東芝、Western Digital と和解

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東芝と Western Digital は12月13日、 係属中の仲裁および訴訟を解決し、フラッシュメモリ事業に関する協業を一層強化していくことに合意したと発表した。

本合意の一環として、東芝、東芝メモリおよびWestern Digital は全ての係属中の仲裁および訴訟の取り下げに合意した。

Western Digital は5月に国際仲裁裁判所に東芝メモリの第三者への売却差し止めを求める仲裁を申し立てた。
東芝は6月に東京地裁に
Western Digital への損害賠償請求を起こしている。

この合意により、2018年から量産する予定の次世代 3次元フラッシュメモリBiCS FlashTM生産のための製造棟である建設中の四日市工場第6製造棟への今後の設備投資について、共同で実施する。

東芝は8月3日、四日市工場にて建設中の第6製造棟に関し、第1期分として予定している次世代の96層積層プロセスを用いた3次元フラッシュメモリ用クリーンルームへの生産設備導入を東芝メモリ単独で実施すると発表した。

2017/8/8 東芝、東芝メモリの増設を単独実施

また、岩手で建設が計画されている新製造棟へのWestern Digitalの参画に関する最終契約について、協議していく予定 。

東芝は9月6日、東芝メモリの新規拠点を岩手県北上市の北上工業団地エリアに決定し、用地拡張に関する調査や自治体との調整などの準備作業を開始すると発表した。
東芝グループのジャパンセミコンダクター(旧岩手東芝エレクトロニクス)隣接地に建設する。

2017/9/7 東芝メモリの売却、9月13日に決定 

フラッシュメモリ事業に関する合弁会社の契約期間を延長し、協業を強化する。

  JV 今回合意 引取比率
第3製造棟 Flash Partners(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%)

(既に延長済み→ 2029/12/31) 当初は均等引取、
2008/10 改組:30%分は東芝が単独運営、70%分は従来通り JVで均等引取

第4製造棟 Flash Alliance(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%) 延長 → 2029/12/31
第5製造棟 Flash Forward(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%) 延長 → 2027/12/31 均等引取
新第2製造棟
第6製造棟 (東芝単独) 共同で実施する予定  

また、現在係属中の訴訟等を解決することへの合意により、東芝メモリをBain Capital Private Equity, LP を軸とする企業コンソーシアムにより組成される買収目的会社である㈱ Pangeaへ譲渡することに関して全当事者が協調することに合意した。

また、両者は東芝メモリの譲渡に関連し、相互に資産や機密情報を保護すること、および将来の株式上場後、公開会社としての東芝メモリの発展を確実にするために協力することに合意した。

東芝メモリの売却に当たり、Western Degital にとっては、メモリ事業での競争相手である韓国のSK Hynix やSamsung が経営に参加したり、技術情報にアクセスするのは全く認められない。

逆にBain Capital にとっては、今回の買収に参加し、企業価値を上げたうえで、高値で転売するのが目的であり、将来の売却先を制限されるのは好ましくない。

SK Hynix にとっては事業参加が目的であり、単なる出資では意味がない。

とりあえず、Western Degital への配慮で、SK Hynixに関しては、10年間の機密情報へのアクセス制限と10年間は15%超の議決権は与えられないとの条件を付けている。

今回の合意に当たり、東芝やBain が SKによる東芝メモリへの関与制限や、SK に対する機密情報の遮断を確約 したとされる。
また、Samsung電子などの他の競合に対する東芝メモリ株の今後の譲渡を制限することで合意した模様。

買収目的会社である株式会社Pangeaへの出資・融資内訳(億円)は次の通り。

  出資・融資 出資 融資  
議決権 転換社債 議決権なし
東芝 3,505 40.2% 1,096   2,409   議決権の一部は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権
HOYA 270 9.9% 270   0    
(日本側計) (3,775) (50.1%)         今後も過半を維持
Bain 2,120 49.9% 1,361   759    
SK Hynix 3,950   15% 1,290 2,660   10年間のファイヤーウォール(機密情報へのアクセス制限)
10年間は15%超の議決権は与えられない。転換には各国競争当局の承認要
(Bain/SK) (6,070)            
Apple 4,155     4,155    
Seagate
Kingston Technology
Dell Technologies Capital
合計 14,000 2,727 1,290 9,983    
金融機関借入 6,000  

6,000

 
再計 20,000

14,000

6,000  

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

今回の和解で、国際仲裁裁判所による東芝メモリの第三者への売却差し止めの懸念は無くなった。

東芝は12月に6千億円の増資を完了し、とりあえず 2期連続の債務超過を避けられるが、金融機関の支援を得ながら資本の厚みを増すために、引き続き2018年3月末までの売却完了を目指し、各国の独占禁止法の承認を得られるよう注力する。

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