東京高裁、新潟水俣病で提訴の9人全員の認定命じる判決

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新潟水俣病をめぐり、新潟市の審査で患者と認められなかった住民など9人が起こした裁判で、2審の東京高等裁判所は、1審の新潟地裁が認めなかった2人についても水俣病と認めるよう市に命じる判決を言い渡した。

付記 

新潟市長は12月2日、新潟市内で記者団に対し週明けにも上告断念を正式に発表する意向を明らかにした。

市が上告せず、12月14日に確定した。今後、正式な手続きを経て認定される。

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新潟地裁は2016年5月30日、新潟市から法律に基づく水俣病の患者認定申請を棄却された市内の9人(故人1人を含む)が市に処分の取り消しと患者認定を求めた裁判で、市の処分を一部取り消し、原告7人を水俣病と認定するよう市に命じた。2人については請求を退けた。

原告は新潟市の50~80代の男女で、1人は申請後に死亡した未認定患者の遺族。阿賀野川のメチル水銀に汚染された魚を食べ、しびれなどの症状があるとして市に認定申請し2007~13年に棄却された。

水俣病の行政認定を巡る判決は最高裁が認定の幅を広げる判断を示した2013年4月の判決以来で、新潟水俣病では初めて。

裁判長は、軽度の水俣病の場合、手足の感覚障害の症状だけのものが存在すると指摘し、最高裁の見解 を踏襲した。

その上で、請求を認めた7人について「阿賀野川の魚介類を摂取するか、摂取した母親の胎内にいたことにより、高度のメチル水銀の暴露を受け、水俣病になった」と判断した。
また、メチル水銀が取り込まれてから数年後に発症した例や、発症後10~20年後に症状が悪化した例があるとして、長期間経過後、老化に伴い症状がはっきり現れる「遅発性水俣病」があり得ることも認めた。 

認められた7人は、症状は感覚障害だけだったが、同居する家族に認定患者がおり、食生活が同じという点からもメチル水銀を摂取した可能性が大きいとし、水俣病と判断した。

7人は2015年3月、国や県、原因企業の昭和電工に未認定患者らが損害賠償などを求めた新潟水俣病第3次訴訟の地裁判決で、水俣病と判断されている。

一方、請求を棄却された2人は、感覚障害はあるが、家族に認定患者がおらず、「汚染された阿賀野川の魚を多食した確かな証拠がない」とした。

判決後、記者会見を開いた高島章・原告弁護団長は、訴えを退けられた2人については「7人と同じような症状がある。家族が認められているかの違いしかない」と複雑な表情を見せ、「家族の有無による線引きがいかに非科学的で根拠がないか、今後も主張していきたい」と述べた。

2016/6/2 新潟水俣病の患者認定申請、7人の請求認める 


今回、東京高等裁判所の河野清孝裁判長は水俣病を引き起こす有機水銀が感覚障害の原因となったかどうかについて「ほかに原因があると疑わせるような事情がなければ、有機水銀が原因となった蓋然性が高い」という判断を示し、1審で訴えを退けられた2人も含め、9人全員を水俣病と認めるよう命じた。

高裁は、「医学的見地に照らし、水俣病の可能性が50%以上なら水俣病と認定する」とした公健法の前身の水俣病被害者救済法の趣旨を重視すべきと指摘した。

さらに、原告が訴える感覚障害について、市側は感覚障害の原因は水俣病以外にあると反論していたが、「市の指摘は抽象的」と退けた。「他の原因がうかがえなければ、メチル水銀が影響した可能性が高いとすべきだ」との判断を示した。

2人について、「証言などによると、週に3回は食べていたと認められる」とした。同居していた家族の中に認定患者ではないものの、特別措置法で救済の対象になった人がいたことや、親戚が持ってきた魚を食べ、その親戚の親族に認定患者が複数いることなどを踏まえて有機水銀を摂取した可能性を否定できないとして、水俣病と認めた。

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