丸紅のインドネシアでの不思議な裁判

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丸紅は2月7日、インドネシアの最高裁で敗訴となった2つの訴訟のうち、2つ目についても最高裁に対して司法審査(再審理)を申し立てたと発表した。

本件は同一事案に関して、最高裁が全く逆の判断をしたものである。

訴訟の相手はSugar Groupで、丸紅によると、丸紅等がSugar Group子会社に対して債権を保有し、支払いの催促を行ったところ、債務の履行を免れることを狙い、交渉材料として荒唐無稽な主張に基づき、債権・担保の無効確認と損害賠償を請求してきていたもの。

訴えられたのは次の各社:
丸紅、丸紅ヨーロッパ、三井住友銀行、住友信託銀行、PT Mekar Perkasa(Salimグループで、Sugar Group の旧オーナー)とその役員、および公証人

インドネシア最高裁は2011年3月、旧グヌンスギ訴訟で丸紅等に対し逆転勝訴の判決を下した。

しかし被告側は同一内容の訴訟を改めて2つの裁判所に対して行い(南ジャカルタ訴訟とグヌンスギ訴訟)、両訴訟について最高裁が丸紅側の敗訴の判決を行った。

これはSugar Groupの主張を全面的に棄却した旧訴訟での最高裁自身の判決と明らかに矛盾するもので、丸紅は判決の不当性を明らかにするため、インドネシア最高裁判所法に基づき、司法審査(再審理)を申し立てたもの。

事態の経緯は以下の通り。

旧グヌンスギ訴訟

進行中

南ジャカルタ訴訟 グヌンスギ訴訟
訴訟内容 損害賠償等 損害賠償等 損害賠償等
訴訟額 1110百万米ドル 450百万米ドル 650百万米ドル
2007/11 一審 敗訴
2008/10 二審 敗訴 53名中23名
 賠償額 約10百万ドル
2011/3 最高裁 勝訴
 原告主張を棄却
2013/5 二審敗訴 7名中5名
 賠償額 250百万ドル
2014/6 二審敗訴 6名中4名
  賠償額 250百万ドル
2017/5 最高裁 敗訴
 上告棄却
2017/9 最高裁 敗訴
 上告棄却

この裁判では、丸紅の説明も完全ではなく、よく分からない。

現地の報道では、丸紅がアレンジした貸付は1993年で、Salimグループの PT Mekar Perkasa 時代の砂糖工場の建設費である。

インドネシア財閥の林紹良が率いるSalimグループは1997年の通貨危機で破綻、資産管理会社 Holdiko に移管され、順次売却された。

Sugar グループも2001年11月にPT Garuda Panca Arta がオークションでIndonesian Bank Restructuring Agency (IBRA)から買収した
その際に、
PT Mekar Perkasaと丸紅が、負債を新 Sugar Groupに移管したとされる。PT Mekar Perkasaは保証人となった。

しかし、現在のSugar グループはこれを認めておらず、PT Mekar Perkasaとその役員も訴訟相手としている。インドネシアの法律では、債権の譲渡は債務者の了承が必要となっているとされる。

現地報道では、Salimグループの各社がIndonesian Bank Restructuring Agency (IBRA)に引き渡された時点
Master Settlement Acquisition Agreementで、IBRAは全ての債務・保証から免除されることになっているという。これが事実なら、新Salimは以前の負債を引き継がないこととなるが、負債は存在するとする意見もある。

丸紅も、Sugarグループの主張を荒唐無稽な主張とするだけで、その内容が不明で、一審、二審の判決理由も明らかでない。


なお、現地報道では、Mekar Perkasaは長年の裁判で疲れ、2016年9月にSugar グループにインドネシア法に基づく債務支払猶予(PKPU) の申請を行った。
しかし、裁判所はSugar グループに債務がないことを示すことを求めた。

Mekar Perkasaがこれに従ったかどうか不明だが、Mekar Perkasaが裁判から離脱した可能性もある。
南ジャカルタ訴訟とグヌンスギ訴訟の二審では、被告のうち2名を除く全員に連帯した賠償を命じている。 Mekar Perkasaとその役員が除かれた可能性もある。

これまでの3つの裁判での3審(一審、二審、最高裁)の計9審で、丸紅側の勝訴は最初の裁判の最高裁だけであり、単純なものでは無さそうだ。

Garuda Panca Arta がオークションで IBRAからSugar グループを買収した際に、この債務が含まれていたがどうかがキイではないだろうか。

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