日本原子力発電(原電)が、廃炉のために準備しておくべき資金を流用し、残高が大幅に不足している。11月17日付 朝日新聞が報じた。
原電では現有の3基が全て停止中。
敦賀第一は2015年に廃炉を決定した。
敦賀第二は2013年5月に直下の断層が活断層と断定された。その場合、再稼働は認められない。
原電側は活断層ではないと主張し、現在も審議中。
東海第二は再稼働審査が停滞しているが、2018年11月に40年となる。
原電は60年への延長申請を11月24日に規制委員会に申請する。
30キロ圏内に約100万人が住むが、避難計画は難航している。申請が認められるかどうか、不明。
(これまで延長申請は、関西電力の高浜①、②と美浜③の3基のみで、いずれも加圧水型。福島と同じ沸騰水型では初めて)
仮に認められた場合、安全対策費が1700億円超必要とされる。(付記 他にテロ対策で1000億円程度)
敦賀第三、第四については、安全審査が棚上げされ、敷地が造成した段階で止まっている。
発電所名 | 運転開始 | 型式 | 能力 (万KW) |
再稼動申請 | 状況 | 廃炉費用 要積立額 | ||
日本原子力 東海 |
① | 1966/7/25 | 英国製黒鉛減速 ガス冷却炉 |
16.6 | 1998/3/31運転終了 2020年度に廃炉解体終了予定 |
490億円 |
合計 |
|
② | 1978/11/28 | BWR | 110.0 | 2014/5/20 | PWR優先で審査停滞 2018/11 に40年経過 60年への延長申請準備中 (安全対策費 1700億円超が必要) |
530億円 | ||
日本原子力 敦賀 |
① | 1970/3/14 | BWR(Mark-I) | 35.7 | 2015/3/17 廃炉決定 | 340億円 | ||
② | 1987/7/25 | PWR | 116.0 | 2014/11/5 | 2013/5/27 敦賀2号機直下の断層を活断層と断定* | 440億円 | ||
③ | 計画中 | APWR | 153.8 | 2010/3 敷地造成完了 福島事故で安全審査が棚上げ、工事中断のまま |
||||
④ | 計画中 | APWR | 153.8 |
*会社側は2013年7月、データに基づき「D-1 破砕帯は活断層ではない」とする報告書を提出、現在、原子力規制委員会の評価会合で審議が進められている。
原発は廃炉費用の積み立てが義務付けられている。朝日新聞報道では、総額1800億円程度の引当金がある計算だが、福島第一原発事故の前に、敦賀第三、第四の建設費に流用することを決めたという。
事故後、全原発が停止し、資金繰りが苦しくなり、流用が続いた。
2017年3月末での現預金残は188億円に過ぎない。(他に、内容不明の「短期投資」が460億円)
廃炉費用の引当金は、他の引当金と同様、現金で残す必要はなく、どのように資金運用するかは企業の判断に任されている。
原電の場合も、その意味では流用は問題ではない。
しかし、金融機関は、原電の全原発が止まっている状況では、新たな融資はしない。
このため、規制委が東海第二の再稼働や運転延長を認めない場合、廃炉費用がなく、廃炉できないこととなる。
再稼働が認められても、原電は1700億円超の安全対策費を調達する必要があり、廃炉資金を調達できないこととなる。
東海第二の運転延長申請は、廃炉費用が確保できないためともされる。
原子力規制委員会の運転延長の審査会合で、審査官が安全対策費について、「しっかりとした債務保証の枠組みを確認させて頂く必要がある」と告げたとのこと。
経産省内部でも、解体引当金の流用を規制するようルールの見直しが必要との意見が出ているという。
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日本原子力発電は日本で最初の原発を建設・運営するために電力9社が中心で設立したもので、発電した電力は電力9社が引き取っている。
原発停止で電力の引取はないが、Take or Pay の形で固定費分の支払いを続けている。(各電力会社の分工場の位置づけ)
同社の決算は次の通り。(単位:億円)
2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 売上高 1,524 1,258 1,328 1,149 1,099 経常収益 1,550 1,280 1,327 1,165 1,109 経常費用 1,540 1,193 1,277 1,101 1,060 経常利益 10 87 69 63 48 当期純利益 -5 16 -30 12 -64
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