韓国ロッテマート、中国から撤退へ

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ロッテマートは9月14日、中国内の店舗処分のため、売却を主幹する会社にGoldman Sachs を選定したことを明らかにした。
中国内の全112 店舗を売却することが目標で、交渉条件によっては一部だけ売却する可能性もある。

Goldman Sachs、海外の流通企業、投資家など10社ほどと交渉を行っており、この中にはタイ流通最大手のCPグループも含まれていると報じられている。
売却交渉中とされた中国最大流通企業の華聯グループとは接触しなかったとロッテ側は明らかにした。ロッテ関係者は「国有企業である華聯が中国政府の意向と反対にロッテマートを買収するのは不可能だろう」と話した。

付記

ロッテマートは10月13日、中国のTHAAD報復によるロッテ被害現況を発表した。

ロッテマートの今年1年間の売上高減少額は1兆2000億ウォン(約1200億円)にのぼると予想される。
現在、中国内のロッテマート99店舗のうち87.9%の87店舗を閉鎖している。うち、77店舗は中国当局の営業停止処分を受け、10店舗は臨時休業中。


中国ロッテマートの試練は2016年9月に始まった。

北朝鮮が核実験や弾頭ミサイル発射実験を相次いで実施したことを受け、米国と韓国は2016年に、北朝鮮のミサイルに対応するため、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配置を決めた。

韓国は7月に南東部の慶尚北道星州郡の空軍ホークミサイル基地に配備することで米国と合意したが、同地域の住民らは強く反対、当局は変更を余儀なくされた。

韓国国防省当局者は9月30日、新たな配備先にロッテグループが所有するロッテスカイヒル星州カントリークラブに決めた。高い標高(当初案の基地は標高383m、ゴルフ場は標高  680m)と軍用車のアクセスが良いことから、選ばれたという。

ロッテとのゴルフ場の土地の交換の合意の前日の2016年9月26日に、ソウル中央地裁は辛東彬(重光昭夫)韓国ロッテグループ会長の背任・横領の容疑での逮捕状請求を棄却した。
韓国内には、逮捕状請求却下とこれを結びつける意見もあった。

中国は韓国へのTHAADの配置に猛反対している。THAADの高性能なレーダーで、半径800km内の中国の遼東半島周辺と山東半島まで探知可能となる。

新華社通信は2017年2月19日、ロッテが敷地を提供した場合、「中国の顧客と市場を失うことになる」と警告した。

ロッテ商事は2月28日、国防省と土地交換契約を結んだ。ゴルフ場を提供する代わりに、等価の土地を同省から譲り受ける。

韓国はまず2基を配備した。

文在寅大統領はTHAAD配備の見直しを選挙公約に掲げていたが、北朝鮮がICBMの2度目の発射を強行したことを受けて、配備を急ぐ方針に転換、韓国は9月7日、4基を追加配備した。

2016年9月5日、杭州のG20首脳会議に合わせて、中国の習近平主席と韓国の朴槿恵大統領が会談したが、THAADについて、厳しいやりとりが交わされた。習主席は「この問題の処理を間違えば、地域の戦略的安定に助けにならず、紛争を激化させる可能性がある」と憂慮を表明した。

まず、中国で韓流イベントや団体観光のキャンセルが相次ぎ、商用数次ビザの発給制限が行われ、次に韓国製品のボイコットが始まった。

中国の関係各部門は11月29日以降、ロッテ系列の上海市や四川省成都市などのロッテグループ拠点150カ所に対し、消防や安全、衛生、税務調査に入った。上海の中国ロッテ本部は税務調査を受けているが、通常とは異なり市が直接調査に入ったという。

今年3月からは営業停止が始まった。現在の店舗全体の77%に相当する87店舗が閉鎖した状況で、残りの店舗も事実上、休店状態となっている。

売り上げは急減した。2017年4-6月期の中国ロッテマートの売上高は前年同期の10%にすぎない。

しかし、ロッテマートはその間、撤収しないという態度を見せ、ロッテは資金を投入してきた。辛東彬(重光昭夫)ロッテグループ会長は3月に「我々は中国で事業を続けることを強く望む」と話していた。

しかし、これ以上の損失は耐えられないと判断し、撤退を決めた。流通企業の関係者は「新政権になれば解決すると期待していた両国関係がさらに悪化する方向に進んだため決断したようだ」という見方を示した。

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被害はロッテマートだけでない。

現代自動車の中国合弁法人「北京現代」は現地工場5カ所のうち4カ所の稼働が1週間停止した。9月初めには滄州工場がまた部品納入の中断で停止した。合弁先の北京汽車が部品メーカーへの支払いを拒否したのが理由で、市場関係者は「北京汽車は国有企業。支払い拒否は当局の意向で、THAAD配備への報復だ」と語 った。

イーマートは中国から全面撤収した。

その他各社も売り上げが大幅に減少している。

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韓国大統領府は9月14日、「今は北の核・ミサイル挑発などで中国と協力を維持していくことが非常に重要な時期」とし、THAADに対する中国の経済報復措置をWTOに提訴することはせず、「戦略的な疎通と協力を強化して解決していきたい」と述べた。

中国は韓国がこの問題でWTOに提訴することを懸念していた。

中国外交部はTHAAD報復措置に対する国際社会の懸念について、「外国企業は中国で経営する場合、現地法と規定に従わなければならない」として韓国企業を対象にした各種制裁が法に則った措置だと主張した。

新聞では、「韓国がWTOに提訴するには明確な証拠がなければならないが、中国政府はTHAAD報復措置を公式に発表したことはない」との意見や、「民間で自発的にするボイコットは防止できないし、WTOがこれを制裁することもできない」との意見が掲載されている。

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