トランプの入国制限令、また敗北 

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サンフランシスコの Ninth U.S. Circuit Court of Appealsは9月7日、入国制限令についての7月13日のハワイ州連邦地裁の判決に不満の政府による控訴による裁判で、ハワイ地裁の判断を支持した。

ハワイ地裁は、トランプ政権が「近い親族」に祖父母やおじ・おば、甥、姪、いとこ、義理の兄弟姉妹を含めなかったことは、条件付きで施行を認めた最高裁の決定に反するとして、全米で親族の定義を広げて運用するよう命じた。これについては、最高裁は7月19日に、祖父母や孫を「近い親族」に含める判断をした。

また、難民については、難民の再定住を支援する団体から支援を保証されていれば入国を認めるべきとの判断を示した。
最高裁は6月26日の判断で、これについては触れていない。

本件の経緯は次の通り。

  1月27日大統領令 3月6日 新たな大統領令 6月26日 最高裁
10月以降に合憲性の最終判断
それまで条件付きで執行を認める。
入国禁止 対象国 イラン、シリア、リビア、イエメン、スーダン、ソマリア、イラク イラクを除外
禁止日時 発表時から90日 3月16日から90日
対象 全員 下記は除外
・ビザ、グリーンカード保有
・外交官
・対象国以外の二重国籍保有
米国人や米国内の団体と「真正の関係」を有すると正当に主張できる外国人は禁止措置の対象外
難民受入 停止期間 シリアからの移民は無期限停止
他の国からは120日間停止
一律120日停止
停止対象外 その国の少数派異教徒(minoriry religions) (規定除外)
(規定なし) 受け入れが決まっている難民
受入数 5万人(従来は11万人) 5万人


2017/3/14 Trump大統領の新たな入国禁止命令 

2017/6/28 Trump 大統領の米入国制限令、最高裁が一部容認


最高裁の判断で、「真正の関係」の範囲が問題となった。

政府決定は次の通り。

対象: 親(義理の親を含む)、配偶者、婚約者、子供、成人した息子や娘、義理の息子と娘、兄弟姉妹、血縁がない兄弟姉妹、異父母の兄弟姉妹

対象外:祖父母、孫、おじ、おば、めい、おい、いとこ、義理の兄弟姉妹

7月13日のハワイ地裁は、祖父母やおじ・おばなどを含めないのは最高裁の決定に反するとしたが、これを受け、最高裁は7月19日に祖父母や孫を「近い親族」に含める判断を下した。

また、最高裁は難民については触れていない。

ーーー

今回、サンフランシスコの Ninth U.S. Circuit Court of Appealsの3人の判事は次の通り判断した。

1)「真正の関係」の範囲

祖父母、孫、その他の近親者は範囲に入る。

「最高裁は1977年に、近親者として、祖父母、おじ・おば、いとこを挙げており、最近の判例で最高裁は義理の母を明らかに身近な家族としている。」

2) 難民

難民の再定住を支援する団体から支援を保証されていれば入国を認める。

大統領令の合法性については、最高裁の判断を待つが、難民の入国を一律120日停止する大統領令を否定した。

米政権は、再定住支援団体による文書での保証は「真正の関係」ではないと主張したが、控訴裁は、こういった団体が難民受け入れを準備し、資源を費やしていることは「真正の関係」が存在するという裁判所の判断の根拠となっていると説明した。


付記

米司法省はこの判断の差し止めを求めて最高裁に申し立てを行った。

最高裁大法廷は9月12日、難民入国制限を巡る件で、控訴裁判断の差し止めを求めた司法省の主張を認めた。

イスラム圏6カ国出身の米国在住者の祖父母・おじ・おば、いとこなどには入国を認めるべきとした判断については差し止めを求めなかった。


最高裁は大統領令の有効性について10月10日に審議を開始する。年末までに判断が下されるとみられている。

米上院本会議は4月7日、フィリバスターを回避するため、51議席の賛成があれば承認できるとする「核オプション」(nuclear option)と呼ばれる禁じ手を使って、保守派のNeil Gorsuch 連邦控訴裁判事を最高裁判事に指名する人事を 54 対 45 の賛成多数で承認した。


この結果、2016年の保守派の
Scalia 判事死去により、保守派4人(中道1人含む)、リベラル派4人と勢力が拮抗していたのが、保守派 5 対 リベラル派 4 に戻った。

2017/4/8 米上院、異例の手続きで最高裁判事を承認 

 

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