住友化学は9月25日、核酸医薬品の㈱ボナックが第三者割当増資で発行する株式を住友化学が引き受け、このたび出資を完了したと発表した。日本経済新聞は出資額を40億円と報じている。
住友化学は2013年11月22日、ボナックとの間でボナックが保有する核酸医薬原薬の製造・販売に関する知的財産権の独占的実施権の許諾契約を締結し、大阪工場で核酸医薬原薬の受託製造を開始しており、2016年7月4日にボナックの第三者割当増資に応じ、約1%を出資している。
2013/11/28 住友化学、核酸医薬原薬の受託製造開始
今回の出資で、ボナックに対する住友化学の出資比率は19.55%に拡大し、ボナックの親会社の林化成に次ぐ株主となる。
今回の資本提携の強化を契機に、ボナックが持つ核酸医薬のユニークなプラットフォームと、住友化学グループの医薬品開発、原薬製造、医療診断および安全性分析等の技術をより強固に融合させ、核酸医薬品の早期実用化に向けた開発を加速させる。
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ボナックはタルク、カオリン、炭酸カルシウム、マイカ等の輸入やあらゆる無機粉末を扱う鉱物粉末の専門メーカー の林化成が2010年2月に設立した。
社名のボナック(BONAC)は核酸化学の架け橋(Bridge Of Nucleic Acids Chemistry)を表す。
核酸医薬は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の働きを利用して、病気を引き起こす遺伝子やタンパク質に作用するタイプの医薬品で、低分子医薬(化学合成により作られる一般的な医薬品)、抗体医薬に続く、第三世代の医薬品として、近年注目されている。
核酸医薬品は遺伝子にじかに働きかけるため、従来型の医薬品と比べて治療効果が高く、副作用が少ないとされる。
ボナックは、日本および欧米の主要国で特許を取得した独自構造のボナック核酸を用いて、原料開発から創薬探索まで一貫して手掛けている。
ボナック核酸は、従来の核酸が二本鎖構造であるのに対して、一本鎖構造であるのが大きな特徴で、その構造により体内での高い安定性と安全性を有する。
- 二本鎖核酸であり、各鎖が49塩基以下で構成される
- アニーリング工程が必要(一本鎖DNAを再び二本鎖とする)
- 分解されやすく、安定化のための工夫が必要
- 免疫応答を惹起することがある
- 一本鎖核酸であり、鎖長は50塩基以上から構成される
- セルフアニーリングにより、ユニークな二次構造をとり、アニーリング工程が不要
- 核酸分子のみならず、独自のアミノ酸アミダイト(核酸原料)とのハイブリッド分子(PnkRNA)も案出
- 従来法に比べ、高い安定性を保有
カーブになっているリンカー部分の核酸がすぐ酵素に分解されてしまう問題があるが、核酸の代わりに「プロリン」というアミノ酸を使用。- 免疫応答を惹起しない
- 二本鎖では二回必要となる核酸合成のプロセスが、一回で済む。
核酸医薬品は、病気を起こす遺伝子まで到達させるため、体内での安定性やDrug Delivery System(DDS)などの課題を解決する必要がある。
従来の二本鎖短鎖RNAには、壊れやすいという短所があるため、体内の必要な場所へ薬を届ける方法が大きな課題となっていた。
ボナックは、これらの課題解決に有力な独自の核酸医薬のプラットフォームを確立している。
同社は、現在は 核酸医薬品開発について国内外の製薬メーカーと共同開発やライセンス交渉を進めている。
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