東芝は11月19日開催の取締役会において、第三者割当による新株式の発行を決議した。
新株式の発行総額は約 6000億円(新株式1株あたりの発行価格262.8円) で払込みは12月5日に完了する予定。
経営再建の途上にある東芝が、公募増資を実施するのは事実上 困難なため、第三者増資を行う。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てる。
主な投資家は次の通りで、「物言う株主」も多い。Effissimo は昨年の川崎汽船の総会で社長再任議案に反対したとみられる。
増資全体の比率 東芝持株比率 Effissimo Capital Management 14.0% 9.89%→11.34% Segantii Capital Management 13.1% Harvard Investment 7.4% Elliot Management 5.6% King Street Capital 4.2% Cerberus Capital Management 2.3% Third Point Management 2.3% Oasis Management 1.7%
調達した資金は、Westinghouseの米国原子力発電所建設プロジェクトに関する親会社保証の一括弁済に充てる。
現在は保証損失を有税で引当てしているが、一括弁済によりこれを損金算入することにより、税金を 3400億円圧縮する。
これにより債務超過額の大部分を占める税負担が減るため、6000億円の新規調達で資産が債務を上回る見通しで、2期連続の債務超過による上場廃止を回避することが確実となる。
東芝は9月20日の取締役会で、東芝メモリの売却先について、Bain Capital が率いる「日米韓連合」にすることを決議した。
売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみている。
2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表
しかし、各国の独禁法当局の承認が2018年3月末までに取得できなければ、売却益を計上できず、2期連続の債務超過となり、上場廃止となる。
今回の増資が完了すれば、東芝メモリ売却が完了しなくても、債務超過を免れる。
この場合も、東芝メモリの売却は実行する。
取引銀行はこれまで融資の条件として東芝メモリの売却を提示している。
東芝メモリは今後も毎年 多額の投資が必要で、東芝として対応が難しい。
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東芝は8月10日、PwC あらた監査法人から2017年3月期の有価証券報告書について監査法人から「限定付き適正」の監査意見を受領し、有価証券報告書を関東財務局に提出した。
確定した2017年3月期及び2017/4-6月期決算と、現時点での2018年3月期決算予想の概要は次の通り。(億円)
16/3 17/3 増減 6/23発表
見通し増減 17/1Q 18/3予 売上高 51,548 48,708 -2,840 48,708 0 11,436 49,700 営業損益 -4,830 2,708 7,538 2,708 0 967 4,300 (うち東芝メモリ) (1,100) (1,866) (766) (903) (3,712) (東芝メモリ以外) (-5,930) (842) (6,772) (64) (588) 非継続事業純損益 -1,298 -12,801 -14,099 -13,065 264 - - 純損益 -4,600 -9,657 -5,057 -9,952 295 503 2,300 株主資本 3,289 -5,529 -8,818 -5,816 287 -5,043 -4,100
2017/8/14 東芝、有価証券報告書を提出、決算発表
東芝は9月20日の取締役会で、東芝メモリの売却先について、Bain Capital が率いる「日米韓連合」にすることを決議した。
売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみている。
上の表の株主資本は -4100億円 + 7400億円=+3300億円となる。
2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表
同社は10月23日、業績予想を修正した。営業損益等は上図と同じである。
東芝メモリの売却では、売却額が2兆円、税引前利益が1兆800億円、税金が3400億円、差引税引き後損益が+7400億円であるが、今回の業績予想では、税金3400億円 のみを追加計上した。売却利益 1兆800億円については、各国の承認が得られていない状況であるため、保守的会計原則により、計上しなかった。
この結果、この時点での債務超過は7500億円に拡大する。来年3月末までに承認が得られれば、株主資本は3300億円になり、債務超過を免れるが、ダメな場合は2年連続債務超過となり、上場廃止となる。
今回、6000億円の増資と、増資資金による親会社保証の一括弁済で税金が2400億円減ると、資本勘定は8400億円増加し、差引 プラス 900億円となり、東芝メモリの売却益なしでも、債務超過を免れる。
不足する場合は、東芝が保有債権の一部を売却するなどして賄う方針。ただ、さらなる財務基盤の健全化のため、増資額を上積みする可能性もある。
18/3予 2017/10/23
今回 売却の税額影響 (株式売却) 売却なし
増資のみ
売上高 49,700 営業損益 4,300 (うち東芝メモリ) (3,712) (東芝メモリ以外) (588) 株式売却(税引前) (10,800) 売却関連税金 -3,400 引当損失の損金算入 2,400 非継続事業純損益 - - 純損益 2,300 -3,400 (+10,800) 増資 6,000 株主資本 -4,100 -7,500 (3,300) 900
この後、東芝メモリの売却が完了すれば、株主資本は1兆800億円増える。
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