東芝メモリの売却、進まず

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東芝は8月24日、社内外の取締役が出席する経営会議を開き、東芝メモリ売却について、協業先のWestern Digital との交渉加速を確認した。

東芝は8月30日の定時取締役会で東芝メモリの売却を決める予定であったが、Western Digital との協議がまとまらず、またBain Capital が新提案を行ったこと、台湾の鴻海精密工業も新たな提案をする意向を示したことから、決定を見送った。

この結果、①Western Digitalの企業連合(Western Digital と産業革新機構、政投銀、KKR)に加え、②革新機構、 政投銀、Bain Capital、SK Hynix+新規にAppleからなるコンソーシアム、③台湾鴻海精密工業を含む企業連合 の3陣営との交渉を継続し、可及的速やかに株式譲渡契約の締結を目指すとした。

各国の独禁当局の審査は半年はかかることから、銀行団は8月中の合意を要求したが、決められなかった。時間切れにより上場廃止となる可能性が強まった。

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3陣営の提案概要と問題点は下記の通り。

Western Digitalの企業連合 (億円)

この場合、Western Digitalは法的措置を取り下げる。

出資 転換社債 融資 合計
Western Digital 1,550
KKR 3,000
産業革新機構 3,000
政策投資銀行 3,000
(一部優先株)
東芝 2,000
郵貯銀行ほか 450
銀行団 7,000
合計 11,450 1,550 7,000 20,000


Western Digital は、当初は議決権を持た ないこと、将来にわたって議決権は3分の1未満とすることも容認したとされる。

3年後をメドに株式公開する点で一致している。

しかし、東芝はWestern Digitalの議決権の割合を10年間にわたって15%にとどめるよう要求、Western Digitalを上回る2千億円を自ら出資し、雇用維持などで発言権を残す。
これに対し、Western Digitalは第三者による取得を防ぐため、議決権比率を33.3%まで引き上げることを主張した。

また、東芝はKKRが将来、株式をWestern Digitalに直接譲らず、市場で売却するよう求めているが、自由に売りたいKKRは難色を示している。

Western Digital の業界シェアが上がることで、各国の独禁法審査が長引く可能性がある。


革新機構、政投銀、Bain Capital、SK Hynix+新規にAppleが参加

東芝は6月に「日米韓連合」を優先交渉先に選定した。

当初の構想は下記のとおりであったとされる。(億円

普通株 優先株 融資 合計
産業革新機構 50.1% 3,000 3,000
日本政策投資銀行 16.5% 1,000 2,125 3,125
Bain Capital 33.4% 2,000 6,375 8,375
SK Hynix
銀行団 5,500 5,500
6,000 8,500 5,500 20,000


問題は次の2点

SK Hynixの経営参加要求 
  SKは最大33%の株式取得を要求したとされる。東芝は独禁法対策で経営に参加しないことを求めている。

・ 革新機構、政策投資銀行は、東芝とWestern Digitalの紛争解決を条件としている。


今回、次の修正案を提出した。(億円)

Western Digital との係争解決を前提条件にしていない。これを問題とする革新機構と政策投資銀は当面外し、問題解決後に加える。

Appleは、東芝メモリと合わせるとWestern Digitalの市場シェアが36%に迫り、市場シェア35.6%のサムスン電子と2強体制を形成する のを恐れる。
また、安定したNAND型フラッシュメモリーの供給源を確保するためにも出資を決めた。

普通株・優先株 融資 合計
産業革新機構 *2
日本政策投資銀行 *2
Bain Capital 47% 5,700
SK Hynix *1
東芝 47% 2,000
Apple 4,000
Kingston Technology 1,000
日本企業 6% 300
銀行団 7,000
100% 13,000 7,000 20,000


*1 SK Hynixは将来
、優先株を普通株に転換。議決権は最大18%。

*2 革新機構、政策投資銀行は、東芝とWestern Digitalの紛争解決後にBain、SKから株式を取得。

SK Hynix の将来の議決権所有が特に中国の独禁法で審査が長期化する可能性がある。
(中国政府は半導体メモリーに強い関心を持ち、自国に有利にとの思惑のもとで独禁法審査を行う可能性が指摘されている。)


③台湾鴻海精密工業を含む企業連合

シャープを表に出してMETIの中国への技術流出懸念を排除、ソフトバンクグルプなどと連携し、2兆円を上回る資金を用意する動きを見せた。

中国の独禁法審査を通りやすいが、安全保障に関わる技術の中国への流出を懸念する日本政府が、外為法に抵触すると判断する可能性がある。

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