サウジとUAE、1月から付加価値税導入

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Saudi Arabia と UAE は2018年1月1日から付加価値税(VAT)を導入した。

税率は5%で、食品を含むほとんどの財とサービスに適用される。

UAEでは、初年度のVAT収入を33億ドル程度と予想している。


WTI原油価格は2015年12月18日には34.73ドルとなり、12月31日は37.04ドルで終わった。
2015年の平均は48.78ドル/バレルと、前年までから大幅に低下した。

この結果、産油国の財政は急激に悪化した。

2015年11月8日,IMFのラガルド専務理事は湾岸協力会議(GCC)諸国の財政相との会合で、思い切った財政改革と歳出削減の必要性を強調した。
早急に付加価値税
(VAT)導入や法人税・物品税の拡大などで歳入を多様化することを求めた。

湾岸協力会議(GCC )メンバーのサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの 6カ国は2015年12月初めに会合を持ち、付加価値税(VAT)導入で大筋合意した。3年以内にVATを導入する。

2015/12/12 湾岸諸国が付加価値税導入で合意

湾岸協力会議は、採用するVAT制度に関し、Value Added Tax Framework Agreement を締結した。

概要:

基準税率は5%(特定の財サービスは税率ゼロ又は免税)

税率ゼロとすべきもの
 医薬品、医療機器、海外への財と人の輸送サービス、GCC諸国外への輸出、特定の海外向けサービス
   注)GCC諸国向けの輸出は課税対象

税率をゼロとしてもよいもの
 特定の食料品、商業用輸送、石油・石油誘導品・ガス

税率ゼロか免税とすることができるもの
 教育セクター、健康セクター、不動産セクター、地方交通セクター

免税とすべきもの
 金融サービス(特定のものを除く)、メンバー国でVATが免税となった財の輸入

* 課税ゼロの場合、仕入などコストに含まれるVATは控除できる。
免税の場合は、コストに含まれるVATは控除できない。


サウジは2017年1月31日にこれを批准、その後UAEも批准した。

まずサウジとUAEが先行して2018年1月1日に施行するが、湾岸協力会議(GCC)の他のメンバー諸国も今後導入する。

両国の課税対象は次の通り。

サウジ UAE
金融サービス Fee base 課税 課税
Margin base 免税 免税
保険 生命保険 免税 免税
その他 課税 課税
食品 全て課税 全て課税
教育 課税 特定のものは税率ゼロ
健康 課税 特定のものは税率ゼロ
不動産 住宅賃貸 免税 免税
土地 課税 免税
新築住宅 税率ゼロ
その他 課税
GCC内 輸送 課税 免税
石油およびガス 課税 特定品は税率ゼロ
GCC外 輸送 税率ゼロ 税率ゼロ

なお、IMFの勧告に従い、GCCはタバコ、ソフトドリンク、エナジードリンクに対する「選択税」(従価税と従量税の高い方を採用)の導入も決定した。

サウジは2017年6月10日からタバコ、ソフトドリンク、エナジードリンクに対する選択税を導入した。
タバコ製品およびエナジードリンクに対して100%の税率、ソフトドリンクに対して50%の税率が適用される。

UAEも10月1日から同様の制度を採用した。

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サウジアラビアは12月19日、2018年の予算を決定した。
ムハンマド皇太子の旗振りの下、原油に依存する経済構造を見直し、財政赤字を解消するための改革を進めてきたが、国民の不満に配慮したバラマキ政策を打ち出すなど、改革の迷走と停滞が鮮明になっている。

経済改革に向けた投資拡大で、2017年実績見込み比で6%増の9780億リヤルと過去最大の歳出を予定した。石油以外の産業育成に向けた投資や、緊縮財政で打撃を受ける中低所得層への支援策を行うほか、「新たな開発計画を予定している」。

一方、原油価格の持ち直しと付加価値税(VAT)の導入に伴う税収増で、同13%増の7830億リヤルを見込み、財政赤字は1950億リヤル(約5兆8600億円)となり、2017年の見込みに比べて15%縮小する見通し。但し、赤字縮小のペースは減速する。

サルマン国王は閣議で「財政均衡は2023年になる」と、目標に掲げていた財政赤字の解消が、当初予定した2020年から3年遅れるとの見通しを明らかにした。

ムハンマド皇太子の当初の構想では付加価値税(VAT)の導入や公務員給与の引き下げ、各種手当の廃止、公共料金の引き上げなど、財政引き締め策が並んだ。

しかし、人口の多くを占める若年層で失業率は高止まりしており、このまま増税や手当の廃止によって負担が増え続ければ、改革に対する不満や反発の拡大を招く恐れもある。このため、緊縮策の手綱を緩め、国民の「痛み」を緩和する策に乗り出した。2017年4月に公務員手当の引き下げを撤回、このほど低中所得層を対象にした現金支給も決定した。

サウジの構造改革は正念場を迎えている。




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