10月1日に米国の新年度(2017/10/1~2018/9/30)の予算審議が始まった。
トランプ大統領は9月8日夜、12月中旬までの債務上限棚上げと暫定予算、およびハリケーン被災者支援の法案にサインし、法案が成立、デフォルトは回避された。
2017/9/9 米国、12月中旬までの債務上限棚上げと暫定予算法案成立、デフォルト
米下院は10月5日、2018会計年度(2017年10月~2018年9月)予算の大枠となる 「予算決議案」を賛成多数で可決した。
民主党は全員が反対した。共和党からも18名が反対、3名が棄権した。(3議席の補欠選挙の結果、欠員は1名になった。)
共和党 民主党 合計 賛成 219 0 219 反対 18 188 206 棄権 3 6 9 合計 240 194 434
「予算決議案」は歳出、歳入、財政収支など予算の全体像を示すもので、この後、これに抵触しない範囲で減税案等の歳入法案や13本の歳出法案の審議が順次行われる。
予算委員会は予算の裁量的経費と義務的経費を包括し、歳出と歳入のバランスを踏まえて予算編成の方向性を大枠で示す。
実際の立法作業は管轄権のある13の小委員会が、予算委員会が指示する支出の上限の範囲内で行う。
その結果が本会議で審議される。
下院の予算決議は、低所得者向け公的医療保険などの義務的経費を10年で2,030億ドル削減することなどを盛り込んだ。
上院は10月19日、51対49の僅差で可決した。共和党から1名が反対した。
共和党 民主党 無所属 合計 賛成 51 0 0 51 反対 1 46 2 49 棄権 0 0 0 0 合計 52 46 2 100
10年間で1.5兆ドルの減税を認める内容で、トランプ政権の税制改革法案を与党・共和党が単独で可決できる環境が整う。
トランプ米大統領と共和党指導部は9月27日、税制改革案を公表した。法人税率は現行の35%から20%に引き下げられる。
2017/10/2 トランプ政権の税制改革案
付記
上院で可決した「予算決議案」は、下院の決議案とは異なるため、再度下院に回された。
下院は10月26日、これを賛成多数で可決した。
共和党 民主党 合計 賛成 216 0 216 反対 20 192 212 棄権 3 2 5 欠席 1 0 1 合計 240 194 434
予算決議の成立によって上院では過半数の51票の賛成で税制改革法案が可決できるようになる。トランプ政権と共和党議会指導部は、連邦法人税率を35%から20%に引き下げる案を柱とした税制改革の基本計画を公表しており、議会指導部は26日、11月1日に詳細な法案を提示して議会審議に入る考えを表明した。
2017/10/2 トランプ政権の税制改革案
具体的な予算案の採決では、上院ではフィリバスター制度があるため、可決には60票が必要であるが、共和党は52名しかいない。
しかし、上下両院で調整した予算決議案を可決すれば、財政調整法に基づき、上院で単純過半数の51票で予算法案を通過させることが可能になる。
財政調整措置とは、本来、財政収支の改善を目的として、それに関わる法案に関して審議のスピードを速めるためのもので、審議時間が20時間に限られており、フィリバスターができない。
なお、財政調整法は予算の対象期間に限定された時限立法である。
ただし、上院共和党がそもそも一枚岩ではなく、オバマケア改正でも3人が反対し、つぶした経緯があり、今回も1人が反対した。楽観視はできない。
上下両院本会議でそれぞれの法案が可決された後は、両院協議会においてそれらの差異が調整される。
その後、両院協議会報告書が上下両院に戻されて再び採決が行われる。この際、両院は修正はできず、採決でイエスまたはノーの意思表明を行うだけである。
両院協議会報告書が再び上下両院で可決されると、その法案は両院一致で可決された法案となって議会を通過し、ホワイトハウスに送付される。
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