日本の石炭火力支援への批判

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丸紅は韓国電力公社とともに、ベトナム北部のタインホア省の大型火力発電所をBOT(建設・運営・譲渡)方式で建設する。(11月8日付 日本経済新聞)

ベトナム初となる「超臨界」高効率の石炭火力発電所(発電能力120万キロワット)で、2018年に着工し、22年から運転する。運営も両社が担い、発電した電力はベトナム電力公社に販売する。
総事業費は25億ドルで契約期間は29年間。

両社は2013年3月に優先交渉権を取得した。

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『国連気候変動枠組み条約』(UNFCCC)の第23回締約国会議(COP23)が11月6日 ドイツのボンで開幕した。

米国政府はパリ協定から離脱したが、米国の123の市・9つの州・902の企業と投資家・183大学などが、「We are still in」(われわれはパリ協定に残る)とする以下の声明を出した。

「ワシントン(連邦政府)からのリーダーシップがないのであれば、米国経済の相当な規模を代表するわれわれ ー 州・自治体・大学・企業・投資家 ー が積極的な温室効果ガス削減の目標を追求していく。われわれはともに手をとり、アメリカが削減の世界的リーダーとして踏み止まれるよう、力強く行動していく」。  

日本の経団連、米国の国際ビジネス評議会や欧州のビジネスヨーロッパ、世界鉄鋼協会など欧米やインドなどの13の経済団体は11月12日、ドイツのボンで会合を開き、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の運用に企業の積極的な関与を促す意見書をまとめた。「パリ協定は企業の意味ある参加が無ければ成功しない」と指摘し、企業や産業には温暖化ガスの排出量が少ない経済を作る責任があるとした。

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世界各国の環境NGO でつくる「気候行動ネットワーク」(CAN:Climate Action Network)は11月9日、COP 23の会合に合わせ、地球温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞 (Fossil of the Day Award)」を発表した。

1位 先進国全体(現在の気候変動に歴史的責任を持つ)

今回のCOP23は、2020年以降の温室効果ガス削減目標を世界規模で達成するためのルール作りなどを焦点 とする。

本年も世界中で異常気象となった。2020年まで待てず、今すぐ行動する必要があるのに、先進国は2020年までをどうするかの議論に反対した。

2位 日本

安倍晋三首相とトランプ米大統領は11月6日、エネルギー分野での協力強化を目指し、「日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)」を日米経済対話の枠組みの中で進めることで一致した。
先進的な原子力技術の促進、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)を含む高効率の
石炭火力技術 (HELE) の展開などを掲げた。

気候行動ネットワークは、これに触れ、東南アジア、南アジア、サブサハラ アフリカなど途上国での原子力と石炭火力技術の展開を問題とする。再生可能エネルギー支援については一切触れていないことも問題とした。

日本はパリ協定を実行するとしているが、本当か?と疑問符を付けた。
日本は米国政府とともに、原子力と石炭火力を推進しており、これは途上国での再生エネルギー拡大努力に水を差す。日本は原子力と石炭というアナクロ政策を変更すべきだとする。

3位 Kuwait

補助機関会合(SBI)での損失と被害(Loss and Damage)交渉にオブザーバーの参加を認めないことを主張した。

日本政府代表団は「民間団体がやっていることの一つ一つにはコメントしない」などとした。

付記

「気候行動ネットワーク」は11月16日、「パリ協定」から離脱宣言した米政府に、温暖化対策に極めて後ろ向きだとして「特大化石賞」(Colossal Fossil Award)を贈った。


日本は化石賞の常連。

2015年の国連気候変動交渉会議(SB42/ADP2-9)の場で、気候行動ネットワークから次の理由で 3つの化石賞を受賞している。

ワンストライク!1つ目の「本日の化石賞」を受賞するのは、極めて低い温室効果ガス排出削減目標案を発表した日本です。煙と鏡を使って(基準年をずらして)見かけ上の排出削減の数値をかさ上げし、この2030年目標案が「先進国で2050年までに80%削減」という長期目標に沿うと大胆にも言い張っているのです。日本の安倍晋三首相は、今週末のG7サミットで、1990年比でたった18%削減という弱い目標案の言い訳をし、世界中の人々の目を誤魔化そうとしているのでしょう。日本の国別目標案「26%」は、野心的でもなければ、公平でもありません。

ツーストライク!2つ目の化石賞は、これも日本が受賞です。開発援助銀行が「世界気温上昇2℃未満」に沿うように作業させようというG7の国々による提案を日本が妨げたのです。日本は、世界を破滅的な気候変動に導こうというのでしょうか?

スリーストライク!3つ目の化石賞は、途上国において、CO2を大量に排出する石炭火力発電プロジェクトを資金支援している日本です。国際社会からの高まる批判にもかかわらず-日本はリマでもこのひどい行動によって化石賞を受賞しました-、これを続けているのです。日本がこの汚い石炭政策を維持する限り、化石賞を受賞し続けることになるでしょう。日本は汚い石炭にではなく、再生可能エネルギーによる解決策に資金支援するべきです。

2016年の受賞では、気候行動ネットワークは、1,2位を日本に贈った。

1位を受賞したのは日本、トルコ、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、インドネシアの7カ国。

これらの国が石炭を採掘、推進し、各国の気候変動対策を「文字通り掘り崩している」と訴えた。

2位は日本の単独受賞で、新規の石炭火力発電所約50基の建設計画を持ち、国際協力銀行がインドネシアで反対運動がある石炭火力にも投資していると批判した。

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ゴア米元副大統領 は、約10年前に世界的に大ヒットしたドキュメンタリー映画「不都合な真実 (An Inconvenient Truth)」の続編 「不都合な真実2:放置された地球」(An Inconvenient Sequel : Truth to Power) が11月17日から日本で公開されるのに合わせて来日した。

前作の公開から10年が経った現在、地球はかつてないほどの危機に瀕していることを訴える。 "エコムーブメント"を巻き起こした前作から僅か10年の間に、地球に何が起こっているのか? 今も世界中を飛び回り、環境問題に取り組む人材の育成に励むゴア元副大統領が、再び"衝撃の真実"を突きつける。

前作では見られなかった、必死の形相で、声を荒げ、祈るように使命を全うしようとするゴアの姿も追う。

朝日新聞はインタビュー内容を報じている。

日本が途上国の石炭火力発電所建設を支援していることにふれ、「ショッキングだ」と懸念を表明。トランプ大統領がパリ協定から離脱すると表明したことについて、「それでも米国内の対策は進む」と見通しを語った。

日本が国内だけでなく、インドネシアなど途上国で石炭火力建設を支援していることについて、「日本国民の税金を汚い石炭に投入するのはやめるべきだ」と批判。中国が再生可能エネルギーへの転換で主導権を狙っているとして、「世界から悪く見られることは、いまの日本にとって得策だろうか? 私が日本人なら違う答えを示すだろう」と語った。

温暖化対策に否定的なトランプ氏の発言は「汚染する側の人たちに配慮した政治的なものではないか」との見方を披露した。パリ協定からの離脱を思いとどまるようトランプ氏に説得を試みたと明かし、「私なりに最善を尽くしたが、だめだった」。

トランプ氏の発言にかかわらず、国内の多くの州や市、企業などが独自にパリ協定を守ると約束しているとして、「私は楽観的だ。この戦いには勝てる」と話した。

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日本の主張は、日本の石炭火力発電技術は低公害で、高効率であり、温暖化対策に貢献するというものだが、世界では通らないようだ。

 

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