7月21日に博多港アイランドシティにあるコンテナ置き場でヒアリが発見された。ヒアリの発見は6都府県で8例になった。
ヒアリ(Red imported fire ant)は、学名 Solenopsis invicta で、南米大陸原産のハチ目(膜翅目)・アリ科・フタフシアリ亜科に属するアリ。
アメリカでは1930年ごろにヒアリの侵入が確認され、船荷に伴って持ち込まれたと考えられている。
近年、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、台湾、中国南部など環太平洋諸国に急速に分布を拡大している。
ニュージーランドは世界で唯一、ヒアリの根絶に成功したとされる国とされる。
2001年にオークランドの空港の近くでヒアリの巣が発見されたものの、現場周辺で徹底したモニタリングを実施するなどの対策を講じ、2003年までに根絶宣言を出した。
その後、2004年(Napier港)と2006年(WhirinakiのPan Pac Forest Products 社)でも ヒアリの侵入が確認されたが、駆除に成功している。Whirinakiでは3万匹のヒアリの巣を処理した後、巣から半径2kmのエリアを3年間 徹底的に調査(90万以上の餌入りの容器を回収してチェック、近寄れない場所はベイト剤を散布)し、2009年に根絶を確認した。http://b3.net.nz/gerda/refs/14.pdf
ニュージーランド第一次産業省担当者は、「早期発見が成功の主な要因だ。監視プログラムが2度目のヒアリ発見につながった」と述べている。
住友化学は7月20日、 国内関係機関によるヒアリの侵入および定着阻止の各種取り組みに役立てるために、海外で展開するヒアリ対策剤「Esteem®」を日本に導入すると発表した。
まず環境省などに無償で提供して効き目を確かめてもらい、需要が見込めれば業務用販売も検討するとしている。
「Esteem®」は、同社の100%子会社のValent U.S.A.がEPA登録を取得している製品で、米国国内で販売されてい る。
(販売元は、住友化学が包括的業務提携契約を結んでいる豪州の農薬メーカー Nefarm の米国子会社)
そのほか、ヒアリの問題が顕在化したオーストラリア、ニュージーランド、台湾のヒアリ根絶プロジェクト等、各国の行政当局でも使用されている実績を持ち、高い評価を得てい る。
オーストラリア、ニュージーランドでは「Distance®」の商標で登録、販売されている。
「Esteem®」は、Valent U.S.A.が開発した誘引ベイト剤で、主に餌剤と有効成分ピリプロキシフェン(Pyriproxyfen)から構成された顆粒剤が、ヒアリによって巣に運ばれ摂食された後、有効成分の作用によって女王アリの産卵および幼虫の成虫化を抑制する効果がある。
本剤が使用された国では、処理後3~4週間で巣が衰退し、 8週間後にはヒアリが駆除され、防除に役立つことが確認されているという。
ピリプロキシフェンは、1981年に住友化学により開発された4-フェノキシフェノキシ構造を有する殺虫剤で、昆虫体内で幼若ホルモンとして作用し、胚仔の発育阻害による殺卵作用、蛹化または成虫化を阻害することによる変態阻害作用等により作用すると考えられている。
ピリプロキシフェン はハエ、蚊、ゴキブリなどの衛生害虫に成長抑制剤として機能する。WHOの評価書 Pyriproxyfen in Drinking Water において、ジカ熱、デング熱、黄熱病等の感染症を媒介する蚊防除に有効な薬剤とされている。
農業・園芸分野では、カイガラムシ、コナジラミ、アメリカタバコガ、ヨコバイ、アブラムシ、ヨトウムシなどの駆除に使われている。
登録にあたり、哺乳動物に対する膨大な安全性試験が実施され、発がん性や催奇形性等の悪影響がないことを確認しており、また、世界保健機関(WHO)、EPA、欧州食品安全機関(EFSA)においても同様の評価が与えられている。
一時、ブラジルにおける蚊幼虫駆除剤としての使用と小頭症発生の因果関係を示唆する報道があったが、ブラジル保健省は、ピリプロキシフェンと小頭症の関連を示す科学的根拠はないことを明らかにした。幼虫駆除剤を使用していない地域からも小頭症患者が確認されているとしている。
コメントする