コニカミノルタと産業革新機構は7月6日、がんの遺伝子診断技術を持つ米国の Ambry Genetics Corporation を共同で買収する契約を締結したと発表した。
手続き完了後に8億ドルを支払う。業績連動型のアーンアウト方式 (Earn Out Deal) の採用により、同社の今後2ヶ年度の決算数値に応じて、追加代金が最大2億ドル発生する可能性があ る。
出資比率はコニカミノルタが 60%、INCJが 40%。
コニカミノルタは、売上高ベースで約8割を稼ぐ事務機事業が市場の縮小で苦戦を強いられており、ヘルスケア事業を強化する。
同社のヘルスケア事業の全売上高に占める割合は10%程度で、主力製品は病院向けに販売するX線撮影装置。
創薬支援や個別診断といった医療関連への新規参入も目指している。
買収する Ambry Geneticsは、最先端の遺伝子診断技術を持ち、高度な商品開発力、多様な検査項目、高い検査処理能力、遺伝子カウンセラーチャネルでの圧倒的な強さを背景に、成長著しいがん領域を中心とした米国の遺伝子検査市場におけるリーダー的存在となってい る。
同社は世界で初めて、診断を目的としたエクソーム解析試験 (遺伝子の中でタンパク質に翻訳される領域であるエクソン領域のみを濃縮して解析することにより、エクソン上の変異を効率的に検出する手法)を始め、遺伝性および非遺伝性の腫瘍、心臓疾患、呼吸器疾患、および神経疾患など多数の臨床分野向け遺伝子検査を提供してい る。
カリフォルニア州に所有する最先端の大規模ラボにおいて、すでに 100 万件を超える遺伝子検査の実績を持ち、500 種の遺伝子において 45,000 以上の突然変異を特定している。
→ 解析
コニカミノルタは、最先端の遺伝子診断技術、バイオインフォマティクスを駆使した高度な IT 解析技術、最新鋭で大規模な検体検査ラボ、高収益なサービス事業を取得し、がん治療などに今後大きな役割を期待されているプレシジョン・メディシン(個別化医療)推進に向けた戦略的取り組みの先駆けと する。
プレシジョン・メディシンは、個々人の細胞における遺伝子発現やタンパク質などの特性を分子レベルで判別することで個々の患者を精密にグループ化し、最先端の技術を用いて適切な投薬、治療と予防を提供する医療。
従来の画一的な方法ではなく、患者特性に応じた集団ごとの治療法から疾病予防までを確立する事により、適切な投薬、治療が可能となり、膨張する国民医療費削減の切り札として世界中で注目されている。
さらに、コニカミノルタの固有技術であるタンパク質高感度定量検出技術(HSTT:下記)と、Ambry Geneticsの遺伝子診断技術を合わせる。
コニカミノルタの山名社長は記者会見で「(買収により)世界トップクラスの遺伝子とたんぱく質の診断・解析技術をあわせ持つことになる」と述べ、「個別診断事業に本格参入し、5年後には売上高1000億円以上を目指す」と意気込みを語った。
今後、両社の技術を基に、プレシジョン・メディシンを Ambry Geneticsがリードする米国から、日本・アジアおよび欧州展開によりグローバル・リーディング・カンパニーへと 成長する。
産業革新機構は、経営上のサポート及び日本展開のサポートを行う。
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コニカミノルタは東北大学と共同で、蛍光ナノ粒子を用いてがん細胞に発現するタンパク質を正確に検出する新技術 「HSTT(High Sensitive Tissue Testing)」を開発した。がん細胞に発現する特定のタンパク質の数や位置を解析し、早期に高精度な病理診断を可能にするもの。
従来の免疫染色「DAB法」では、がん細胞に特定のタンパク質が存在しているかどうかを確認できた が、HSTTでは、特定のタンパク質の有無だけでなく、数や位置まで正確に解析することが可能になる。
HSTTでは、 一般的な蛍光色素の約1万倍の輝度で、高い耐久性を備える独自開発の蛍光ナノ粒子(Phosphor Integrated Dots)を用いる。
患者から採取した組織に2段階の抗体を介して反応させる等の工夫をして蛍光ナノ粒子を特定タンパク質(抗原)に確実に付着させ(特異吸着)、 蛍光ナノ粒子の表面処理と特殊加工剤(ブロッキング剤)により、それ以外に付着する(非特異吸着)確率を減らす。
コニカミノルタは蛍光ナノ粒子によって発光した病理組織を蛍光顕微鏡で撮影し、その画像をソフトウェアで解析する技術も開発した。
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