住友化学、豪州の除虫菊由来殺虫成分の大手サプライヤーを買収

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住友化学は11月22日、殺虫成分ピレトリンの大手サプライヤー Botanical Resources Australia とその関係会社の株式 82.9%をオーナー等から取得し、住友化学子会社MGKの持ち株と合わせ、100%子会社化したと発表した。

住友化学が86.5%出資する米国の家庭用殺虫剤Distributor の McLaughlin Gormley King Company(MGK) が既に17.1%出資している。

MGKは1970年代から住友化学のピレスロイドを扱っているが、1987年に住友化学が14%出資した。
その後、1999年に出資比率を32.88%に増やしたが、2012年に76.36%とし、現在86.5%となっている。

2013年8月に住友化学のValent U.S.Aの100%子会社であるValent BioSciences Corporation の生活環境事業を MGK に統合した。

ピレトリンは、除虫菊の花から抽出される殺虫成分で、家庭用、防疫用から農業用まで幅広く使用されている。住友化学は同じ基本化学構造を有する合成ピレスロイド系殺虫成分のメーカー。

Botanical Resourcesグループはオーストラリアのタスマニア州でピレトリンを生産しており、 除虫菊の種子改良や、ピレトリンの製造に関するノウハウの蓄積を通じて、製品(Pyrethrins 20%Pyrethrins 50%など)を安定的に供給できる信頼性の高いサプライヤーとしての地位を確立している。

同社は1996年に創業し、MGKや他のDistributorと戦略的長期供給契約を締結した。
住友化学の合成ピレスロイド供給先である米国の S.C. Johnsonにも供給している。

北米と欧州が主な製品輸出先となっている。

住友化学では、米国子会社MGKが天然ピレトリンを扱うほか、日本の子会社の住化エンバイロメンタルサイエンスがシロアリ対策の土壌処理剤や予防駆除剤に天然ピレトリン剤を扱っている。今回取得するBotanical Resourcesグループのノウハウをグループに展開するとともに、気候条件の異なる除虫菊の生産拠点を得ることで、より 安定した ピレトリンの供給体制を構築する。

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除虫菊は中央アジアからペルシャ地方の山野に自生していた野菊で、赤花種と白花種の2種類がある。
白花種に除虫の効力があることを知り、これを最初に栽培したのはユ-ゴ-スラビアのダルマシア地方である。

これが後に北米に移植されて、カリフォルニアを中心としてかなり広い範囲でもっぱら防虫用を目的として栽培された。

金鳥ブランドの大日本除虫菊の創始者、紀州有田郡の上山英一郎は1886年に米国植物会社から除虫菊を含む各種の種子を受け取った。

当初は除虫菊の乾花を粉にして炭火の上でくすべていたが、上山英一郎はこれを仏壇線香の中に練り込むことを考案し、1890年に世界初の棒状蚊取り線香を発明、1902年には渦巻き型を発売した。

上山英一郎は地元有田郡ばかりでなく、瀬戸内の島々から中国九州に、さらに北海道の荒地にも除虫菊の栽培を説いてまわった。

その結果、最盛期の1935年の日本の収穫量は乾花換算で12,750トンにも達し、その75%は米国に輸出されるまでになった。

しかし、戦中、戦後の食糧増産で日本の除虫菊生産は激減した。
他方、ケニア、タンザニアでは1928年に試作を行い、順次増産し、1933年からは輸出を始めた。1974/75年シーズンには収穫量は 15,300トンと最盛期の日本の収穫量を超えた。

その後、旱魃のためケニア、タンザニアの除虫菊生産は激減したが、 ケニアの生産は復活、現在、世界一となっている。
現在、中国の雲南省でも大量に栽培されている。

ケニア農務省によると、2004年の生産量はケニアが世界の70%で、その他はルワンダ、タンザニア、タスマニアとしている。中国は計算に入っていない模様。
 http://epzakenya.com/UserFiles/files/KenyaPyrethrum.pdf

日本では現在、尾道市因島の重井町馬神、フラワーセンター南側、白滝フラワーライン展望台の3箇所で、種子の保存と観光用として栽培されている。


1910年に
スイスのチューリッヒ工科大学のH.Staudinger博士が除虫菊の有効成分を発見し、その化学構造式を発表した。教授はこれをピレトリンと命名し、それの虫の体内での作用や、温血動物には無害であることなどを発表している。その後、StaudingerやL.Ruzicka、アメリカのF.B. La Forge らによって、ピレトリンⅠ&Ⅱ、シネリンⅠ&Ⅱが存在することを発見している。これ以降開発された類縁化合物はピレトリン類という意味でピレスロイドと呼ばれる。

住友化学は1953年大阪の酉島工場に月産100kg の設備を設け、厚生省の製造承認を得て、ピナミンと名付けて、蚊取線香および殺虫剤メーカーに試験的に販売した。
その後、農業用を含め、多種類のピレスロイドを製造販売している。

2006/8/21 夏休み特集 蚊取り線香物語 ピレスロイドの歴史

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Botanical Resourcesは豪州のタスマニア州で除虫菊を栽培している。


除虫菊は1940年代に豪州に持ち込まれた。

1983年にBritish Oxygen Companyの子会社Commonwealth Industrial Gases により、タスマニア島で試験的に栽培され、1986年に正式に栽培を開始した。1989年に米国向け輸出を開始した。
1995年には世界第二の生産国となったとしている。

1996年にCommonwealth Industrial Gaseのピレトリン関連資産をMBOする形でBotanical Resources Australia が設立され、米国のMGK その他と戦略的長期供給契約を締結した。

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