東芝メモリ売却 難航

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東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の買収で優先交渉先となった産業革新機構などの「日米韓連合」内で、韓国半導体大手 SKハイニックスが最大33.4%の議決権取得を要求していることが、分かった。

SKは協議の過程で、将来的にBain Capitalから議決権(33.4%) の一部か全部を取得できる権利などを持つことを求めたという。33.4%の議決権は重要議案への拒否権を発動できる。

SKはBain Capitalに融資する形で参画するため、東芝の綱川智社長は「SKには議決権がなく、技術流出は防げる」と指摘していた。
しかし、SKハイニックスが単に融資のためだけに参加することはあり得ず、事業への参加を狙っているのは当然のこと。

競合企業が当初計画の融資ではなく出資とみなされる形で参画すれば独占禁止法の審査が長期化し、2018年3月末までの売却は難しくなる。

加えて、Western Digital は、売却差し止めを求めて米国の裁判所に提訴しており、7月14日(日本時間15日)に審問が予定されている。Western Digital はSKへの技術流出の懸念が顕在化したとして対決姿勢を強めるのは必至である。

そもそも、半導体業界で生き残るには、年間3000億円程度の設備投資を毎年のように続けなければならない 。産業革新機構や日本政策投資銀行とBainの寄合所帯がその判断を素早くできるのかとの疑問が出されている。今回の決定前に、「烏合の衆に、大胆で迅速な決断はできない。これが、東芝メモリが地獄に陥る最悪のケースである」との声があった。

本来は、シャープを再建した鴻海が最適だと思われるが、政府の介入で外された。

その鴻海傘下のシャープの首脳は7月3日、東芝メモリの買収について、「長引くと技術のチャンスがなくなる」と述べ、交渉が長期化する場合は撤退する考えを示した。ゆさぶりをかけたもの。

東芝の上場廃止の可能性も出てきた。

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機構が議決権のある普通株を50.1%、日本政策投資銀行が16.5%をそれぞれ出資、日本勢が66.6%と3分の2を占め、技術流出につながる経営判断などを防ぐ。

Bain Capital とSKの外資勢は全体の3分の1にあたる33.4%を持ち、株主総会で合併や事業譲渡などの重要事項で拒否権を発動できるようにする。
但し、SKはBain Capitalに融資を行うもので、直接、普通株を所有せず、議決権を持たない。これにより、各国の独禁法審査を避ける。

出資2兆円のうち8500億円は議決権のない優先株などで調達し、4分の3を外資勢が、4分の1を政投銀がそれぞれ出す。
銀行団が5500億円融資する。

普通株 優先株 融資 合計
産業革新機構 50.1% 3000億円 3000億円
日本政策投資銀行 16.5% 1000億円 2125億円 3125億円
Bain Capital 33.4% 2000億円 6375億円 8375億円
SK Hynix
銀行団 5500億円 5500億円
合計 6000億円 8500億円 5500億円 2兆円

韓国紙によると、SK Hynix は3000億円を出すとのこと。

東芝は同日、不正競争防止法違反等を理由として、Western Digital に対して、不正競争行為の差止めを求める仮処分命令の申立て及び総額1,200億円(一部請求)の支払い等を求める損害賠償等請求訴訟を東京地裁に提起した。


Western Digial は東芝メモリ売却の入札手続きに対して、看過できない妨害行為を継続的に行っている。
東芝とSunDiskの合弁会社の持分を東芝メモリへ譲渡すること及び東芝メモリの株式を第三者に譲渡することについてWestern Digital の同意が必要などを流布し、信用を毀損した。

Western Digitalは6月14日、同社のSanDisk系子会社がカリフォルニア州上級裁判所に、東芝と共同で運営する3つのNAND型フラッシュメモリ合弁事業売却の予備的差し止めを求めたと発表した。ICC 国際仲裁裁判所の決定が下るまでの暫定措置として請求している。7月14日(日本時間15日)に審問が予定されている。

また、Western Digital は、合弁事業及び共同開発に関する情報へのアクセス権を有するSunDiskの従業員をWestern Digitalに転籍させること等により、機密情報を不正に取得、使用している。

これらの行為が不正競争防止法や民法上の不法行為に該当すると判断した。

合弁事業及び共同開発に関する情報へのアクセスについては、本日をもって遮断することとした。

産業革新機構は産業競争力強化法という法律に基づき設置されており、成長事業にしか投資できない。
法律でわれわれの資金は投資先の借金返済には1円も充てられないことになっている。

昨年のシャープ(鴻海に敗北)の時は、ジャパンディスプレイとシャープの液晶事業の統合や、シャープの家電事業と東芝の家電事業の統合を狙っていて、業界再編による成長戦略があった。

フラッシュメモリを買収するだけでは意味がない。成長戦略が描けず我々としても身動きができない。

どこかのフラッシュメモリ会社から「東芝と一緒になってシナジーを作りたいが資金が足りないから一緒に投資してくれ。将来的にはIPOも考えている」というシナリオを頼まれれば検討できるかもしれないが、機構1社で持つのはイグジットを考えると難しい。

この発言に対し、今回の出資をどう説明するのだろうか。

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なお、東芝は7月3日、ランディス・ギアについて、9月末までをめどにスイス証券取引所で新規株式公開(IPO)による上場を計画すると発表した。
同社の売却手続きも同時に進める。

日立製作所と英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズは価格などの条件面で折り合わず、手続きからいったん撤退したもよう。

2017/4/29 東芝のスイス子会社ランディス・ギアの売却

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