海外での価格カルテルに対して日本の公正取引委員会が課徴金納付を命じられるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は12月12日、公取委の主張を全面的に認めた。欧州当局などは国際カルテルの摘発を強めているが、最高裁もこうした流れに沿った判断を示した。
日本のブラウン管テレビ製造販売業者の現地製造子会社等が海外で購入するテレビ用ブラウン管についてのカルテルで、サムスンSDI子会社が 「日本国内の市場には何の影響もなく、日本の独禁法は適用できない」と主張し、課徴金納付命令を不服として提訴していたもの。
最高裁は、「カルテルによって競争が侵害される市場に日本が含まれる場合、日本の経済秩序を侵害すると言える」と判断。今回のケースでは、日本企業の子会社が国内本社の指示を受けて対象製品を購入したことなどを理由に、「日本市場の競争が損なわれた」と認めた。
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公取委は2009年10月7日、外国事業者を含むテレビ用ブラウン管の製造販売業者らに排除措置命令及び課徴金納付命令を出したと発表した。
公取委が国際カルテルで海外企業に課徴金納付を命じたのは初めて。
各社は、日本のブラウン管テレビ製造販売業者(オリオン電機、三洋電機、シャープ、日本ビクター、船井電機)の現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管について、最低目標価格等を設定する旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していた。
外国法人間の取引では日本の独禁法は適用できないが、公取委は今回、日本の電機大手の親会社がブラウン管の購入価格などを交渉していたため、日本の親会社と現地製造子会社は一体だとして、日本の市場にも悪影響を及ぼしたと認定、同法が適用できると判断した。
価格
決定出荷 排除措置
命令課徴金納付
命令当時 MT映像ディスプレイ ◎ 大阪府 ○*1 -
MT Picture Display (Malaysia) Sdn. Bhd. 子会社 ○ Malaysia - 650,830千円 清算手続き中 PT. MT Picture Display Indonesia 子会社 ○ Indonesia - 580,270 清算手続き中 MT Picture Display (Thailand) 子会社 ○ Thailand - 566,140 清算手続き中 Samsung SDI ◎ Korea ○*1 - Samsung SDI (Malaysia) BERHAD 子会社 ○ Malaysia - 1,373,620 LG Philips Displays Korea ◎ ○ Korea - 151,380 事業譲渡 P.T. LP Displays Indonesia ○ Indonesia - 932,680 Chunghwa Picture Tubes ◎ Taiwan ー - 自主申告 Chunghwa Picture Tubes (Malaysia) Sdn Bhd. 子会社 ○ Malaysia ー - Thai CRT ◎ ○ Thailand - - 解散消滅 合計 4,254,920 2009/10/9 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令
*1 2015年5月22日の審決で、MT映像ディスプレイ及びSamsung SDI について、排除措置命令を取り消した。
排除措置命令時において既に独禁法違反の行為がなくなっていると認められた。
MT映像ディスプレイは旧松下東芝映像ディスプレイ(松下/東芝JV)で、同社と海外子会社3社は、以下の理由で審決の取り消しを求めた。
ブラウン管を使用したのは日本のメーカーの海外子会社であり、日本のブラウン管テレビ製造販売業者ではない。
ブラウン管の需要者は我が国には所在せず、「一定の取引分野」における競争を実質的に制限するものとは認められない。
日本(親会社) 海外
出荷 購入 ブラウン管供給 MT映像ディスプレイ
MT Malaysia
MT Indonesia
MT Thaiブラウン管購入 オリオン電機
三洋電機
シャープ
日本ビクター
船井電機各社の
海外子会社
これに対し、東京高裁は2016年4月13日、原告の請求を棄却した。
海外の取引であり、日本の独禁法の対象外であるとする訴えに対し、取引自体は需要家の海外の子会社が行ったとしても、日本の親会社と海外子会社が一体不可分となって供給を受けたと評価できる場合は、日本の親会社を需要家と認め、日本の独禁法上の「不当な取引制限」に当たるとした。
(1) 独占禁止法3条後段(不当な取引制限)
独占禁止法が、我が国における自由競争経済秩序の維持をその直接の目的としていることに照らせば、
日本国外において、他の事業者と共同して「不当な取引制限」に及んだ場合であっても、
一定の取引分野における我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであるときには、適用される。(2) 独占禁止法2条4項1号にいう「需要者」について
需要者が供給を受けるに当たり、
意思決定者と、供給を受けこれを使用収益する者とが異なる場合であっても、
両者が一体不可分となって供給を受けたと評価できる場合は、意思決定者についても需要者として認めることができる。
2016/4/23 日本企業の海外子会社による他の日本企業の海外子会社向けの価格カルテルで有罪
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