ドイツのキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の大連立交渉が2月7日、 長時間の交渉の結果、原則合意に達した。
メルケル首相が率いるCDU・CSUが SPDに大幅に譲歩したもので、4カ月間の政治空白の解消に向けて前進した。
政権樹立に向けた最後のハードルとなる社民党の46万4千人のすべての党員による投票は今後、郵送で3~4週間にわたって行われ、3月初めにも結果が公表される見通し。
否決されれば、連立合意は白紙となり、再選挙の可能性が高まる。
付記
ドイツ社会民主党(SPD)は3月4日、連立合意を党員投票で了承したと発表した。連立合意への賛成が66.02%、反対は33.98%だった。
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9月24日の連邦議会(下院)選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は709議席のうち246議席しか確保できなかった。大量の難民受け入れへの世論の反発があるとされ た。
第一次 2005/11 |
第二次 2009/10 |
第三次 2013/12 |
今回選挙 | ||||
キリスト教民主同盟 (CDU) | キリスト教 民主・社会同盟 (CDU/CSU) |
連立 | 連立 | 連立 | 246 | 連立協議 → | 連立協議 |
キリスト教社会同盟 (CSU) | |||||||
ドイツ社会民主党(SPD) | 連立 | 連立 | 153 | 離脱表明 → | |||
緑の党 | 67 | 連立協議 | |||||
自由民主党(FDP) | 連立 | 議席 0 | 80 | 連立協議→離脱 | |||
ドイツのための選択肢(AID) | 議席 0 | 92 | |||||
左派党 | 69 | ||||||
無所属 | 2 | ||||||
合計 | 709 |
第一次と第三次政権で連立を組んだドイツ社会民主党(SPD)も大敗し(153議席)、連立離脱を宣言した。
このため、メルケル首相は、緑の党(67議席)、第二次政権で連立を組んだ自由民主党(FDP) (80議席)との3党連立を協議してきたが、11月19日、決裂した。
議席ゼロから92議席を獲得したドイツのための選択肢(AID)は、2013年のギリシャ経済危機を契機に反EUを掲げて結党され、ドイツのEU離脱を最大の目標として掲げている。移民問題についても強く反対しており、極右政党ともされる。
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この結果、残る選択肢は、再選挙か少数与党による内閣だが、再選挙になればCDU・CSUはさらに票が減る可能性が高く、また、過半数割れ政権では安定した政治はできない。
メルケル首相は昨年末、「早く安定政権を成立させる使命を果たしたい」と述べ、SPDとの交渉の早期妥結に向けた強い意欲を示した。
2018年1月7日、 CDU・CSUとSPDの間で政権樹立の可否を探る予備交渉を始めた。
SPD執行部は政権協定交渉入りを決めたが、双方の政策に大きな差があり、1月21日の臨時党大会では賛成票が56%にとどまった。 ドイツ政治の安定のために連立すべきという賛成派と、これ以上メルケルの軍門にくだるべきではないとする反対派に、真っ二つに分かれた。
このため、SPD執行部はCDU・CSUに対し、方針の改善を要求した。
特に3項目が焦点となった。 双方の政策の違いは大きく、変な妥協は支持者を裏切ることとなるため、難航した。
CDU・CSU | SPD | |
難民問題 | 「難民増」とみられる政策に反対 | 一部難民の家族呼び寄せを拡大 |
医療保険制度 | 抜本改革に反対 | 公的保険と私的保険の格差の是正 |
雇用政策 | 左は、企業競争力に影響する。 (CSUは自動車産業を抱える) |
正当な理由のない有期雇用契約禁止 |
難民問題については、限定的に認定された難民について月1000人を限度に家族呼び寄せを認め、個別事情に配慮した追加を認めることで合意した。
しかし残り2つについては難航し、期限としていた2月4日までに決着せず、2月5日にずれ込んだ。
24時間以上続いた協議の末、2月7日にようやく合意した。
期限付きの雇用契約の上限を現在の24カ月から18カ月へ減らした。
医療保険については、官民共同の枠組みを作る委員会の設立で合意した。
難民の受け入れについて年間22万人までに抑えることや、フランスと連携してユーロ圏の改革に取り組むことなどが盛り込まれた。
連立政権の人事については、SPDは財務相のポストを確保する。財務相という重要なポストをSPDへ引き渡 すことは、メルケル首相が4期目を務めるためにCDU・CSUが大きく譲歩したことを示す。
交渉関係者によるとSPDは労働相のポストも確保する。法務相と家庭相、環境相のポストも得るとの報道もあった。
またビルト紙によるとシュルツSPD 党首は外務相となり、党首を辞任する。
いったんは下野する方針を表明しながら大連立へと方針転換したシュルツ氏への不満が党内で強まっていた。
付記
シュルツ党首は外相として第4次メルケル政権に入閣することを断念したと発表した。昨年9月の総選挙直後に「メルケル政権には入閣しない」と断言していたシュルツ氏の変節に、党内外から非難が集中してい た。
シュルツ党首は2月13日、記者会見し、党首を即日辞任し、アンドレア・ナーレス連邦議会(下院)党会派代表に後任を託すことを発表した。 4月22日の臨時党大会に提案する。
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