李被告の贈賄が有罪と認定されたことで、朴被告の収賄も有罪と判断される可能性が高くなった。
副会長は控訴する。
公判では、李被告が闘病中の父李健熙・サムスン電子会長から経営権を継承するため、朴被告に便宜供与を求めて賄賂を渡したかが問われた。
サムスングループでは、トップの不在がさらに長引くことになり、パニック状態に陥った。今後、サムスングループの経営がどうなるか、注目される。
経営・経済専門家らはサムスンが負う最も大きな打撃として「ストップした買収合併戦略」を挙げた。昨年まで活発に進められたサムスンの買収合併が今年に入り完全にストップしたのは大型投資を主導できるだけのリーダーシップがないためという。
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朴槿恵大統領が絡む疑惑と親友の崔順実被告の国政介入事件を調べている韓国の特別検察官の捜査チームは1月16日、贈賄などの容疑でサムスングループの事実上のトップ、李在鎔サムスン電子副会長の逮捕状を請求した。逮捕には裁判所の許可が必要である。
ソウル中央地裁は1月19日、特別検察官チームによる李在鎔副会長に対する贈賄や横領、偽証容疑の逮捕状の請求を棄却した。
判事は「現段階で逮捕の事由や必要性を認定するのは難しい」と発表。理由として「賄賂犯罪の要件となる対価関係、不正な請託などに対する現在までの証明の程度や、各種支援経緯に関する具体的事実関係とその法律的評価をめぐり争いの余地がある」と指摘した。
その後、韓国の特別検察官は2月14日、李在鎔サムスン電子副会長について贈賄などの疑いで再び逮捕状を請求した。13日に出頭を求め、改めて事情聴取。再請求に踏み切った。
ソウル中央地方裁判所は2月17日、副会長の逮捕を認めた。「新たに構成された犯罪事実と追加の証拠資料などを考え、拘束の必要性を認める」と説明した。
地裁側も、朴氏の疑惑に対する国民の関心が高く、野党が一致して李副会長の逮捕を求めていたことを考慮したとみられる。
李在鎔副会長の主要容疑は次の5つ。
△賄賂供与
△賄賂供与の目的で会社の公金を横領
△賄賂供与の目的でドイツに送金した、財産の海外逃避
△賄賂を隠蔽するために犯した犯罪収益隠匿
△国会での証言・鑑定に関する法律違反
サムスンは2015年8月に崔順実被告のドイツ法人であるCore Sportsと220億ウォン台のコンサルティング契約を結び、このうち38億ウォンを送金した。
2015年10月と2016年1月には崔被告のめいのチャン・シホ氏が設立した韓国冬季スポーツ英才センターにも16億2800万ウォンを後援した。
崔被告が設立に深くかかわった文化支援財団「ミル財団」とスポーツ支援財団「Kスポーツ財団」に204億ウォンを拠出した。支援を約束したものまで含めると総額430億ウォン(約41億3600万円)に上る。
特検チームはこうした支援が2015年7月に朴大統領が保健福祉部傘下の国民年金公団を通じサムスン物産と第一毛織の合併を助けたことに対する答礼だとみており、これらの資金協力が李副会長の指示もしくは了解のもと実行されたとし、副会長に崔被告側への贈賄罪が成立すると判断した。
8月7日に開かれた結審公判で、特別検事は、同事件が「典型的な政経癒着による腐敗犯罪で国民主権の原則と経済民主化という憲法的価値を大きく毀損した」と主張し、「法廷で正義が生きていることを見せてくれることを期待する」という言葉と共に、予想を上回る懲役12年の重刑を求刑した。
2015年9月1日、第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T)が合併し、新しいサムスン物産(Samsung C&T) とな り、Samsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となった。これにより、財閥の中心の三星電子に対する李一族の支配権が強化される。
この合併について、朴政権が第一毛織とサムスン物産2社の大株主だった国民年金公団に対し、所管官庁の保健福祉省を通じて合併に賛成するよう圧力をかけた疑いがあるとされた。2017/1/20 ソウル地裁、サムスン電子副会長の逮捕を認めず
これに対し、李在鎔副会長はこのような請託と代価性を全面的に否定した。
サムスングループはコメントを発表し、「副会長が対価を望んで支援したことは決してない。 崔順実被告に対する支援とミル財団・Kスポーツ財団への支援金は、朴大統領の強要により仕方なく出したものだ。とりわけ、合併や経営権の継承と関連して不正な請託があったとする特別検察官の主張は受け入れがたい」とした。
今回、地裁は次の通り判断した。
李健熙・サムスン電子会長から息子の李被告への経営権継承を準備していたサムスンの役員らが、韓国の経済政策について最終的な権限を持つ大統領の支援を期待し、大統領に巨額のわいろを提供し、サムスン電子の資金を横領、財産を国外へ逃避させて犯罪収益を隠匿した。事件の本質は政治権力と資本権力の密接な癒着であり、大統領と大企業グループの政経癒着が今なお存在したという点で、国民は喪失感をぬぐい難い。
李副会長は大統領への請託の対象たる承継作業の主体、かつ最も多くの利益を得る地位にある。当時、サムスンの事実上の総帥として他の役員に乗馬および英才センター支援を指示して犯行を促進する役割を果たし、その加担の程度や犯行全般に及ぼした影響は大きい。
李副会長は、大統領の積極的要求に対して受動的に応じ、贈賄を決定したものとみられる。大統領から直接乗馬および英才センター支援の要求を受け、容易に拒絶したり無視したりすることは難しく、個別懸案の請託で不当な結果を得たとは確認されていない。
(李被告が積極的に便宜を依頼したものではなく、朴被告の要望を機に、大統領の影響力に期待して資金拠出した「受動的協力」とみなしたもので、求刑の12年が5年に減った理由である。)具体的には、崔被告の娘のチョン・ユラの乗馬競技の支援について、経営権継承において大統領の助力を期待して提供したと見なし、72億ウォンを賄賂と認定した。
崔被告が実質的に支配した「韓国冬季スポーツ英才センター」へサムスンが16億2800万ウォンを支援したことについても、「正常な団体でないことを知りながら支援していたとみなせる」とし、賄賂と認定した。一方、崔被告が事実上支配していたとされる文化・スポーツ関連の2財団にサムスンが拠出した204億ウォンについては、賄賂と認定しなかった。
合計88億2800万ウォンの贈賄で、会社資金80億ウォンの流用(横領)と38億ウォンのドイツへの送金を資本取り引きの申告をしなかったこと(財産国外逃避)も有罪と認定された。
地裁はまた、崔被告の国政介入事件を巡る2016年12月の国会聴聞会で李被告が崔被告と娘を知らないと答弁したことなどについて、偽証と判断した。
崔被告らへの支援で実務を担ったとして共に在宅起訴されたサムスングループ前未来戦略室室長の崔志成被告、前未来戦略室次長の張忠基被告にはそれぞれ懲役4年、サムスン電子前社長の朴商鎮被告には懲役3年・執行猶予5年、サムスン電子前専務の黄晟洙被告には懲役2年6カ月・執行猶予4年の判決が言い渡された。
李被告の弁護人は判決後、記者団に対し、「法理判断、事実認定のいずれも法律家として到底受け入れられない」として、「即時控訴する」と述べた。
裁判では、特検は最後まで李在鎔副会長の贈賄容疑に対する決定的な証拠を提示できなかった。 朴前大統領がサムスンの案件と関連した指示を下したという証拠も何一つ出なかった。
法廷に呼び出された計59人の証人のうち、誰一人からも決定的な証言を得ることができなかった。
このため、朝鮮日報は、「特検の結審公判の論告文が法的な説明よりも、国民感情に訴えたという指摘がある」と述べ、請託の事実を立証できる直接的証拠がない状況で、「特検が法廷の外で世論戦を繰り広げることは望ましくない」という法曹界関係者の声を紹介した。担当記者のコラムを通じても「論理がずさんな特検が『人民裁判』を期待している」と、警戒の声を高めた。
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7月2日の裁判では、就任したばかりの金尚祖・公正取引委員長が証人として出廷した。「年休を取得して個人の資格で来た。」
検察側の質問に対し、第一毛織とサムスン物産の合併は、「オーナー家の経営権継承のため」のもので、「時の大統領がOKしたから成功した」と述べた。
金尚祖・公正取引委員長は6月の就任までは漢城大学教授で、経済分析を通じて大企業の不当な利益確保を追求し、「財閥狙撃手」の異名を持つ。2017/6/22 韓国、公取委委員長に「財閥狙撃手」が就任
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