北朝鮮制裁決議案 採択

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国連安全保障理事会は9月11日、北朝鮮の6回目の核実験を受け、 新たな制裁決議案を全会一致で採択した。北朝鮮に対する制裁決議は9回目で、拒否権を持つ常任理事国の中国とロシアも賛成した。

北朝鮮経済の命脈を左右する石油を初めて制限した。北朝鮮の主要産品である繊維製品の輸出も禁じた。米国や日本が当初目指した石油の全面禁輸は見送られた。

北朝鮮への原油供給の年間上限は過去12カ月の総量の400万バレルの現状維持とした。 現状で450万バレルを輸入する石油精製品は上限を200万(2017年10~12月は50万バレル)とした。NGLやコンデンセートは輸出禁止 とした。原油と石油精製品を合わせ、850万バレルの輸入のうち250万バレル(3割)を削減する。

今回、全面禁輸となった繊維製品の輸出額は昨年で760百万ドルで、輸出総額の3割弱 に相当する。既に禁輸対象である石炭や鉄なども合わせると、北朝鮮の輸出総額の9割が禁輸対象となった。

北朝鮮の貴重な外貨収入源である海外出稼ぎ労働者の制限は、 当初案の既存の労働者の送還は外し、雇用契約満了後の更新が禁止された。 現在、海外で働く北朝鮮人労働者は9万3千人と推定される。

公海上で決議違反の物資を運んでいる疑いがある船舶への臨検も加盟国に要請した。

当初案では資産凍結・渡航禁止の対象に金正恩委員長を含めていたが、中国に配慮して外した。追加の資金凍結対象の団体からは高麗航空や朝鮮人民軍などを除外し、当初の7団体から朝鮮労働党中央軍事委員会など3団体に減らした。


昨年末からの3回の決議の概要は下記の通り。

2016/11/30 2017/8/5 2017/9/11 当初案
北朝鮮
への
輸出
石油
製品
原油 年間上限 400万バレル
(過去12か月分)
全面禁止
石油精製品  年間上限 200万バレル
(現状450万バレル)
NGL、
コンデンセート
禁止
その他 ヘリコプター、船舶  →  →
北朝鮮
からの
輸入
石炭  各国で
年4億ドルor 750万トン
(少ない方)
全面禁止  →
金属 銅、ニッケル、
銀、亜鉛
 →  →
鉄、鉄鉱石
鉛、鉛鉱石
 →
繊維製品 禁止
(20161年 760百万ドル)
同左
その他 彫刻像  →  →
海産物  →
出稼ぎ就労許可 新規受け入れ原則禁止 現契約の更新禁止 全面禁止
(送還)
貨物船の公海上
臨検
禁輸品積載の疑いある船舶
(旗国の同意の下)
強制臨検
合弁会社 新設や既存JVの拡大 全面禁止

中国は、2016年11月と2017年8月の決議に沿って、国内で対応措置を取っている。

2017/2/28  中国、北朝鮮からの石炭輸入を全面停止  (2017/2/19から)

2017/8/17 中国、北朝鮮の石炭や鉄などを全面禁輸

中国外務部の副報道局長は9月12日、「北朝鮮は国際社会の反対を顧みず再び核実験を行った。中国は国連安保理が必要な措置をとることに賛同する。決議が全面的かつ完全に執行されることを望む」と表明した。
一方で、「軍事的解決に活路はない。中国側は朝鮮半島で戦乱が生じることは決して許さない」と米国を牽制した。

付記

中国の「4大銀行」(中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行大手国有銀行)が、北朝鮮人名義の新規口座開設や送金、入金などの取引を停止したことが9月12日までに分かった。

 

ーーー


付記

トランプ米大統領は9月21日、北朝鮮に追加制裁を科す大統領令に署名した。

Presidential Executive Order on Imposing Additional Sanctions with Respect to North Korea

大統領令は北朝鮮の建設、エネルギー、金融、漁業、IT などに関わる企業を制裁対象に含めた。財務省が指定すれば、米国内の資産凍結などを科せるようにした。

米国は従来、北朝鮮の大量破壊兵器の開発につながる疑いがある企業や個人を制裁対象としてきた。今回の大統領令では幅広い産業分野で北朝鮮と取引のある企業に制裁の網をかける。中国やロシアなどの企業が念頭にあるとみられる。

北朝鮮に立ち寄ったことがある船舶や航空機の米国への入国も禁じる。

大統領は、「北朝鮮が殺傷力の最も高い兵器を開発するための資金源を断つ」と狙いを語った。

北朝鮮と取引関係のある外国金融機関は米国の金融システムから排除する。財務長官は記者会見で、外国金融機関は「米国とビジネスをするか、北朝鮮と取引するか選ぶことになる」と語った。


付記

中国商務部は9月22日、公告52号を出した。

1) 北朝鮮の繊維製品の輸入禁止

2) コンデンセート及びLNGの北朝鮮への輸出禁止

3) 北朝鮮への石油精製製品の輸出について
  国連加盟国の輸出限度 2017/10/1~2017/12/31 50万バレル(6万トン)、2018/1/1以降 200万バレル(24万トン)

  上限が近づけば、政府は公告を出し、それ以降の輸出は禁止。


付記

中国商務部は9月28日の公告55号で、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議(2375号)に基づき、北朝鮮の企業や団体が中国国内に設立した合弁企業について決議採択日を起点に120日以内に閉鎖するよう命じ た。



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