東大発ベンチャー、塩野義、積水化学と次世代医薬品の受託製造会社設立

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東京大学発ベンチャーのペプチドリームは8月7日、塩野義製薬、積水化学と共同出資会社を設立すると発表した。

共同出資会社の社名はペプチスター(PeptiStar Inc.)で、「ペプチド医薬品」と呼ばれる次世代医薬品の原薬の合成・製法の研究開発、製造及び販売を実施する。

現在、特殊ペプチド医薬品の研究開発が国内外の製薬企業において進められているが、高品質な特殊ペプチド原薬を低コストで安定供給できるCMO(医薬品製造受託機関)は世界的に見ても存在していない。 また、これまで広く使われてきたペプチド合成法の生産性は極めて低くその改善が求められている。


ペプチドリーム、塩野義製薬、積水化学の3社は6月1日に、3社を中心に特殊ペプチド原薬の研究開発、製造及び販売を行う新会社を設立することについて、検討を開始したと発表した。

ペプチドリームが保有する特殊ペプチド医薬品の周辺知財及び周辺技術をもとに、オールジャパン体制の構築とさまざまな最先端技術の集約による高品質特殊ペプチド原薬の低コスト且つ安定供給体制の確立について検討を行っており 、3社のほか、大塚化学、キシダ化学、島津製作所、長瀬産業、中村超硬、日産化学工業、浜理薬品工業、マイクロ波化学、渡辺化学工業等が検討に加わっている。

今回、9月1日付で 3社均等出資の資本金1.5億円で設立し、本社と製造工場を摂津市の塩野義製薬の工場内に設置する。
その後、他社も含めて順次増資し、各社20%未満での出資比率に調整する。

早ければ2019年7~9月ごろの工場稼働を予定する。

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一般的な医薬品は、その多くが分子量500以下の低分子医薬品と呼ばれている。

この対極にあるのが、抗体医薬品などの生物学的製剤で、分子量150,000程度にも及ぶ。これらは、低分子医薬品では制御できない分子標的に作用し薬理機能を発揮できるメリットがある一方で、遺伝子組み換えが必要で、生産管理に手間がかかり、製造コストも高い。

ペプチドは、分子量では低分子医薬品と生物学的製剤の中間で、「中分子医薬品」と呼ばれる。低分子医薬品では標的とすることができないような分子についても薬理作用を発揮することができることに加え、生物学的製剤と異なり、完全に化学合成で製造可能であるという特長 を有している。


 図は http://www.jitsubo.com/jp/business/peptide.html


ペプチド
は、決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群である。

特殊ペプチドは、一般的なペプチドが6~50 アミノ酸残基からなるのに対して、天然の 20種類のアミノ酸のみならず、各種特殊(非天然型)アミノ酸(L-アミノ酸誘導体、D-アミノ酸、N-メチル化アミノ酸、β-アミノ酸等)を組み込んだ6~20 アミノ酸残基からなるペプチドのこと。

特殊ペプチド治療薬は、様々な治療用途に適用可能で、特に、低分子化合物では見出すのが困難だったタンパク質-タンパク質相互作用を阻害する治療薬や、特定の生体内情報伝達経路を活性化するアゴニスト(活性化治療薬)を見出すことが可能で ある。


特殊ペプチド治療薬は細胞外ターゲットに対して有効なアプローチであり、極めて高い薬理活性及び選択性を達成するだけでなく、比較的高い安全性及び忍容性を付与でき、多くの異なる投与経路を選択することが可能。

さらに特殊ペプチド治療薬は、現在使用されている抗体医薬品を中心とする生物学的治療薬に対して、薬品の品質管理や製造コストの面で極めて高い優位性を持ってい る。

しかし現在、特殊ペプチド医薬の市場を形成するのに不可欠な特殊ペプチド原薬の製造供給体制は世界的にも存在していない。

国内に存在する各種最先端技術を戦略的に集約することで特殊ペプチドの原薬製造体制を確立し、世界初・世界最先端の特殊ペプチド原薬 CMO を設立する。

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ペプチドリームは、東京大学の菅裕明教授が開発した特殊ペプチドを事業化すべく、2006年7月に設立された。

独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS (Peptide Discovery Platform System) により、多様性が極めて高い特殊環状ペプチドを多数(数兆種類)合成し高速で評価を可能にすることで、創薬において重要なヒット化合物の創製やリード化合物の選択等が簡便に行えるようになる。

ペプチドリームは米Bristol-Myers Squibb や英GlaxoSmithKline、スイスのNovartis、田辺三菱製薬や第一三共 ななど製薬世界大手とも創薬研究の契約を締結している。


塩野義製薬は、2016 年2月にペプチドリームと特殊環状ペプチドの創製を目的とした共同研究開発契約を締結した。

同社は2017年6月 に、ペプチドリームのPDPS (Peptide Discovery Platform System) の使用について、日本企業としては初めて、非独占的ライセンス契約を締結した 。ペプチド化合物を起点とし、同社の従来からの強みである低分子創薬力との融合を図ることで、創薬の生産性を画期的に向上させる。

塩野義は、食道癌や膀胱癌の癌ワクチンの開発を行っている。塩野義のワクチンはがん細胞に発生する「ペプチド」を人工的に合成したもので、 患者に投与されたペプチドを樹状細胞が捕捉し、T細胞に抗原を提示する。T細胞は体内を循環し、同様のペプチドを持つがん細胞を見つけて攻撃する仕組み。

2009年にオンコセラピー・サイエンスとがんペプチドワクチンに関するライセンス契約 を結んでいる。

2017年6月に、従来のがん治療薬より効果が高いとされる「がんワクチン」に使う原薬の量産技術を開発した。ペプチドの分子構造を変え、量産しやすいようにした。


積水化学は、 ライフサイエンス分野を戦略分野に位置付けるとともに、グループ外との技術等の融合を図ることで関連事業の強化を目指している。

具体的には、子会社の積水メディカルにおいて検査薬・検査機器を中心とした検査事業、医薬品開発の研究開発支援等の創薬支援事業、医薬品原薬の受託製造等の医薬事業を展開しており、今般のペプチド医薬の受託製造分野への参入は、ライフサイエ ンス分野の強化領域(融合強化)拡大に寄与するものと期待している。

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