ネブラスカ州は11月20日、カナダから米メキシコ湾沿岸に原油を送るパイプライン「Keystone XL」の建設計画を承認した。
付記
米モンタナ州の連邦地裁は2018年12月8日、さらなる環境評価が行われるまで作業を差し止める命令を下した。
2014年に行われた環境影響評価が国家環境政策法などの基準を満たしていないとする原告の主張を認め、米国務省が追加評価を完了するまで TransCanadaと米政府が「キーストーンと関連施設の建設・運用を推進する活動」を行うことを禁止した。
TransCanadaが建設計画中のKeystone XL Pipelineは、カナダのOil sandを採掘・処理した合成原油の輸入拡大を目指す取組みで、既に操業中のKeystone パイプライン(Phase 1-2)が、カナダ産合成原油を米国中西部製油所に輸送するのに対し、Keystone XL パイプライン(Phase 3-4)はメキシコ湾岸製油所まで輸送する。
問題になっているのは、Phase 4 で、ネブラスカ州の1/4を占めるSand Hills 地域は湿原地帯で、Ogallala Aquifer (帯水層)の上にある。
ネブラスカ州の責任者や住民は、湿原地帯で、北から南への多くの種類の渡り鳥のCentral Flywayで、世界でも最大規模の鶴の飛来地であるSand Hills 地域への懸念に加え、Great Plains 諸州の飲用水のソースであるOgallala 帯水層を横切ることに懸念を表している。
今回の承認の直前の11月16日、サウスダコタ州マーシャル郡でKeystone パイプライン(Phase 1 )から21万ガロンの原油の流出事故が発生した。同パイプラインでは過去最大規模の流出である。
流出によって水路や水系、野生生物などに影響が出たという報告は入っていないという。
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オバマ前大統領は2015年11月6日、Keystone XLの建設計画について、環境に悪影響を与える懸念から却下したと発表した。
米国務省が入念な調査の結果、パイプラインは「米国の国家的利益に沿わない」との結論に達したのを受けたもので、大統領は「この決定に同意する」と述べた。
2015/11/11 オバマ米大統領、Keystone XL パイプライン建設計画を却下
しかし、Trump大統領は就任直後の2017年1月24日、これまで米政府が承認していなかったカナダからの原油パイプライン Keystone XL Pipeline と Dakota Access Pipeline の建設を推進する大統領令に署名した。
建設によって「2万8千人の雇用を生む」としたほか、地方の税収が向上することでインフラ投資の財源となると指摘、エネルギー安全保障の強化にもつながるとしている。
更に、「パイプラインは米国が造る。鉄鋼業の労働者が仕事に戻れる」と述べ、今後、米国でのパイプラインの建設や補修には米国製品を可能な限り使うよう求める大統領令にも署名し、商務長官に具体策の検討を指示した。
ホワイトハウスは大統領が就任演説で宣言した "BUY AMERICAN & HIRE AMERICAN!"の一環と説明している。
2017/1/26 Trump大統領、原油パイプライン建設へ大統領令
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今回、ネブラスカ州のPublic Service Commission は3対2で承認した。共和党の委員一人が、土地所有者への影響と、雇用が増える保証がないとして反対した。
当初計画ではSand Hills 地域を直接横切っていたが、今回はこれを避けるルートについて審議した。
委員会はTransCanadaが望んでいるPrefered Route(下右図の緑の線)ではなく、更に東側のAlternative Route (黄色の線)を承認した。パイプラインのPhase 1に沿ったものになる。
承認に当たり、上記のサウスダコタ州での直前の流出事故については考慮しなかった。
しかし、この案であっても、水源に悪影響を与えることや、気候変動への影響を理由に、現地の原住民や環境グループが反対するのは明らかである。
TransCanadaも委員会に対し、Prefered Routeに対し約8km遠くなり、コストアップになるとして、ルートの再検討を求めた。
実際にいつ着工できるのか、不明である。
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