東芝、東証2部降格 

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東芝株式は8月1日、東京証券取引所の第1部から第2部に「降格」となった。大手電機では2016年のシャープに次ぐ2例目。

2017年3月末時点で債務超過となり、1部上場基準に抵触した。来年3月末までに債務超過の解消、2017年3月期有価証券報告書での適正意見、特定注意市場銘柄指定解除の3つのハードルの全てをクリアできないと上場廃止となる。

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東京証券取引所は6月23日、東芝株式を8月1日付で東証1部から2部へと指定替えすると発表した。2017年3月末時点で「債務超過の状態であることが確認されたため」とした。

東芝は2017年3月期決算について監査法人の承認が得られておらず、株主総会で報告していないほか、有価証券報告書の提出も延期している。

同社は、監査法人の承認を得られないまま、76月23日に同社としての「2016年度業績見通し」を発表した。

当期純損益

-9,952億円

期末株主資本 -5,816億円

今後の上場継続の条件は下記の通り。

債務超過の解消

増資は考えられないため、東芝メモリの売却益を計上することが唯一の方法である。

来年3月末までに、現在交渉中の東芝メモリの売却がまとまり、各国の独禁法当局の承認を得て、代金決済が完了することが必要となる。

しかし、交渉相手先の日米韓連合にはSKハイニックスが議決権を求めている問題があり(この場合、独禁法審査が長引く)、売却対象に含まれるNAND型フラッシュメモリ合弁事業の相手のWestern Digital が対抗措置をとることが必至のため、見通しが立たない状況にある。

2017/7/31 東芝メモリ売却に関する米での訴訟で合意

中国の独禁法審査には6カ月はかかるとされ、8月末が期限となる。

東芝メディカルシステムズ売却で使った奇手は使えない。

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東芝は2016年3月の東芝メディカルシステムズのキヤノンへの売却の場合は、独禁法を審査を後回しにして、先に売却し、売却益を計上するという奇手を使った。

2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手

しかし、公取委からは、本件については承認するものの、株式取得のスキームが、事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあるとして、異例の注意を受けた。公取委はこの方法を実質的に禁止した。

2016/7/4 公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認

中国商務部は、独占禁止法に基づく買収の事前届け出義務違反を問題とし、キヤノン (佳能)に30万元(約500万円)の 罰金を科した。

2017/1/6 中国、東芝メディカル買収でキヤノンに罰金の行政処分

更に、欧州委員会はキヤノンに対し、承認前に買収をした疑いで異議告知書を送付した。今後の検討で問題だと認定した場合、罰金支払を命じるが、罰金は世界全体でのキヤノンの年間売上高の最大10% (3,400億円)にもなる。

2017/7/7 EU、キヤノンの東芝メディカル買収で異議告知書

有価証券報告書での適正意見

2017年3月期の有価証券報告書の提出期限は8月10日だが、監査法人のPwCあらた監査法人との間では見解が相違したままとされる。

東芝の監査は2017年3月期から従来の新日本監査法人からPwCあらた監査法人に変更になった。Westinghouse自体の監査は提携するPricewaterhouseCoopers(PwC)になった。

東芝は2016年12月27日、前年末のStone & Webster 買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性が生じたことを明らかにした。

PwCとPwCあらたは、巨額損失が突如分かったのは不自然だとし、2016年3月以前に損失を認識できたのではとみている。(その場合、新日本監査法人が承認した2016年3月期の決算変更も必要となる)
これに対し東芝は、何度も調査したが、2016年12月以前の損失の認識はなかったとして、対立が続いている。

現在に至るも、問題の解決が見られず、監査法人が「不適正」の意見を出す可能性が出てきた。

なお、本ブログは2016年7月以前にWestinghouseが損失の存在を知っていたとみている。

Westinghouse がCB&I からS&Wの無償での買収を決めたが、運転資本額を調整する条項がある。
CB&Iは運転資本の算定の結果として基準を428百万ドル上回るとし、返却を求めたのに対し、Westinghouseは2,150百万ドル不足であるとし、支払いを求めた。
CB&I は2016年7月21日に、第三者会計士へ判断を委ねることの差し止めを求める訴訟をデラウエア州公衡平法裁判所に行った。

2,150百万ドル不足というのはである。この時点以前にWestinghouseが損失の存在を知ったと思われる。

デラウエア州最高裁は2017年6月27日、CB&Iの主張を認めた。

2017/6/29 Westinghouse、Stone & Websterの売却価額清算をめぐる CB&Iとの裁判で敗訴 

特定注意市場銘柄指定解除

東証は2015年9月15日、有価証券報告書に虚偽記載を行い、内部管理体制などについて改善の必要性が高いと判断し、東芝を特設注意市場銘柄に指定した。
同時に、上場契約違約金 9,120万円の支払いを命じた。

東芝は、工事進行基準に係る会計処理について調査を要する事項が判明したため、2015年3月期の有価証券報告書の提出を延期した。

同社は、2回の延期を経て2015年9月7日に2015年3月期の有価証券報告書を提出するとともに、2010年3月期から2015年3月期第3四半期までの期間における有価証券報告書及び四半期報告書の訂正報告書を提出した。

2009年3月期から2015年3月期第3四半期にかけて損失の先送り等の不正会計が行われ、継続事業税引前利益が累計で2,248億円、当期純利益が累計で1,552億円過大に計上されていたこと等が判明した。

経営陣から事業部門に対して、通常の事業活動を進めていく中では達成困難と考えられる損益改善要求が行われており、事業部門ではそれに応える形で不正会計が実施されていたことが認められた。
また、同社において業務執行の監督又は監査の役割を担うべき取締役会や監査委員会は、不正会計を是正させる行動をとることがなく、業務実態の把握及び事業部門との情報連携が不十分であったことが認められた。
加えて、財務部や経営監査部等のモニタリング機能を発揮すべき部門がその機能を十分に発揮していなかったこと、及び全社的に適正な会計処理を行うことに対する意識が希薄であったこと等が認めらた。
なお、水増し利益をもとに3000億円超の社債を発行したため、金融庁から、金商法に基づき2%超73億7350万円の課徴金納付命令を受けた。

2016年12月、指定から1年を経過した後に同社から提出された内部管理体制確認書の内容等を確認したところ、全社的に改善に向けた取り組みが行われていることが認められたが、なお、問題が見られ、確認する必要があると判断し、特設注意市場銘柄指定を継続することにした。

当該指定から1年6か月を経過した日(2017年3月15日)以後に、同社から再提出される内部管理体制確認書の内容等を確認し、内部管理体制等について改善がなされなかったと認められた場合は、同社株式は上場廃止となる。


日本取引所グループの清田CEOは6月16日の定例記者会見で東芝の特設注意市場銘柄の指定解除の審査について「有価証券報告書が出ないうちに一方的に結論を出すのは難しい」との見方を明らかにした。

監査法人から「適正」意見が出れば、③は解決するが、①の問題は残る。
逆に「適正」意見が出なければ、上場廃止となる。

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上場廃止が回避できたとして、1部復帰の道は険しい。

東証は1部指定の条件に「最近5年間の有報に『虚偽記載』なし」 がある。東芝は2013年3月期の有価証券報告書で虚偽記載があったため、時間がかかる。

シャープは2016年3月末時点で債務超過に転落、同年8月に東証2部に指定替えになった。その後、台湾の鴻海精密工業が買収し、債務超過は解消、経営再建を進めている。2017年6月30日、東証1部への復帰を東証に申請した。早ければ2017年中の1部復帰を目ざす が例外である。

他に債務超過を理由に東証1部から2部に降格された例は過去10数年間で11社で、1部に復帰したのは信販大手のオリエントコーポレーションのみ。今も2部に残るのはチューナー製造のピクセラ と富士通傘下の電池メーカーFDK の2社で、残り8社は全てが上場廃止となっている。

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