Western Digitalは6月14日、同社子会社(=SanDisk系子会社)がSan Francisco County Superior Courtに、東芝と共同で運営する3つのNAND型フラッシュメモリ合弁事業売却の予備的差し止めを求めたと発表した。ICC 国際仲裁裁判所の決定が下るまでの暫定措置として請求している。
裁判所は7月14日、この訴訟の審問を開いた。
Harold Kahn判事は双方から主張を聴取したが、結論を持ち越した。次回の審問は7月28日に開く。
審問で裁判官は「東芝が売却の契約締結の2週間前にWestern Digitalに通告する」との命令案を提案した。
これに対し、東芝側は、JVが日本企業であり、取引はほとんどが日本で行われており、米裁判所には管轄権がないと主張していることから、米裁判所の命令に従うことには問題があるとした。
Western Digital 側は、東芝が管轄権を否定しているため、東芝が約束を破った場合、命令が実行できないとの懸念を表した。
裁判官は、双方で命令案を作成するよう指示し、次回の審問を7月28日に設定した。
東芝は7月28日までは事業売却ができないことになる。
「売却完了」=買収代金の払い込みが終わる手続きができないとの意味で、東芝は「当社が進めているメモリー事業売却の契約締結を妨げるものではない」との声明を出した。
命令案が正式に決まれば、東芝は進行中の売却手続きを止める必要がない一方、Western Digital 側には通告を受けて何らかの法的措置を起こす余地を残す判断になる。
Western Digital側は「2週間あれば売却への対抗措置をとるのに十分な時間を取れる」としている。
この Harold Kahn判事は7月12日、東芝によるWestern Digital社員への情報遮断を一部やめさせる仮制止命令を下した。
東芝は6月28日、不正競争防止法違反等を理由として、Western Digital に対して、不正競争行為の差止めを求める仮処分命令の申立て及び総額1,200億円(一部請求)の支払い等を求める損害賠償等請求訴訟を東京地裁に提起したが、合弁事業及び共同開発に関する情報へのアクセスについては、同日遮断した。
Western Digital は売却差し止めを求めた訴訟とは別に情報アクセスを認める措置を求めて同裁判所に申し立てていた。
東芝によると、
Western Digitalのアクセスが認められた情報は、アクセス遮断前に発生した情報で、かつ、東芝情報を含まない情報であり、アクセスの期間も限定的な期間(数週間)である。
東芝又は東芝メモリに帰属する情報やアクセス遮断後(6月28日)に発生した情報を引き続き遮断することが認められた。
今回の命令は別の案件とはいえ、同じ合弁会社との争いについて同じ裁判官が米裁判所の管轄権を認めたことを意味する。
東芝は同日、「今回の命令については不服であり控訴する」との声明を出した。
付記
東芝は、この仮停止命令を不服として、カリフォルニア州控訴裁判所に上訴するとともに、仮制止命令の執行の一時停止を申し立てた。
控訴裁判所は7月18日、仮制止命令の執行の一時停止を認める判断を行った。
東芝はこれに基づき、アクセス遮断を再開した。(遮断対象は東芝と直接的な契約を結んでいないWestern Digital 社員であり、SunDisk 社員は継続的にアクセス可能という。)
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