米国際貿易委員会(ITC)は1月26日、カナダのBombardieの旅客機に制裁関税を発動しない方針を決めた。 委員4人の全会一致で、Bombardieの受注が米国企業や労働者に打撃を与えていないと確認した。
米商務省が先月決定したほぼ300%の関税は発動されないことになる。
事前の予想では、Boeing の訴えが認められるとの見方が広がっていた。
ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローは「事実や証拠の重要性があらためて浮き彫りとなった。トランプ大統領がいくら保護主義を主張しても、通商政策に関するITCの訴訟手続きは支障なく機能した」と述べた。
またダン・ピアソン元ITC委員長は「1人の委員もBoeing の主張に耳を貸そうとしなかった。『米国第一主義』はホワイトハウスや商務省では通用するだろうが、ITCのような独立機関では通用しない」と語った。
Bombardieは声明で、「技術革新、競争、法の支配の勝利」で、米航空会社や旅行客の勝利と指摘した。
一方、Boeing は「不正な政府助成によりBoeing が何十億ドルもの損害をこうむった」ことが認められず失望した、とのコメントを発表した。
米商務省は2017年12月20日、カナダのBombardie製の100~150席の小型ジェット機「Cシリーズ」に300%近い制裁関税を課す最終決定を下した。
ダンピング税率については、Bombardieが商務省が要求した資料を提出しなかったため、通商規定の「不利な知り得た事実に基づく認定」(Adverse Facts Available=AFA)に基づき、79.82%とした。
補助金相殺税率については、カナダ、ケベック及びBombardieの一部生産が行われている英国の各政府の出している情報とBombardieが出している情報をもとに、212.39%と計算した。
以上により、合わせて292.21%となる。
ITCが米国産業への損害を認めれば商務省が2018年2月に正式に関税を発動する予定だった。
Boeing はBombardieがカナダ政府から違法な補助金の支給を受け、米国でCシリーズを不当に低い価格で販売していると訴えていた。Boeing によると、Bombardieが米デルタ航空から受注したCシリーズ75機の価格は1機当たり2000万ドルと、推定コストの3300万ドルやカナダでの販売価格を下回った。
相殺関税と反ダンピング関税から成る制裁関税が適用された場合、米国で販売されるCシリーズの価格は3倍以上に急騰することになる。
Bombardieは昨年10月、Cシリーズ事業の過半を欧州航空機大手エアバスに譲り渡す契約を結んだ。同時に将来的にエアバスの米工場で生産する計画を発表し、米経済への貢献をアピールしていた。
カナダのフリーランド外相は声明で「保護主義からカナダの企業や労働者を守る断固たる決意」を表明。今回の決定に抗議するための措置や選択肢を検討するとした。カナダ政府は対抗措置としてBoeing から新たな戦闘機を購入する計画も取りやめた。
カナダはWTOに介入を求めるか、北米自由貿易協定(NAFTA)による仲裁制度を利用する可能性を検討しており、この問題を巡るカナダと米国の貿易紛争が激化する可能性があった。
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