欧州委はこれまでも、巨大企業の「税逃れ」を厳しく指摘してきた。
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問題となった取引の仕組みは次の通りで、これは、ルクセンブルグとAmazonが2003年に締結し、2011年に延長した tax ruling に基づいている。
Amazon は欧州事業を全てルクセンブルグの子会社Amazon EU で実施している。
Amazon EU は従業員500人以上で、製品を選択し、メーカーから製品を購入、欧州全体でオンラインセールスを行い、製品を配送している。
この結果、Amazon の欧州全体の売上高、販売利益はすべてAmazon EU で計上される。
しかし、Amazonはルクセンブルグにもう一つ、Amazon Europe Holding Technologies という "limited partnership" を持つ。
従業員はゼロで、事務所もなく、事業活動はしていない。
米国のAmazon本社との間で"cost-sharing agreement"を締結し、欧州での知的財産権を所有している。
この知的財産権の独占実施権をAmazon EU に与え、ライセンス料を受け取る。
cost-sharing agreementに基づき、知的財産の開発を行っている米のAmazon本社に対価を支払う。
Amazon Europe Holding Technologies は limited partnership であるため、それ自体は非課税で、オーナーである米のAmazon本社に利益が帰属するが、ルクセンブルグでは非居住者のため非課税となる。
米のAmazon本社は、この利益を米国に還流した時点で米国税法で課税されるが、還流せず、海外に留保したままである。
問題は、Amazon EU からAmazon Europe Holding Technologies へのライセンス料が異状に高いことで、これにより、Amazon EU の利益が減り、ルクセンブルグでの課税も減る。
欧州委の調査では、ライセンス料は平均して Amazon EUの利益の90%以上となっている。これはcost-sharing agreementでAmazon本社に支払う額の1.5倍となる。
実際の事業活動を行い、知的財産を実行しているのはAmazon EUであるのに、その利益は異状に少ない。欧州委の計算では、Amazon EUの課税所得は本来あるべき金額の1/4に縮減されており、3/4は不当にAmazon Europe Holding Technologies に移され、非課税となっている。
Amazon Europe Holding Technologies の利益は大きいが、ルクセンブルグでは課税されない。利益を留保しているため、米国でも課税されていない。
今回、欧州委員会はAmazon が受けた税優遇はEU法が禁じる「国家補助」に当たるとの判断を示した。ルクセンブルクが2003年から提供した税優遇措置に関し、公正な競争を妨げると断じた。
これに対し、Amazonは「ルクセンブルクからいかなる特別な優遇も受けていない。同国の税法と国際租税法に完全に従って納税している」と反論し、徹底抗戦する構え。
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欧州では、Google、Apple、Facebook、Amazon などのデジタル多国籍企業による市場支配や課税回避が問題とされ、4社の頭文字をとった GAFA という言葉が盛んに使用されている。
EUは9月中旬の非公式財務相会合で、デジタル多国籍企業への課税強化の検討で一致した。12月のEU首脳会議までに加盟国の意見を集約し、来春に欧州委が法案提出をめざす。
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