外れ馬券訴訟

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国税当局が競馬の外れ馬券代を経費と認めず追徴課税したのは違法だとして、北海道の男性が国に約1億9000万円の課税取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷は12月15日、国側の上告を棄却した。外れ馬券代を経費と認めて課税処分を取り消した2016年4月の2審・東京高裁判決が確定した。

外れ馬券については、最高裁は2015年3月に、特定のケースについて経費として認めている。今回は、それには直接当て嵌まらないケースについて争われていた。

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2015年3月判決のケースは次の通り。

インターネットを通じて馬券を大量購入し、1億円以上の利益を得た大阪市の元会社員の男性が所得税法違反(単純無申告)の罪に問われた事件である。

男性はソフトと独自の計算式に基づき、毎週土日に開催される中央競馬のほぼ全レースで大量に馬券を買っていた。

男性は2007~2009年に28億7千万円分の馬券を購入し、総額30億1千万円の払戻金を得たが、全く申告しなかった。

検察側は、国税当局の見解に基づき、払戻金は「一時所得」に当たり、経費といえるのは当たり馬券代だけだと主張したが、一審大阪地裁、二審大阪高裁はいずれも「営利目的の継続的な購入で、資産運用の一種だ」と判断し、外れ馬券も経費算入できるとした。

脱税額は、検察が主張した約5億7千万円ではなく、差引損益に対応する5千万円余りしか認めず、男性には懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡していた。
(当時の税率は1800万円超の所得に40%。なお、2015年以降は4000万円超の所得に45%)

検察側は上告した。

最高裁第3小法廷は、裁判官5人全員一致で、外れ馬券代を「経費」と認める初判断を示した。

ソフトと独自の計算式に基づき、毎週土日に開催される中央競馬のほぼ全レースで大量に馬券を買っている。個々のレースに着目せず網羅的に馬券を大量購入し、利益を上げ続けており、一連の行為は経済活動といえると指摘 し、この事例での払戻金は「雑所得」(経費をより多く算入できる)に当たると判断し、検察の上告を棄却した。

差引損益に対応する5千万円余りだけを脱税と認め て執行猶予付きの有罪とした一、二審判決が確定した。

元会社員は民事訴訟でも8億1千万円の課税処分取り消しを請求し、大阪地裁は2014年10月に「外れ馬券は経費」として、請求をほぼ認めている。

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今回のケースでは、北海道の40歳代の公務員男性が2005~2010年に計72億7千万円の馬券を買い、計78億4千万円の払戻金を得た。
男性はレースごとに競走馬のコース適性や枠順、騎手などから着順を予想し、配当金額と予想の確度の組み合わせによって、自ら定めた購入パターンを当てはめていた。

払戻金は「雑所得」にあたるとして、外れ馬券代も経費として申告したが、税務当局は国税庁通達に基づき、「一時所得」にあたり、当たり馬券の購入費しか経費算入できないと判断し、追徴課税した。
男性はこれを不服とし、国に所得税約1億9400万円の取り消しを求めて提訴した。

東京地裁は2015年5月、男性の請求を棄却した。「競馬愛好家の馬券購入方法と大差はなく、営利目的行為に当たらない」と判断した。
最高裁判決との違いについて「馬券の購入履歴などが保存されていないため、最高裁判決の当事者のように機械的、網羅的に購入していたとまでは認められない」とした。

男性は控訴した。弁護士は、レースごとの購入資料がないという理由で雑所得と認めないのは納税者にあまりに酷で、最高裁判決の趣旨をないがしろにする不当な判決だと述べた。

東京高裁は2016年4月の控訴審判決で、「外れ馬券を含む馬券代を経費とするのが相当」と認め、一審判決を取り消した。

男性は自動購入ソフトを使っていなかったが、「独自のノウハウで馬券を有効に選び、恒常的に多額の利益を上げていた」と指摘し、最高裁が経費と認めた買い方と「本質的な違いがない」とした。


今回、最高裁第2小法廷は国側の上告を棄却し、外れ馬券代を経費と認めて課税処分を取り消した2016年4月の2審・東京高裁判決が確定した。

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