反ダンピング・反補助金措置の適用をおおむね禁じているNAFTAのメカニズムを廃止し、米国法の適用が制限されないようにする。

NAFTA19条の紛争解決メカニズム(NAFTA加盟国の当事者は裁判を2つのNAFTA加盟国の適切な5人の市民から構成される二国間の陪審団によるものにするように要求する権利がある)の廃止など
Government Procurement
Small- and Medium-Sized Enterprises
Energy
Dispute Settlement
General Provisions
Currency 適切なメカニズムを通じて、有効な為替調整を妨げたり、アンフェアな競争上の利益を得るために為替レートを操作することが出来ないようにする。


具体的な内容は不明だが、徹底的に米国に都合のよいように変更しようとしているように見える。

そもそも、米国の貿易赤字を減らすのを主な目的とするのはおかしい。輸入品の関税をあげれば、それを使う米国製品のコストは上がり、競争力がなくなる。

トランプ政権はNAFTA再交渉を今後のFTA交渉のモデルケースと位置づけている。
韓国とのFTA見直しや、今後の日米FTA交渉にも影響を与える。

付記

米国、カナダ、メキシコの3カ国は8月20日、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の第1回会合を終えた。年内の決着を目指し、政府間の協議を加速することで合意した。

初会合終了後に発表した共同声明のポイントは次の通り。

・ 3カ国は再交渉で野心的な成果を上げることで一致し、NAFTAのルールを改正する重要性を再確認した。
・ 初会合では20以上の交渉分野について協議した。
・ 第2回会合を9月1~5日にメキシコで、第3回を9月下旬にカナダで、第4回を10月に米国でそれぞれ開く。

具体的な成果は明らかにしていない。

米国は、原産地規則の厳格化や他国の通貨安誘導を封じる「為替条項」の導入を強く求めているが、カナダやメキシコの反対で協議が難航しているとみられる。

付記

9月5日、第2回会合を終えた。

メキシコの経済相によると、25項目のうち電子商取引、中小企業対策など7項目について協議が進展しており、次回会合でまとまる可能性もある。一方、原産地規則に関しては米国側から具体的な提案はなかったとしている。

第3回会合は9月23~27日にカナダのオタワで開く。

付記

第4回会合は10月17日 閉幕した。3カ国は2017年内の妥結を断念し、2018年1~3月に先送りすることで一致した。

米国は自動車の関税をゼロにする条件として、現在の域内部材の62.5%以上使用を85%以上とするとともに、米国製部材を50%以上使うよう求めたほか、5年ごとに協定を見直す条項の導入などを提案したが、カナダ、メキシコが反発した。

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