Western Digitalは6月14日、同社子会社(=SanDisk 系子会社)がSan Francisco County Superior Courtに、東芝と共同で運営する3つのNAND型フラッシュメモリ合弁事業売却の予備的差し止めを求めたと発表した。ICC 国際仲裁裁判所の決定が下るまでの暫定措置として請求している。
裁判所は7月14日、この訴訟の審問を開いたが、結論を持ち越した。
2017/7/15 米裁判所、東芝メモリ売却に関し結論持ち越し
2回目の審問は7月28日に開かれたが、双方が下記の点で合意し、裁判所はこれを裁判所の決定とした。裁判所は売却の予備的差し止めの判断をしなかった。
合意は、第一回の審問で裁判所から示された「裁判所の決定を求めるよりも両者の合意に向け交渉すべきである」という提案に基づきなされた。Western Digital が予備的差し止めを求めたのは、ICC 国際仲裁裁判所の決定が下るまでに抜き打ちで売却されるのを防ぐための暫定措置であり、交渉でこれが防げればよいではないかというもの。
合意内容は下記の通り。
最終契約締結後、24時間以内に公表
売却完了(払い込みが終わる手続き)の2週間前までに通知
この合意は、2か月以内にも始まるとみられる仲裁廷が構成された後、60日が経過するまで(今から約4カ月間)有効。
東芝は進行中の売却手続きを止める必要がない一方、Western Digital 側には通告を受けて何らかの法的措置を起こす余地を残す。Western Digital 側は「2週間あれば売却への対抗措置をとるのに十分な時間を取れる」としている。 また、今回の適用期間後も、仲裁裁判所や米州裁判所に売却手続き一時停止の暫定的保全措置を申し立てることは可能。
東芝は合意について次のように述べている。
今回の合意は極めて限定された期間のみ有効なものである上、内容としても、東芝がメモリ事業売却の交渉を進めて最終契約を締結するという権利が認められた。
裁判所が言及した期間(今から約4カ月間)に事業売却が完了(払い込みが完了)することは予定していない。
(* 独禁法当局の承認を考えると、売却完了は東芝が上場廃止のための絶対条件とする来年3月末でもギリギリである。)本合意は、SanDiskが東芝メモリの株式売却に関して同意権を持つことに当社が合意したものではない。
東芝は裁判管轄を争う旨の主張を留保しており、この限定された合意の締結及び実行以外の事項に関して、カリフォルニアの裁判所が裁判管轄を有することを認めたものでもない。
(Western Digital は、本件合意を裁判所の決定とすることで、裁判所が東芝に管轄権を持つことを認めたとしている。)持分譲渡に関する問題を取り扱うに適切な場である国際商工会議所(ICC)の仲裁廷における対応に注力する。
Western Digital は、目的はJVの成功であり、ベストな解決策を引き続き求めるとしている。
今後、東芝とWestern Digital の争いは国際仲裁裁判所を舞台に続けられることになる。
しかし、仲裁裁判は1~2年かかるとみられている。それまでに売却が完了していても、無効とされたり、損害賠償を求められる可能性がある。
このため、優先交渉先の日米韓連合も、法的リスクが続く限り、契約締結には踏み切れないとみられる。(日米韓連合にはSKハイニックスが議決権を求めている問題もある。)
各国の独禁法当局の承認を得るには6カ月は必要とされており、Western Digital との対立が解消しない限り、来年3月末までの売却は難しい。
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