米Gilead Sciences、がん治療のバイオテク企業 Kite Pharma を119億ドルで買収

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米国のバイオテクノロジー企業 Gilead Sciences は8月28日、がん治療のバイオテク企業 Kite Pharma を119億ドルで買収することで同社と合意した。本年第4四半期に取引完了を目指す。

Gilead はKite株1株につき180ドルを全て現金で支払う。これはKiteの8月25日終値を29%上回る水準。

Gilead Sciences は今回の買収で、勢いを失いつつあるC型肝炎治療薬から他の分野へと多様化を進める。

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Kite Pharmaは、カリフォルニア州サンタモニカに本社を置き、体が持つ免疫システムを用いて抗腫瘍効果を得る癌免疫療法のリーダーである。

下図のように、患者自身の免疫細胞を使って癌を攻撃する療法である。

癌のタイプにより、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor :CAR)とT細胞受容体(engineered T cell receptor )療法がある。

同社の最新のCAR-T療法と呼ばれる治療法では、患者からT細胞を採取し、 遺伝子操作により、B 細胞リンパ腫および白血病細胞表層に発現しているCD19 抗原を標的とするキメラ抗原(CAR)受容体を発現させ、癌細胞を死滅させる治療法である。主作用が暴走すると重篤なサイトカイン放出症候群を引き起こすため、これを抑える「安全装置」の開発が成功のカギとされている。

Kiteは本年3月31日にFDAに対し、この療法の候補 KTE-C19 (axicabtagene ciloleucel :axi-cel) についてBiologics License Applicationを提出した。化学療法が無効な びまん性大細胞型B 細胞性リンパ腫(DLBCL)、形質転換濾胞性リンパ腫(TFL)、原発性縦隔大細胞型B 細胞性リンパ腫のサブタイプからなる非ホジキンリンパ腫の治療用として最初の販売が期待される。

Kite Pharma とAmgen は2015年1月、CAR-T療法の開発に向けて、戦略的共同研究契約とライセンス契約を締結した。

Amgen はがんに対する広範なデータを、KiteはCARのプラットフォーム、研究開発と製造能力、専門技術を生かし、臨床開発と実用化に向けて取り組む 。

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Kite Pharmaは2017年1月9日、開発中のKTE-C19の日本における開発並びに商業化に関して、第一三共と戦略的提携契約を締結したと発表した。

第一三共は日本におけるKTE-C19 の開発ならびに商業化を行う。Kite は契約の一環として第一三共に技術供与を行い、更に第一三共はKITE-718 を含め、Kite が今後3年以内に米国にINDを提出するその他の開発候補品のライセンス権利を有 する。


Gilead Sciences は、KTE-C19 は米国では
Priority(最優先) Review、EUではExpedited (優先)Review の状況にあるとし、Gilead の技術とKiteの幅広いパイプラインを使い、直ちに細胞療法のリーダーになるとしている。

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Novartisは8月30日、再発・難治性(r/r)B 細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者を対象とするCAR-T療法の CTL019(商品名 Kymriah)が米FDAの承認を得たと発表した。

本年3月29日に、優先審査品目に指定されていた。

同社は薬価を治療1回当たり 475千ドル(約5200万円)と決めた。

同社は"indication-based pricing" システムを取る予定で、癌の種類によって価格を変えるというもの。今回の認可の対象にはKymriah は非常に効果的で、高い価格となったが、テスト中の他の癌には同様の効果が見られず、承認を得た場合、価格を下げるとみられる。

付記

Medicare とMedicaid はこの処方に対し、Novartisに475千ドルを支払うこととなったが、1カ月末までに患者に効果があった時のみ、これを支払う。



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