EU、米の鉄鋼・アルミ輸入制限への報復関税案を発表

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トランプ米政権の鉄鋼とアルミニウムの輸入制限の発動予定日の3月23日が迫る中、EUの通商担当のマルムストローム欧州委員は近くロス米商務長官と会談し、NATOに属するEUを、安全保障を理由とした輸入制限の対象とすべきではないと訴える方針である。

ホワイトハウスのサンダース報道官は3月16日、「国家安全保障で協調でき、一定の柔軟性が存在する分野について複数の国と協議中」と説明、来週末にかけ交渉を続けると述べた。

付記

鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間3月23日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。

ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。
日本は除外対象にならなかった。

EUは3月16日、EUが輸入制限の対象となった場合の対抗措置として、最大25%の報復関税 を課す対象品目リストを公表した。

品目リストの提示は域内企業を対象にしたパブリックコメント(意見公募)が目的で、今後、集まった意見をもとに、最終的な品目リストを絞り込む 。

対象品のリストは10ページにわたり、とうもろこし、コメ、オレンジジュース、バーボンウイスキー、たばこなどの農産品からボート、オートバイやジーパンなどの衣料品、鉄製の家電製品(レンジやヒーター等々)まで様々な品目が並ぶ。
  http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2018/march/tradoc_156648.pdf

米メディアは与党共和党の有力議員の地元特産品を標的にしたと指摘した。

バーボンウイスキー:Kentucky州(上院 Majority Leader Mitch McConnelの地盤)
クランベリージュース:Wisconsin州(下院 Speaker Paul D. Ryanの地盤)
オレンジジュース:Florida 州(political swing state=
選挙結果を左右する州
タバコ:North Carolina州 (同上

ユンケル欧州委員長は3月2日、報復関税の対象に検討する米製品として、オートバイのHarley-Davidsonやバーボン・ウイスキー、Levi'sのジーンズといった代表的な米ブランドを例示していた。

対象品の年間輸入総額は64億ユーロで、EUから米国向けに輸出される鉄鋼とアルミの金額に相当する。

リストは2つに分かれている。

Part A は米国がEUに対し輸入制限を発動すれば即座に報復関税を課するもので、金額は28億ユーロ。これについては25%の関税を課する。

Part BはWTOが米国の措置を違法と判断した場合、若しくは3年が経過した時に発動するもので、金額は36億ユーロ。

EUはこの対抗策を5月23日までに(又は米国の発動後60日以内に)WTOに通知する。

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なお、ある国を輸入制限の対象外とするかどうかについては大統領が最終決定するが、米国内で調達しにくい特定製品について関税の適用除外するかどうかは商務省が決定する。

商務省は米国企業からの申請に基づき、製品ごとに、①満足できる水準の品質と②十分な利用可能の量で、米国内で製造されているかどうかを審査する。

3月19日から受け付け、最長90日で判断する。

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