厚生労働省は10月2日、アスベスト工場の元労働者や遺族ら2,314人に対し、国賠訴訟を起こすよう個別に通知する方針を正式に発表した。
2014年の最高裁判決後の和解で、条件に合う被害者が新たに同種訴訟を起こせば賠償に応じる方針であるが、対象者のうち多数が訴訟を起こしておらず、賠償金を受け取っていないままである。
裁判を起こせば、積極的に和解手続きを進めて賠償金を支払う。
周知用ポスターとリーフレットをリニューアルし、現住所等の確認が取れている人に対しては、10月上旬にリーフレットを発送する。
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大阪府の泉南地域のアスベスト紡織工場の元従業員とその遺族89人が、規制の遅れで肺がんになったなどとして国に賠償を求めた2件の集団訴訟(大阪アスベスト訴訟第1陣、第2陣)で、最高裁第1小法廷は2014年10月9日、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とする判決を言い渡した。
国は、1971年に粉じん排気装置の設置義務化を行ったが、原告は、「1958年には実用的な技術も普及しており、義務化が可能だった」とした。
裁判官5人全員一致の意見で、「健康被害の医学的知見が確立した1958年時点で規制すべきだった」とし、国の責任を認めた。
第1陣28名については賠償額の算定のため2審の大阪高等裁判所に審理が差し戻され、国は早期解決のため和解に応じる意向を示し、同年12月26日、原告27人(最高裁判決後 1人死亡)が国と和解した。
和解内容は(1)国が謝罪する(2)国は責任割合を2分の1とした最高裁判決に沿い、約2億7300万円を賠償する(3)被害者を掘り起こすために厚生労働省が周知する(4)泉南地域の工場跡に残る石綿の除去を進めるよう厚労省が関係省庁に伝える−−の4点。
国は今後、最高裁判決の条件に合う被害者が新たに同種訴訟を起こせば賠償に応じる方針で、新たな訴訟は2015年2月にも提起される見通し。
2014/10/10 アスベスト訴訟、最高裁 「国に責任」の判断
対象者は次の条件に合致する石綿工場の元労働者やその遺族。
(1) 1958年5月26日から1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場(石綿紡績工場、石綿含有建材・製品の製造工場など)で、石綿粉じんにばく露する作業に従事。
(2)その結果、石綿による一定の健康被害(石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚などを)を被ったこと。
(3)提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。
石綿工場と考えられる事業場であり、かつ、石綿ばく露作業を国の責任期間内に行っていた可能性のある事業場において、石綿関連疾患による労災支給決定された人のうち、国の責任期間内に石綿ばく露作業に従事していた可能性のある人: 1,356人
じん肺管理区分決定者のうち、石綿によるじん肺管理区分決定者であり、石綿工場と考えられる事業場で、かつ、石綿ばく露作業を国の責任期間内に行っていた可能性のある事業場において、「じん肺管理区分決定(管理2~4)」を受けた人(ただし、上記1に含まれる方114人を除く) : 958 人
厚労省ではまた、都道府県労働局、労働基準監督署、法テラス、労災指定医療機関などにポスター(下記)とリーフレットの掲示を依頼する。
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