日本ペイントは11月22日、同業の米Axalta Coating Systemsに買収を提案したことを明らかにした。
付記 全株式買取で、提示した価格は1株37ドルとされる。総額92.5億ドル(1兆円超)となる。
日本ペイントの2017年9月末の現預金・有価証券は1340億円で、多額の借り入れが必要となる。
Axalta も同日、日本ペイントと交渉していることを明らかにした。しかし双方とも合意できるかどうか不明としている。
付記 日本ペイントは12月1日、買収交渉を打ち切ったと発表した。買収金額などの条件面で折り合わなかった。
Axaltaは、自動車用塗料や同補修用塗料を主に手がけ、2016年の売上高は41億ドル。
Axalta Coating Systemsは150周年を迎えた。自動車OEM、商用車両、補修用アプリケーションから、電気モーター、ビル、パイプラインまで扱う。
日本ペイントは売上高の6 割を中国などアジアに依存しており、Axalta と組んで北米での展開を急ぐ。
しかし、Axalta の時価総額は 9600億円に及んでおり、日本ペイントが何割を取得しようとしているのか、多額の買収資金をどうするのかなど、不明な点が多い。
ペイント業界の状況は以下の通り(日経による)で、日本ペイントは売上高で世界5位、Axaltaは同7位で、買収が成功すれば4位になる。
世界の塗料業界では規模拡大でコスト競争力を強めようと、大型のM&Aが続いている。
首位のAkzo Nobel は、2008年1月にICIを買収している。
1994年2月に Nobel Industries AB とAKZO N.V. が合併し Akzo Nobel N.V. となった。
世界有数の総合化学会社であったICIは、1997年に、事業を化学品のなかでも付加価値が高く、投下資本が少なく、景気変動の影響が少なく、研究開発により重点を置いた事業に急速に転換することを決めた。
既存事業を順次分離・売却していき、スペシャリティ化学品を中心とした「新生ICI」に生まれ変わった。塗料のほかは、Unileverから購入したNational Starch、Quest、Uniqemaが中心である。
2006年にはQuest、Uniqema を売却し、売却代金を退職年金不足額の充当と負債の返済に充てた。
そして、塗料事業はAkzoに買収され、National Starch はHenkel とCorn Products International に売却された。
2007/8/13 Akzo が ICI を買収
Akzo Nobel は2016年12月、BASFの工業用塗料事業を買収した。
BASFの工業用塗料事業は、コイル、パネルコーティング、壁紙用塗料や風力向け等の工業用塗料を欧州・中東・アフリカ地域で行っていた。
2015年のBASFコーティングス事業部の世界売上高は32億ユーロで、Akzoに売却した工業用塗料事業の売上は、全体の1割にあたる約3億ユーロであった。なお、BASFのコーティングス事業部は、引き続き既存の自動車用OEM塗料、自動車補修用塗料、ブラジルでのSuvinil® ブランドによる装飾用塗料の事業を展開していくとしている。
Axalta 自身、塗料世界首位のAkzoNobel と経営統合に向けた交渉をしていたが、11月21日 交渉を打ち切った。11月22日に日本ペイントとの交渉を発表。
10月30日に、Axalta はAkzoNobel との間で対等合併の交渉を行っていると発表した。11月21日、同社の基準に沿った条件での交渉が出来ないと判断し、交渉を打ち切ったと発表した。代替案の追及を続けるとしていた。
世界3位であった米 Sherwin-Williamsは2017年6月に米の同業のThe Valspar Corporation を買収し、2位に浮上した。
2016年3月、113億ドルでの買収契約を締結した。相互に補完的であるとしている。
米国FTCとカナダのCompetition Bureau の審査の結果、Valsparの北米の Industrial Wood Coatings事業をAxalta Coatings Systems に売却した。
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日本ペイントと、シンガポール国籍のGoh Cheng Liangが設立した Wuthelamグループは、1962年にJVのNippon Paint Southeast Asia グループ(NIPSEAグループ)をつくり、その後、アジア各国で自動車や建築用塗料などを中心に、日本ペイントが技術、Wuthelam がマーケティングを担当して合弁事業を展開してきた。
日本ペイントは2014年2月、Wuthelam Groupを引受先とする約1000億円の第三者割当増資を実施すると発表した。
Wuthelam は日本ペイントの筆頭株主で14.5%を出資するが、増資により出資比率は30.3%に高まる。
更に、Wuthelam は、第三者割当後の2年間に限り、市場での購入で出資比率を39.0%まで増やすとした。(2016年末時点で38.99%を所有している。)
Wuthelam Groupは2013年1月21日、日本ペイントへの出資比率を約45%まで高めて傘下に収めるため、720億円を投じて8千万株を取得する提案を日本ペイントの取締役会に提出した。
しかし、日本ペイントとの協議の結果、Wuthelamは3月12日付で日本ペイントへのTOB提案を取り下げた。
両社は、Wuthelamの日本ペイントに対する持株比率の引き上げと、両社のJVの日本ペイントによるマジョリティ化について協議してきた。
Wuthelam Groupが日本ペイントに38.99%出資する見返りに、日本ペイントは両社のJVの出資比率を引き上げた。
2014/2/6 日本ペイント、Wuthelam Groupとの戦略的提携の基本合意
日本ペイントとWuthelam Groupのアジアの連携の全貌は以下の通り。
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日本ペイント | |||||||
本部 | シンガポール | Nipsea Management | 50% | アジア地域統括 | |||
Nipsea Technologies | 50%→51% | 研究開発 | |||||
一般
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シンガポール | Nippon Paint (Singapore) | 40%→51% | ||||
スリランカ | (60%) Nippon Paint Lanka | Silicon Coatings 40% | |||||
マレーシア | Paint Marketing Co. (M) | 25%→51% | |||||
Nippon Paint (Malaysia) | 25%→51% | ||||||
バングラデシュ | (90%) Nippon Paint (Bangladesh) | 現地10% | |||||
タイ | Nippon Paint (Thailand) | 40%→51% | |||||
Nippon Paint Decorative Coatings (Thailand) |
51% | 上記から分離 | |||||
韓国 | Nipsea Chemical | 40%→51% | |||||
台湾 | Asia Industries | 34.8%→51% | |||||
香港 | Nippon Paint (H.K.) | 40%→51% | 中国統括&塗料販売 | ||||
中国 | (100%) Nippon Paint China Holdings | (40%→51%) | |||||
(100%)Langfang Nippon Paint | |||||||
(100%) Nippon Paint (Tianjin) | 廊坊立邦立東塗料& 天津立邦聖連達粉末塗料を統合 |
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Nippon Paint (China) | 40%→51% | ||||||
Guangzhou Nippon Paint | 40%→51% | ||||||
Nippon Paint (Chengdu) | 40%→51% | ||||||
Guang Li Chemicals (Shanghai) | 38.65% | ||||||
Nipsea Chemical (Shanghai) | 51% | ||||||
フィリピン | Nippon Paint Philippine | 51% | |||||
インド | Nippon Paint (India) | 50% | |||||
パキスタン | Nippon Paint (Pakistan) | ||||||
船舶 | 日本 | 日本ペイントマリン | 60% | Nipsea Pte.,Ltd 40% | |||
シンガポール | Nippon Paint Marine (Singapore) | ||||||
マレーシア | Nippon Paint Marine (Malaysia) | ||||||
韓国 | Nippon Paint Marine (Korea) | ||||||
台湾 | Nippon Paint Marine (Taiwan) | ||||||
中国 | Nippon Paint Marine (China) | ||||||
Nippon Paint Marine (Zhangjiagang) | |||||||
Nippon Paint Marine (H.K.) |
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