サウジ、汚職撲滅を掲げ、王子ら多数を逮捕 

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サウジアラビア政府は11月4日、11人の王族を含む約50人を汚職などの疑いで逮捕した。

政府は王族たちの逃亡を防ぐため、プライベートジェットが発着する首都リヤドの空港を閉鎖した。

11月5日、マンスール・ビン・ムクリン王子(Mansour bin Muqrin)ら8人のサウジ高官が乗ったヘリがイエメン国境近くで墜落し、王子は死亡した。王子は2015年4月に皇太子を解任されたムクリン王子の息子。国外逃亡を図った際に墜落したと噂される。

逮捕対象には、著名な投資家で富豪のアルワリード・ビン・タラール 王子(Alwaleed bin Talal)やアブドラ(Abdullah)前国王の息子で後継候補の1人だった国家警備隊長のミテブ王子Mutaib bin Abdullah)らが含まれる。

アルワリード・ビン・タラール王子は初代国王アブドゥルアズィーズ・イブン・サウード(Saud)の息子 のタラール王子Talal )の息子。

父親のタラール王子 は1960年代初めに財務大臣を務めたが、政治改革を主張し、Red Princeと呼ばれた。王位継承権を放棄して亡命した。

アルワリード・ビン・タラール王子は、株式および土地への投資によって富を築いた。資産はおよそ200億米ドルで、世界で8番目、アラブ世界では一番の資産家である。『タイム』誌によって「アラブのWarren Buffett」と名づけられた。王子が95%を保有するKingdom Holdingは、Citigroup、Apple、21st Century Fox、Twitterといった企業の大株主でもある。

1991年に不良債権を多く抱え業績不振に陥っていたCiti Bankの株式10%を5億9000万ドルで取得し、救済した。その後、Citi の経営は持ち直し株価は上昇、王子は高いリターンを得て、次の国際投資へとつなげた。

政治とは一定の距離を置く一方、ムハンマド(Mohammad bin Salman皇太子が進める経済改革には好意的な発言を続けていた。

2015年12月、イスラム教徒入国禁止発言をした共和党のTrump大統領候補のアカウントに「おまえは共和党だけでなく全米の恥だ。おまえの勝利はありえないから大統領選から撤退しろ」罵るメッセージをおくり、Trumpから「まぬけ王子」と罵り返されるなど応酬を繰り広げて注目された。

ミテブ王子初代サウード国王の息子 アブドラ国王の息子で、王室の警備を担う有力軍事組織、国家警備隊の長を2010年から務めていた。

逮捕されたなかには、初代サウード国王の息子で自堕落な態度のため皇太子になれなかったナセル王子息子のトルキー・ビン・ナセル(Turki bin Nasser)王子(前 気象環境保護庁長官)や、衛星テレビ局アルアラビアを傘下に持つMiddle East Broadcasting Centerワリード・イブラヒム(Waleed Al-Ibrahim)会長、前王宮府長官Khaled Al-Tuwaijri なども含まれる。

サウジ政府は逮捕に先立ち、ミテブ王子 アデル・ファキーフ(Adel bin Mohammed Faqih経済計画相、アブドラ・スルタン(Abdullah bin Sultan海軍司令官を更迭する国王令を発表した。
さらに、
ムハンマド
皇太子を長とする「反腐敗最高委員会」の創設も発表した。

同委員会は11月6日、「不正がはびこっていたこをと示す広範な証拠を握っている」とし、近く裁判にかけると発表した。

サウジで複数の王族が一斉に逮捕されるのは異例で、腐敗撲滅をめざす政府の決意を示したとされるが、他方で ムハンマド皇太子の対抗勢力になり得る有力王族を逮捕し、力を見せつける狙いがあるとみられる。強引な手法にはほかの王族からの反発が強まることも予想される。

ムハンマド皇太子は、副皇太子時代に「ビジョン2030」を作成しているが、下記の通り、「民営化による透明性の向上と汚職抑制」を謳っている。

サルマン(Salman)国王(81)は6月21日、王位継承順位が1位のムハンマド・ナエフ(Muhammad bin Nayef)皇太子(57)を解任し、自身の子である継承順位2位のムハンマド(Mohammad bin Salman)国防相兼副皇太子(31)を皇太子に昇格させる異例の人事勅令を出した。ムハンマド・ナエフ皇太子は副首相や内相などすべての職務を解任された。解任後に自宅軟禁状態にあると報じられている。

国王は2015年4月に、前国王が指名したムクリン(Muqrin)皇太子(当時)を解任している。

第二世代は兄弟が順番に国王になったが、第三世代以降はサルマン国王が自分の直系に引き継がそうとしているように思われる。

2017/6/29 サウジ、副皇太子が皇太子に昇格、副首相に就任、国防相などのポストは継続

サウジ王家の関係は下記の通り。(名前の右の数字は生年) 青字は今回逮捕された王子。 赤字は今回死亡。

第一世代 第二世代
(* Sudairi Seven)
第三世代 国王

皇太子

Abdullah 国王 Salman 国王
Abdulaziz Ibn Saud ①1932/9-1953/11
Saud 1902 ②1953/11-1964/11
Faisal 1906 ③1964/11-1975/3
Nasser 1911
Turki bin Nasser 1948
Khalid 1913 ④1975/3-1982/6
Fahd * 1921 ⑤1982/6-2005/8
Abdullah 1924 ⑥2005/8-2015/1
Mutaib bin Abdullah 1952
Talal 1931
Alwaleed bin Talal 1955
Nayef * 1934 2011/10
- 2012/6 死亡
Muhammad bin Nayef 1959 ②2015/4
- 2017/6 解任
Salman * 1935 ⑦2015/1- 2012/6
- 2015/1 国王に
Mohammad bin Salman 1985 ③2017/6-
Muqrin 1945 ①2015/1
- 2015/4 解任
Mansour bin-Muqrin 1974

Sudairi Sevenは、初代Saud国王が最も寵愛したスデイリー家出身の女性ハッサとの間に生まれた7人の男子。
生存しているのは、6男のSalman国王と、7男のアフマド王子のみ。

ムハンマド皇太子は初代サウド国王の孫世代では初めての国王となる見通し。

副皇太子時代から Council of Economic and Development Affairs (CEDA) を率いており、2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を作成、サウジ政府は2016年4月25日、国王主宰の閣議でこれを承認した。

石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していく。

公的投資基金(PIF)の資産を6,000億リヤールから7兆リヤール(約2兆ドル)に増やす。

目標を達成するための手段として、
・ 国営石油会社Saudi Aramcoの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・ 民営化による透明性の向上と汚職抑制
・ 軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・ 外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。

サウジアラビアの公的投資基金 (PIF) は1971年の設立以来、サウジ財務省が管轄し、石油精製、肥料、石油化学、電力などの大事なプロジェクトのファイナンスを担ってきたが、2015年3月からはCEDAに移管された。

PIFは2015年7月に韓国のPosco Engineering & Construction の株式の38%を取得、2016年6月には米配車サービス大手Uber Technologies Inc.に35億ドルの出資を行い、発行済み株式の約5%を取得した。
2016年3月に、Saudi Aramcoの所有権が政府から PIFに移管された。

ソフトバンクグループは2016年10月14日、グローバルにテクノロジー分野へ出資することを目的とした私募ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(仮称)の設立を決定したと発表した。

ソフトバンクグループは、今後5年間で少なくとも 250億米ドルを本ファンドに出資、サウジアラビアの公的投資基金(PIF) との間で、主要な資金パートナーとして本ファンドへの出資を検討することについて、覚書を交わした。さらに、本ファンドへの出資を目的に、複数のグローバルな大手投資家たちと協議中で、1,000億米ドルとなる可能性がある。

ソフトバンクグループ 5年間で少なくとも 250億米ドル
PIF 5年間で    最大 450億米ドル
複数の大手投資家   協議中
総額   1,000億米ドルとなる可能性


2016/10/17 ソフトバンクグループ、10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立 


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