手術支援ロボット ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)の保険適用拡大へ 

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厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は2018年1月17日の総会で、2018年度診療報酬改定におけるロボット支援下内視鏡手術への保険適用について議論した。

2018年度診療報酬改定に向けて各領域の学会から計15件の提案があったが、2017年10月23日の医療技術評価分科会で議論し、その後、各提案について分科会委員による評価を行った。

その結果、既に保険が適用されている前立腺がんと腎臓がんに続き、肺がんや食道がん、胃がんなど新たに12件が挙げられた。
既存技術と同等程度の有効性・安全性があるとされるものを選んだ。

既承認

腹腔鏡下 前立腺悪性腫瘍
同    腎悪性腫瘍
新規承認案
胸腔鏡下 縦隔 悪性腫瘍
同    縦隔 良性腫瘍
同    肺 悪性腫瘍(肺葉切除or 1肺葉を超えるもの)
同    食道 悪性腫瘍
同    弁 形成術
腹腔鏡下 胃 切除術
同    噴門側胃 切除術
同    胃 全摘術
同    直腸切除・切断術
同    膀胱悪性腫瘍
同    子宮悪性腫瘍 (子宮体がんに限る)
同    膣式子宮全摘術

ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)は米Intuitive Surgical 社の手術支援ロボットを使う手術。

胸腔鏡下手術、腹腔鏡下手術 をロボット支援下で行うもので、腹腔鏡下手術等では医師が直接鉗子を操作して行うが、ダヴィンチによる手術では鉗子の操作はロボットアームにより行われる。

元々は1980年代の後半に、米国陸軍と旧スタンフォード研究所において開発されたもので、戦地での負傷者の手術を、離れた場所にいる空母や米本土の病院の医師が遠隔操作ですることを狙った。

1995年、民間での応用をさらに推し進めるため、Intuitive Surgical 社が設立され、1996年には最初のロボット支援下手術用サージョンコンソールを開発した。

1999年1月に、da Vinci
Surgical Systemを上市、2000年には、一般的な腹腔鏡下手術を適応とする初のロボット支援下手術システムとして、FDAにより認可された。その後は、胸腔鏡手術、補助切開部からの心臓手術のほか、泌尿器科、婦人科、小児外科、経口アプローチによる耳鼻咽喉科の手術についてもFDAから認可を得てい る。

日本では、2009年11月に、泌尿器・一般消化器・婦人科・胸部外科でダヴィンチの薬事承認がなされ、2010年3月に販売を開始した。
2015年9月に心臓手術も承認された。

これは、大変高価な装置 (日本ではSiモデルが2億4800万円、Si-eモデルが1億7000万円)で、また、年間のメンテナンス費用もかさむ。

2012年4月に前立腺全摘除について保険収載が行われ、これのみ保険適用が可能となった。その後、2016年度から腎悪性腫瘍も 対象となった。
ダヴィンチは米国で蓄積された手術実績に基づいて日本で医療機器として承認されたが、米国では前立腺ガンの患者数が多く、実績データが豊富に集まっていた。腎悪性腫瘍については、2014年9月から日本で「先進医療B」としての治療が認められ、保険適用申請に向けた多施設共同の臨床研究を実施した。)

今回、保険適用が一挙に拡大する。

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ダヴィンチシステムは、胸腔鏡下手術、腹腔鏡下手術をロボット支援で行うもの。

システムは、サージョンコンソール、ペイシェントカート、ビジョンカートなどから構成される。
3つのアームと1つのステレオ3Dカメラを搭載し、アームのカセットを交換することで、様々な処置を行うことが出来る。

通常の腹腔鏡下手術では医師が直接鉗子を操作して行うが、ダ・ヴィンチによる手術では鉗子の操作はロボットアームにより行われる。

執刀医は数m離れた場所に置かれたサージョンコンソールに座り、術野の3D画像を見ながら、ロボットアームを遠隔操作する。

左右のコントローラを右手と左手で握り、腕や指を動かすと、患者に横付けされたペイシェントカート(手術装置)に即座にその動きが正確に伝わって、患者の腹腔/胸腔内に挿入された鉗子や内視鏡が同じ動きを する。親指と人差し指を開閉すると鉗子の先も開閉し、組織をつまんで固定したり、剥がしたりといった操作ができる。また、フットペダルで切り替えることで、3本の鉗子と1本の内視鏡の合計4本を一人の術者が自在に操り、繊細な手術が実行でき る。

患者の横には吸引作業や機器カセットを交換したりする補助作業者が立つ。

   国立がん研究センター東病院 HPから


通常の腹腔鏡下手術 では、腹にヘソを含め4つの穴をあけて、機器の出入り口であるポートを設置し、ヘソからは腹腔鏡を入れる。

手術者は腹腔鏡の画像を映すモニターをみながら、ポートからいれた機器で手術を行う。立ったままで、上向きのため、長時間の手術は疲れる。
当然、手ぶれの恐れなどもある。

ダヴィンチの場合は、手術者は、両眼視で見る3Dモニターでリアルな立体画像でとらえることができ る。

開腹手術では3Dだった視野が、内視鏡越しに見る腹腔鏡手術では2Dになってしまい、術者は脳で画像の深さを調整して手術を行わねばならなかった。

座ったままで、下向きの目線(開腹手術と同じ目線)で操作を行うために、疲労が少なく、視野も広く奥行きの把握も良好とされる。


通常の腹腔鏡下手術ではポートに入れた鉗子の先が開閉するだけで、マジックハンドのように直線的でぎこちなく、曲がらない。
ダヴィンチでは鉗子の先に関節があり、人間の手首以上に自在に曲がるので、可動域が広くなる。


先の震えが伝わらないよう手ぶれを補正する機能があり、細い血管の縫合や神経の剥離などを正確に行うことができる。

このため、人の手以上に細かく、丁寧に、確実な手術ができる。

ロボットアームで毛筆で米粒に漢字を書くような細かい作業や、 1円玉より小さな折り鶴を折ることもできるとされる。

東京医科大学病院のトレーニング(折り鶴) https://www.youtube.com/watch?v=BQ3tVUsn2gI

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