神戸製鋼データ改ざん問題で玄海・大飯原発の再稼働を延期

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関西電力と九州電力は11月30日、大飯原発3、4号機と玄海原発3、4号機の再稼働時期をそれぞれ2カ月遅らせると発表した。

神戸製鋼所のデータ改ざん問題の影響で、部品の安全確認に時間がかかっているため。2社は同日、原子力規制委員会に再稼働前の検査の変更手続きを届け出た。

当初予定 見直し
関西電力 大飯3号 2018年1月中旬 2018年3月中旬
大飯4号 2018年3月中旬 2018年5月中旬
九州電力 玄海3号 2018年1月 2018年3月
玄海4号 2018年3月 2018年5月

関電は、重要設備に神戸製鋼の製品が使われていないか調査したが、不正製品は見つからず、不正のあった工場から製品が納入された事実もなかった
しかし、原発の新規制基準に従って新たに設置した送水車のホースや消火設備の一部に神戸製鋼と子会社で製造したアルミ板や銅管を使用しており、安全面の検査に時間がかかっているという。

九電は神鋼のデータ改ざん問題が発覚した今年10月、稼働中の川内原発1、2号機を含め、不正な製品が使われていないかを調査した。
玄海原発では原子炉格納容器の鉄筋などに使用していることが分かったが、調査の結果、「不正が行われた製品ではなく、安全上の問題はない」と規制委に報告した。
しかし、規制委側から指摘を受けた場合に備え、主要設備だけでなく設備全般での使用状況を把握する必要があると判断し、配管や弁などの細部にわたって製造業者の確認作業を続けている。

玄海3、4号機の現場作業員は使用前検査と神鋼問題の確認作業の両方に対応する必要があり、工程を見直すことにした。


神戸製鋼所は10月8日、過去1年間に生産したアルミニウム・銅製品の検査データを改ざんしていたと記者会見で公表した。

同社は11月10日、社内調査の報告書を公表した

データ改ざんや捏造について、①収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土 ②バランスを欠いた工場運営 ③不適切行為を招く不十分な品質管理手続き ④契約に定められた仕様の順守に対する意識の低下 ⑤不十分な組織体制――の5項目が原因と結論づけた。

関電は「現時点では何も決まっていない」としつつも、「損害賠償を請求するかどうかについて、弁護士など専門家と慎重に検討している」としている。関電が賠償請求に踏み切った場合、九電も追随する可能性は高い。電気代値下げ延期で市民団体からも訴えられる可能性もある。

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現在稼働中、および審査に合格した原発は下記のとおり。

運転開始 万KW
稼働 九州電力 川内① 1984.7 89.0 2015/9/10 営業運転
九州電力 川内② 1985.11 89.0 2015/11/17 営業運転
四国電力 伊方③ 1994.12 89.0 2016/9/7 営業運転
関西電力 高浜④ 1985.6 87.0 2017/5/17 再稼働 6/16 営業運転
関西電力 高浜③ 1985.1 87.0 2017/6/6 再稼働
審査
合格
関西電力 高浜① 1974.11 82.6 40年超 2016/6/20 運転延長認可
再稼働は、必要な工事が終わる2019年10月以降。
関西電力 高浜② 1975.11 82.6
関西電力 美浜③ 1976.3 82.6 2016/11/16 運転延長認可
2020年1月の工事完了を目指す。
九州電力 玄海③ 1994.3 118.0 2017/1/18 「審査書」を正式決定
九州電力 玄海④ 1997.7 118.0
関西電力 大飯③ 1991.12 118.0 2017/5/24 審査書を正式決定
関西電力 大飯④ 1993.2 118.0

九州電力玄海原発については、佐賀県の山口祥義知事が2017年4月に再稼働に同意したことで地元同意手続きは完了している。


関西電力大飯原発については、地元のおおい町と福井県議会が既に再稼働に同意しているが、残る福井県の西川知事も11月27日の会見で再稼働に同意することを表明した。
これをうけて関西電力は、2018年1月中旬と3月中旬に再稼働させることを決めていた。

同社はまた、2基が再稼働すれば、1か月であわせて約90億円の収支改善効果が見込まれるということから、「新電力に変わったお客様にもう一度関西電力に戻ってきていただく」ため、稼働後すみやかに電気料金を下げる方針を示していた。
 

なお、大飯原発3、4号機については、福井県の住民らが関電を相手取り、運転差し止めを求めた訴訟で、1審の福井地裁は2014年5月、原発から250キロ圏内の住民は「運転により人格権が侵害される危険がある」とし、定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

これについて関電側が控訴し、名古屋高裁金沢支部で係争中で、11月20日に結審した。判決内容によっては再稼働後に運転停止に追い込まれるリスクもある。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

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