三井化学は2017年11月30日より大手工業デザインの㈱ アークのTOBを実施していたが、1月17日付でこれが終了し、同社の議決権の74.69%を取得したと発表した。
1月24日付で連結子会社とする。
オリックス子会社のOPI-11の所有する67.06%のうちの57.06%と、みずほ銀行の9.16%、三菱東京UFJ銀行の8.47%の合計 74.69% を合計 30,132百万円で取得した。3株主とは事前に合意していた。
OPI-11は残り10%の保有を続ける。残り15.31%はその他株主が保有する。
アークは、工業製品における新製品の開発支援企業グループで、デザインモデルと言われる開発初期段階の意匠検討用の模型製作から、その製品又は部品の金型など少量生産のサポート等、顧客の製品開発支援を主なビジネスモデルとしている。 解析エンジニアリングなどの先進的な開発技術を保有しており、日本含め、世界5極(日本、北米、中国、ASEAN、欧州)で、製品及びサービスを提供している。
三井化学は、特に自動車材料を中心とした「モビリティ」事業において、多様な機能性樹脂製品群の開発・製造・販売を手掛けており、グローバルに高品質・高性能な素材を提供する一方、金属樹脂一体化技術や金型技術の活用等、既存の素材・材料の販売に留まらない、これまでの事業領域から一歩踏み出す動きを推進している。
また、オープンイノベーションや他企業との提携等を通じた設計・解析・評価・試作等のソリューション提供力の強化も加速させている。
アークの子会社化を通じ、両社技術の相互活用によるグローバル市場での持続的な成長を共に実現する。
アークは三井化学グループの多彩な製品群・材料技術の活用による素材の知見を活かした設計、試作や解析による、より高い付加価値を有する総合的な開発支援サービスの強化を図る。
三井化学はアークの強みを生かしたグループ製品・サービスの事業領域拡大と、「モビリティ」分野におけるソリューション提案・提供力の強化と、事業化を目指す。
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アークはM&Aを積極的に進めて事業を急拡大したが、業績悪化で行き詰まり、2010年12月末の有利子負債は750億円、連結自己資本比率は2.7%にまで低下していた。
アークは傘下に下記の会社を有していた。
安田製作所、昭和精機工業、岐阜精機工業、ソルプラス、相模原部品工業、クローバー電子工業、東邦システム、サトーセン、積水工機製作所、アーク岡山、C&Gシステムズ、3D Autoprotech、ほか海外連結子会社55社及び関連会社16社
2011年に、アークとその子会社の安田製作所、昭和精機工業、岐阜精機工業、ソルプラス、相模原部品工業、クローバー電子工業、東邦システムの8社は、みずほ銀行及び三菱東京UFJ銀行との連名で企業再生支援機構に支援の申し込みを行った。
企業再生支援機構は同年3月31日、支援決定を行った。
事業再生計画は、世界4極(日本・アジア・欧州・北米)における工業製品の新製品開発を支援することを目的として、アークグループの競争優位性を最大限活かせるように、選択と集中の徹底を図ることを主要な内容としている。
事業計画の骨子:
①選択と集中の徹底
②コア事業の強化
a 国内生産拠点集約と選別受注の強化
b 国内及びアジアにおける少量品一括受注の拡大
c 欧米グループ間シナジーの創出
③経営管理体制の強化
④組織運営及び人事政策の改革
金融支援の概要は次の通り。
2011年8月に支援機構に優先株を割り当てるとともに、支援機構とみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行の持つ同社に対する債権を現物出資財産として、debt-to-equity swapの方法で優先株を割り当てた。
企業再生支援機構 Debt-Equity Swap 10,231百万円 銀行からの債権買取分 第三者割当増資 9,000百万円 みずほ銀行 Debt-Equity Swap 5,357百万円 他に債権放棄 2,810百万円 三菱東京UFJ銀行 Debt-Equity Swap 4,954百万円 合計 29,542百万円 企業再生機構はアークの68.78%の株を保有し、親会社になった。
アークは事業再生計画に基づくコア事業の選択と集中、連結経営体制の整備により、事業再構築を終えた。
2014年6月にオリックスが子会社のOPI-11を通じてTOBを行い、支援機構の持ち株を買収して筆頭株主となった。
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